SSブログ

図書館戦争シリーズ 全6巻 [読書・SF]

評価:★★★★☆

この秋、TVでスペシャルドラマになって
さらには続編の映画が公開されるという話題作。

だから読み始めた、という訳ではないんですね。
実は文庫版の本編4巻+別冊2巻の計6巻は
発売と同時に買ってあった。

それが何でいままで放置されてたのかというと特に理由はない。
強いて言えば時機を逸した、かなあ。
文庫発売当時は映画化、アニメ化、コミック化と
メディアミックスでやたら盛り上がってたので
ちょっと間を置いて沈静化してから読もうと思ってたら
そのまま放置してしまった、という感じか。

何せ積ん読状態で放置されてる本が100や200じゃきかない我が家。
その中に埋もれたしまったら、発掘に時間がかかる。
というのは冗談だが、新刊ばかり読んでたら、
昔買った本をいつまでたっても読めないので
自分なりに読む順番というかルールを作っている。
そのルールに従って読んでたら、たまたまこの時期にあたったので。

閑話休題。


図書館戦争 図書館戦争シリーズ (1) (角川文庫)

図書館戦争 図書館戦争シリーズ (1) (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/04/23
  • メディア: 文庫




図書館内乱 図書館戦争シリーズ (2) (角川文庫)

図書館内乱 図書館戦争シリーズ (2) (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/04/23
  • メディア: 文庫




図書館危機 図書館戦争シリーズ (3) (角川文庫)

図書館危機 図書館戦争シリーズ (3) (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: 文庫




図書館革命 図書館戦争シリーズ (4) (角川文庫)

図書館革命 図書館戦争シリーズ (4) (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/06/23
  • メディア: 文庫




舞台はパラレルワールドにして近未来の日本。
時に2019年、元号表記では「正化31年」。

 ちなみに解説によると「正化」とは、「平成」とともに
 「昭和」の次の元号候補だったらしい

"公序良俗" を乱す表現・著作物を取り締まる
「メディア良化法」が成立して30年。

あらゆるメディアへの監視権を持つメディア良化委員会が発足し、
その執行機関である "良化特務機関" (!)により
武力行使も辞さない苛烈な取り締まりが行われていた。

そんな中、公共図書館は「図書館の自由に関する宣言」を元に
「図書館の自由法」制定にこぎつけて
メディア良化法に敢然と抵抗を宣言、
自ら武装した "図書隊" による防衛制度を確立する。

 この「図書館の自由に関する宣言」という文言、
 本書の冒頭に掲げられているのだけど、かなり過激な表現で、
 てっきり架空の文書かと思ったのだけどなんと実在する宣言文。
 「日本図書館協会」のサイト内に詳しく全文が掲載されているので
 一読をお勧めする。
 "図書館" というものに対するイメージが変わる文書である。

「メディア良化法」と「図書館の自由法」という
相矛盾する2つの法律が存在するため、
良化特務機関も図書隊も "合法的武装組織" になっていて
両者の間には一般人を巻き込まないための
戦闘地域や使用火器に厳しい制限が課せられた
"交戦規定" なるものまで存在する。

物語は、国家公務員(特務機関)と地方公務員(図書隊)が
合法的かつ日常茶飯的に、"武力衝突" している世界が舞台となる。


女子高生・笠原郁(いく)は、街角の書店で
大切な本を良化特務隊に没収されそうになったところを
通りかかった図書隊員に救われる。
その日から、その図書隊員は郁の "憧れの王子様" となり、
大学卒業後、彼を追って図書隊に入隊する。

とは言っても、肝心な彼の顔を覚えていなかったのが何とも。
(郁は人の顔を憶えるのが極端に苦手、という設定。)

入隊した郁を待っていたのは、鬼教官・堂上と激しい訓練の日々。
男子顔負けの身体能力を誇る(というかそれしか取り柄が無い)郁は
厳しい訓練を耐え抜き、女性として初めて
図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)に配属され、
良化特務部隊との戦いの最前線に立つことになる。


メディア良化法を巡る「検閲」と「表現の自由」の問題。
全4巻に渡って描かれるのは、テーマ的には非常に重いものである。
しかし、有川浩という稀代のストーリー・テラーが生み出す、
これもまたものすごいページ・ターナーぶりはどうだ。

口より先に手が出る直情径行の熱血バカ。
生まれる時代を間違えたかのような昭和っぷり。
そんな新米隊員である郁が、
良化特務機関とのさまざまな抗争の中を突っ走っていく。
それはもう激走で爆走で、たいてい暴走なんだが
そんな彼女の「本を守りたい」という一途な行動が
読み手の半端ではない感情移入を呼び込み、
難しいテーマも等身大の問題として感じさせてくれる。

読者は時に笑い、時に泣き、時にハラハラドキドキしながら
「自由」とは何かを知らず知らずのうちに考えさせられるだろう。

自称 "170cm級戦闘職種大女" しかし実態は "純粋培養純情乙女" 。
そんな郁の成長と恋を、多彩なキャラクターたちが盛り上げていく。

教官から上官になる堂上、その同期の小牧、
やがて小牧の恋人となる中途難聴者の少女・毬江、
郁の同期で成績優秀な手塚光、
その兄にして物語後半のキーパーソンとなる手塚慧、
郁の親友にして驚異の情報収集力を誇る柴崎。
このメンバーについてもいろいろ書きたいんだが
書き出すと切りが無いので涙を呑んで割愛。


王子様の背中を追って入った道だったが、
それは銃声と硝煙に彩られた茨の道だった。

しかしヒロインは持ち前のバネと脚力を全開して
一途な思いを胸に秘め、華も嵐も踏み越えて
(まさに最終巻のクライマックスは嵐だったがw)
波瀾万丈の物語世界を駆け抜けていく。

彼女と図書隊の戦いは、やがて「メディア良化法」の支配に
風穴を開けていくことになるのだが、それは読んでのお楽しみだろう。

そしてもちろん、ラストまで走り通したヒロインが
飛び込むゴールは愛しい人の腕の中。

ミリタリー・アクション・ラブ・コメディ、
図書館戦争4部作、堂々の大団円である。


別冊図書館戦争 1―図書館戦争シリーズ(5) (角川文庫 あ)

別冊図書館戦争 1―図書館戦争シリーズ(5) (角川文庫 あ)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 文庫




別冊図書館戦争II (図書館戦争シリーズ 6) (角川文庫)

別冊図書館戦争II (図書館戦争シリーズ 6) (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 文庫




「別冊」と銘打たれた2冊は、(部分的に過去の回想も入るが)
本編の後日談に相当する。

「I」は、最終巻「図書館革命」の最終章とエピローグの間の話。
「II」はエピローグ後の話になっている。

良化特務部隊との戦いは背景に退き、
図書隊員たちの恋愛模様の描写に特化した内容。
「ベタ甘」と作者自らが語るとおり、
読んでいるこっちが恥ずかしくなるようなラブ・ストーリーだが、
私は嫌いじゃない。むしろ好物だ(おいおい)。

質・量ともに、有川浩の代表作と言える傑作シリーズだ。


nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ: