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紳士ならざる者の心理学 天才・龍之介がゆく! [読書・ミステリ]

紳士ならざるものの心理学 (祥伝社文庫)

紳士ならざるものの心理学 (祥伝社文庫)

  • 作者: 柄刀 一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2012/02/04
  • メディア: 文庫



評価:★★★

体験学習型プレイランドの建設を夢見る天才・天地龍之介の
活躍するシリーズの一冊。

秋田県仁賀保に建設場所を定めた龍之介は、
建設業者との打ち合わせや施設で働いてもらう人材のスカウトやらで
多忙な日々を送っているが、そんな中でも事件はやってくる(笑)。


「召されてからのメッセージ」
 建設会社社長・谷口が心筋梗塞で倒れ、入院の後に死亡した。
 以前に作成した遺言書では、再婚予定だった女性秘書・桑畑に対し、
 かなりの財産分与を示していたが、死亡する直前に、
 新しい遺言書を作成していた。
 しかし谷口は娘にさえ遺言書の保管場所を告げていなかった。
 東京との間の電話連絡のみで推理し、場所を特定するという
 龍之介の "安楽椅子探偵" ぶりが見事。

「紳士ならざる者の心理学」
 人材のスカウトのために訪れた大学は、学園祭で賑わっていた。
 折しも、開発された新型ゲーム機の盗難事件が起こるが、
 現場の研究室からはゲーム機が持ち出せない状況にあった。
 さらに学生の一人が感電死する・・・
 不可能状況下の盗難がメインなんだけど
 それを可能にするための仕掛けやらがややこしくて
 途中でついていけなくなってしまった(アタマ悪いねぇ私)。
 でも、「そんなにうまくいくかなあ」とは思った。
 ま、うまくいくのが前提なのがミステリのトリックなんだけど。

「ウォール・ウィスパー」
 他のアンソロジーに収録されていたので、既読。
 プレイランド用に改装が決まった銭湯で、
 工事現場に立ち入った中年女性が40年前の記憶を甦らせ、
 それが時の彼方に埋もれた殺人事件に光を当てる。
 田舎のことで、関係者がたくさん現地近くに残っているのは
 まあ納得できるけど、みんな40年前のことをよくまあ覚えてること。
 私自身の40年前なんて、深い霧の向こうだよ・・・

「見られていた密室」
 冒頭40ページほどは、犯人から見た犯行の様子、そして
 被害者が密室に追い込まれ、何とか犯人を示すメッセージを
 残そうとする様子が延々と綴られる。
 犯人も被害者も頭の切れる人間で、お互いに相手の行動を
 読み合う様子がチェスの名人同士の対戦のようである。
 しかし奮闘むなしく被害者は倒れ、龍之介の登場となる。
 ミステリ濃度は本書中一番。
 これ、倒叙ものにして書いても面白いんじゃないかなあ。
 刑事コロンボみたいに。

「少女の淡き消失点」
 プレイランドの落成式当日。参加者の記念写真には、
 そこにいないはずの謎の少女が写っていた。
 龍之介が解き明かすのは、大人の事情に振り回される子供たちの姿。
 血なまぐさい犯罪ではなく、日常の謎に近い話。
 後味が悪くないのは救い。


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