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「蒼穹のファフナー THE BEYOND」 第10話~第12話(最終話) [アニメーション]

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※本編のネタバレはありません。たぶん(笑)。

大河アニメ・シリーズ、堂々の完結である。

■「蒼穹のファフナー」とは

2004年のTVシリーズ(いわゆる「無印」)全26話に始まり、
2005年の単発OVA「RIGHT OF LEFT」、
2010年の映画「HEAVEN AND EARTH」、
2015年の第2TVシリーズ「EXODUS」全26話とつづき、
2019年から始まった「THE BEYOND」。

全12話を3話ずつ半年おきに劇場公開するという形式で始まったが
途中でコロナ禍となってしまった。
予定通りなら1年前に終わってたはずかとも思うが・・・

私がこの作品を知ったのはレンタルビデオだったから、
2006年のことだったと思う。
たちまちハマってしまって、円盤も全巻買ってしまった。

「無印」からリアルタイムで観てきた人からすれば17年。
私としても15年くらい、この作品とつき合ってきたことになる。

作品中での時間も短くはない。
「無印」から「THE BEYOND」まで11年くらいか。
シリーズの前日譚である「RIGHT OF LEFT」を含めれば12年。
「無印」では14歳の中学生だったメインキャラたちも、
「THE BEYOND」では25歳の立派な大人へと成長している。

■フェストゥム

本作は宇宙から飛来した謎の生物・フェストゥムと
人類との戦いを描く、いわゆるロボット・アニメのひとつ。
「ファフナー」とは、人類が開発した人型兵器の総称だ。

”個” を持たず、”全体で一つ” というシリコン型生命体。
人類とはあまりにも異質すぎて、意思の疎通すらできない。
”彼ら” は他の生物を同化もしくは消滅を目的に行動する。
人類もまた例外ではない。

物語開始時点で、フェストゥムの到来から40年以上が過ぎ、
人類の生存圏は刻一刻と狭まっている。

■平和への道

しかし、この長く果てしない戦いを終わらせる方法は、
実は物語の序盤である「無印」の中で既に示されている。

「フェストゥムに、(人間の)悲しみを教えること」

それは「とても簡単で、とても難しい方法」でもあった。

しかし物語の中で、フェストゥムが知ってしまうのは ”憎しみ” だった。

だが、”憎しみ” を知ったフェストゥムと人類との壮絶な戦いが続く中、
新たな希望もまた現れてくる。

■対話と理解

なにぶん長大な作品であるし、登場人物も多岐にわたる。
いろいろなテーマを含む作品ではあるが、その中でも
「対話と理解」は本作を貫く重要な柱の一つであると思う。

最終話を見終わって思ったことは、「ファフナー」という作品は
この点については最後までブレなかったということだ。
相手を滅ぼすのではなく、理解する/理解してもらう ことによって
戦いを終わらせる。

「対話と理解」を以て戦いに終止符を打つ、
この物語の最終章となる「THE BEYOND」。
その中心に立つのは、「無印」から主役を務めてきた者たちではない。
彼らの下の世代の者たちだ。

上の世代が築き、残したものを受け継ぎながらも
時には反発し、逆らい、否定する。
先行する世代が持ち得なかった価値観で、
先行する世代が届かなかった、新たな可能性にたどりつく。

長い時間をかけてつくりあげた物語の土台を壊しかねない展開だが
それがラストの、これ以上ないという最高のカタルシスにつながる。
つくづく、この作品を見続けてきてよかった、
そう思わせるエンディングだった。

■最終回の風景

この第10話~最終話は、最終章ということもあるのか
「無印」を想起させるシーンが随所にある。
中でも、物語の掉尾を飾る最終話は、それが顕著だ。

それぞれのキャラクターたちの着地点が描かれるのだが、
長きにわたった物語ゆえに、ファンにとっては
いろいろ思い出すだろうし、感慨深いものがあるだろう。

 映画館で私の横に座っていた20代半ばかと思われる女性は
 最終回が始まるとすすり泣きを始め、
 ”あるシーン” になると号泣してしまった。
 もちろん私も滂沱の涙(T_T)。
 あんなシーンを見せられたら、泣くしかないじゃないか・・・

ラストシーン近くで交わされる、○○と□□の会話は
「無印」第★話の△△と□□の会話を彷彿とさせる。
この物語は、”いなくなった者たち” を忘れることはない。
これもまた、全編を通じて揺るがなかった。

長きに渡って、素晴らしい物語を見せてくれた制作スタッフの皆さん、
ありがとうございました。


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グラスバードは還らない [読書・ミステリ]

グラスバードは還らない 〈マリア&漣〉シリーズ (創元推理文庫)

グラスバードは還らない 〈マリア&漣〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 市川 憂人
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/03/19

評価:★★★★

マリア&漣の刑事コンビが活躍するシリーズの第3作。

希少動植物の密売ルートの捜査を行っていたマリアと漣は、
顧客の中に不動産王ヒュー・サンドフォードがいるという情報を掴む。

彼がニューヨーク市に所有する超高層ビル ”サンドフォード・タワー”。
最上階にある彼の自宅の奥の一画では、その希少動物が飼育されていて、
ごく一部の人間だけがそれを目にすることを許されているという。

折しもヒューが所有するガラス製造会社では産学協同で行ってきた
新製品・屈折率可変型高機能ガラスの開発の目途がつき、
タワー最上階の自宅ではスタッフを集めた懇親パーティーが開かれた。
しかしそれに参加していたメンバー5人は見知らぬ場所で目を覚ます。
どうやら薬物を盛られたらしい。

開発責任者トラヴィス、その部下のチャック、
大学の研究者イアン、博士課程の大学院生セシリア、
そしてサンドフォード家のメイドのパメラ。
彼らが閉じ込められていたのは周囲を壁で囲まれ、
透明なガラスで複雑に仕切られている空間。
そしてその中で、一人また一人と殺されていく・・・

一方、捜査のためサンドフォード・タワーを訪れたマリアと漣だが
当然ながら受付で門前払い。しかし挫けないマリアは
警備の目を盗んで非常階段を登り始める。

足を棒にしながらも(笑)登り続けるマリアだが、
その時タワーで爆弾テロが発生、ビル倒壊の危機が迫る。
降りることもできなくなった彼女は、ひたすら上を目指すのだが・・・

物語は、閉鎖空間に綴じ込まれた5人が遭遇する
「そして誰もいなくなった」状況のミステリもの、
倒壊しつつあるビルに閉じ込められたマリアのパニックもの、
この2つのパートが交互に語られていく。

もちろんこの2つは最後に一つに収束するのだけど
マリアによって導き出されるのは、実に驚くべきカラクリ。

読んでいても、いったい何がどうなってるのか
さっぱり見当がつかないのだけど、
それをきっちり合理的に理屈づける技量はたいしたもの。

この作者は3作続けて超絶難度の離れ業を決めてきた。
この才能は半端ではない。

タイトルの「グラスバード」とは、
ヒューが飼育している希少動物のひとつ。
そのあまりの美しさに、登場人物の一人は心を奪われてしまうのだが
これも本作におけるミステリとしての重要パーツの一つ。

真空気嚢式の気球 ”ジェリーフィッシュ” も重要アイテムとして登場、
前作で開発された ”ブルーローズ” も物語の背景に顔を出すなど、
シリーズを追ってきたファンにも嬉しいつくり。

 と書いてくると前2作を読んでいなくてはマズいのかと
 思うかも知れないが、そんなことは全くない。
 このシリーズ3作は、どこから読んでも大丈夫なようにできてる。

マリアと漣のとぼけた掛け合いもお馴染みなのだが
登場するキャラたちの織りなす人間模様も読ませるし、
ストーリー・テリングもとても達者。

次作が待ち遠しく感じるミステリ作家さんの一人だ。


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そして、バトンは渡された [映画]

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東大出のサラリーマン・森宮壮介(田中圭)は子連れの女性と結婚したが、
その妻に逃げられ、義理の娘・優子(永野芽郁)と二人暮らし。
彼女は高校の卒業式に向けてピアノを猛特訓中だが、
クラスでは友人がいない。そんなとき、
音大進学を目指す同級生・早瀬健人(岡田健史)と知り合う。
次第に健人に惹かれていく優子だったが・・・

水戸秀平(大森南朋)は妻に先立たれ、
幼い娘の ”みぃたん”(稲垣来泉) を抱えていた。
梨花(石原さとみ)という女性と再婚するが、
彼女はみぃたんを実の娘のように慈しむ。
その秀平が ”自分の夢を叶えるため” にと勝手に会社を辞め、
梨花に対してブラジルへの一家揃っての移住を切り出した。
しかし梨花はその申し出を拒否、みぃたんとともに日本に残ることに。
秀平と離婚した梨花だが、パート暮らしで生活は困窮、
やがて泉ヶ原茂雄(市村正親)という資産家と再婚するのだが・・・

映画はこの2つの家族の物語を交互に描いていくのだが
両者の関係については、観ていれば容易に見当がつくだろう。

優子の義父・壮介は ”不器用だが誠実” を絵に描いたような人物。
会社での出世にも頓着せず、血のつながらない娘との
距離感に戸惑いながらも、懸命に育てていく。

優子もまた、それに応えて優しく思いやりのある娘に育つが
複雑な生いたちゆえか、人間関係の構築がうまくできない。
しかし、卒業式に向けて懸命にピアノ練習に努力する姿を見た
クラスメイトたちは、彼女への態度を少しずつ変えていく。

やがて迎えた卒業式。
ピアノを弾く優子の姿を見て壮介は号泣するのだが
観ている私の周囲のあちこちからもすすり泣きが。
ここはこの映画での、大きな感動ポイントだ。

しかしストーリーはまだ半ば。

高校卒業から(作中では明示されないけど、たぶん)3年くらい後、
調理師として働く優子は健人と再会する。
音大を中退し、もう一つの夢であった料理人を目指しているという。

やがて二人は結婚を決意するが、壮介はそれを許さない。
「無職のプー太郎に娘はやれない」まあ当たり前の反応だ。

実際、健人はピアノの才能は天才的だが生活能力はかなり低そう(笑)。
健人の母も猛反対。息子の生きる道はピアノしかないと信じてるからね。

困った二人は、ある行動に出るのだが・・・

この作品の特徴は、悪人が一人も登場しないこと。
出てくるのはみな善人ばかり。

終盤では、2つの家族を巡って、親たちがついていた《嘘》、
そして隠されていた《秘密》が明らかになっていくのだが
それらはすべて、娘に向ける愛情ゆえのもの。

親が変わり、名字も変わる。血のつながらない家族。
描きようによってはいくらでも悲惨な状況になり得る話が
本作では感動の物語に昇華する。

「そんな善人ばっかり登場するなんて、絵空事の話だ」
そう思う人もいるだろう。
実際、現実世界では不幸な結末を迎えるケースもままあるだろう。

でも、フィクションの中だけでも
「人の善意が信じられる世界」があってもいいじゃないか。

”物語” というものは、人を絶望させるために存在するのではない。
明日を生きる希望を与えてくれるものじゃないのか?


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エクソダス症候群 [読書・SF]

エクソダス症候群 (創元SF文庫)

エクソダス症候群 (創元SF文庫)

  • 作者: 宮内 悠介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/07/20

評価:★★★

主人公はカズキ・クローネンバーグ、29歳。
開発が進み、60万人が暮らす火星で生まれたが
地球で教育を受けて医師となった。
しかし恋人が自殺したことから地球の医学界に居場所をなくし
生まれ故郷の火星へやってきた。

新たな勤務先は、ゾネンシュタイン病院。
10棟もの病棟を抱える、この星で唯一の精神病院であり、
亡くなった父親がかつて勤務した場所でもあった。
しかし薬やベッド、スタッフなどの医療資源は慢性的な不足状態。

そんな中、カズキは着任早々「ここでは俺が法だ」と豪語する
院長のイワンから第7病棟の病棟長に任命されてしまう。

火星では今、妄想や幻覚を伴う強い脱出衝動に駆られる精神病、
<エクソダス症候群>が発生していた。
カズキ自身もこの病に冒されており、薬で症状を抑え込みながら
患者の治療に当たっていく。

病院の特殊病棟である第5棟には、この病院最古の患者にして
第5棟の病棟長でもあるチャーリー・D・ボップがいた。
彼はこの病院の過去に関する何かを知っているようだ。

やがて病院の内外でいくつかの異変が発生し、
カズキ自身の出生と家族の秘密、そして
<エクソダス症候群>の正体が明らかになっていく・・・

一癖も二癖もありそうな医師や看護師、
心に何らかの葛藤を抱えているがゆえに、
独特な感性をもって行動する患者たち。
多彩なキャラの絡む物語は、次第に不穏な空気を増していき、
先の展開を予想するのは容易ではない。

病院内の謎めいた雰囲気の中で進行するサスペンスであり、
終盤にまとめて真相が明らかになるのはミステリ的でもあり。
精神医学をテーマにしたSFでもあり。

全体的に陰鬱な物語で、正直なところこういう話は苦手。
でも、エピローグに至ると厚い雲が薄れ、
薄日が差し込みつつあるような明るさを感じさせるのが救いか。


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アイの歌声を聴かせて [アニメーション]

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舞台となるのは、IT企業・星間(ほしま)エレクトロニクスの企業城下町。
主人公・サトミ(cv福原遥)の母・ミツコは星間でAIの研究をしており、
サトミの通う高校の生徒の親も大半は星間で働いている。

ミツコが開発中のAIは、女子高生を模した筐体に収められ、
「シオン」と名づけられて実用試験に臨む。
”彼女” が行うのは、実際に高校に通って5日間を過ごすこと。
その間、ロボット(AI)と気づかれずに済めば成功だ。

サトミは、家で仕事をする母の様子からこの実験のことを知ってしまうが
なんとシオンは、サトミのクラスに ”転入” してくる。

教室にやってきたシオン(cv土屋太鳳)は、サトミに突然語りかける。
「サトミは今、しあわせ?」さらに、唐突に歌まで歌い出す。

サトミは ”ある理由” から「告げ口姫」と後ろ指を指されるようになって
クラスではいつもひとりぼっちだった。
友達がいないサトミのために、シオンは思いもよらない方法で
サトミの “幸せ” を叶えようとするのだが・・・

シオンが引き起こすトラブルは周囲を巻き込んだ大騒ぎになっていくが
その中で、サトミの幼馴染で機械マニアのトウマ(cv工藤阿須加)、
人気NO.1イケメンのゴッちゃん(cv興津和幸)、
気の強いアヤ(cv小松未可子)、柔道部員のサンダー(cv日野聡)の4人は
シオンの秘密を知ってしまう。

 ちなみに、柔道部員の彼のあだ名がなんで ”サンダー” なのか
 考えたのだけど、ひょっとして本名が「杉山」だからか?
 「サンダー杉山」って、もう知ってる人の方が少なそう(笑)。

母の実験が失敗することを恐れるサトミは
4人にシオンのことは口外しないように頼み込む。しかし
その間にもシオンの ”迷走” は続き、そのフォローに協力し合いながら
次第にサトミはこの4人との絆を育んでいく・・・

映画の前半は、このように進んでいく。
青春ものとしてはテンプレな展開かもしれないが
AIゆえにか、ひたすらサトミのために驀進するシオンが
だんだん愛おしくなってくる

さて、物語の序盤から、謎がいくつか提示されている。
シオンには、事前にサトミのデータは与えられていなかったし
歌を歌うことも、サトミの幸せのために行動することも
プログラムされてはいなかった。

校内の防犯カメラの映像にも、映っているはずのシオンの姿はなく、
何者かがシステムに侵入してデータをいじっているとしか思えない。
彼女の行動を記録したログにもサトミや他の4人のことは残っておらず
従ってミツコは実験は順調に進んでいるものと信じて疑わない。

シオンにサトミのデータを与え、映像やログデータを改ざんし、
歌を歌わせ、サトミの幸福のために行動するよう命令したのは誰か。

物語の2/3くらいを過ぎた頃、この謎は明かされるのだが
そのための伏線もしっかり張ってあり、
観客は驚くと同時に納得し、かつ大いに感動するだろう。
私も涙腺が緩んでしまったことを書いておく。

終盤では、予定外かつ想定外の行動をとっていたことが発覚し、
全データを消去されることになってしまうシオン。
彼女を救うためにサトミたち5人がとった行動は・・・

CVについて。

シオンの土屋太鳳。
声優として下手ではないけど、作中では微妙に浮いている気もする。
でもそれは悪いことではなく、「突然歌い出す変なAI」役には
この ”浮き加減” はちょうどいいようにも思う。
そこまで狙ってキャスティングしたとは思わないけど(笑)。

サトミの福原遥。
”まいんちゃん” の頃から声優はやっていたし、近年では
プリキュア役まで経験して、声優としてのキャリアはもうベテランの域。
もうこっちを本業にしてしまってもいいんじゃない?

トウマの工藤阿須加。
サトミの幼馴染みで密かに好意を抱いてるけど、
過去の出来事のせいで素直に接することができない。
そんなオタク少年の役を好演している。
この人は声優が本業ではないのだけど、観ていて違和感は感じない。

この3人以外は専業の声優さん。皆さん達者で文句なし。
特にミツコ役の大原さやか、その上司役の津田健次郎は
大ベテランで、さすがの貫禄。

ロボットやAIを扱ったSFに触れるたびに思っていることだが
「SFに登場する彼らは、なんて健気なのだろう」
まあ、そうじゃない奴もけっこういるが(笑)。

 ラストシーンまで観れば分かるのだが、この映画だって
 一歩間違えれば「×××××××」(某有名映画シリーズ)に
 なってしまう可能性を内包している。

AIの発展を期待する者もいれば脅威に思う者もいるだろう。
それは人それぞれ。
だけど、フィクションの中だけでも、ロボットやAIは
人間にとって頼りになる仲間であり相棒であってほしいじゃないか。

本作は高名な原作があるわけでもなく、TVシリーズの映画化でもない。
知名度や集客力という面では不利な面が否めないオリジナル作品だ。

でも、本作は素晴らしい青春ものであり、
AIが「人間の幸せ」というものを学んでいく過程を描く
素晴らしいSFであるし、
ちょっと変わった和製ミュージカル(風)アニメでもある。

たしかに映画序盤でシオンがいきなり歌い出すシーンでは
「おいおい」と思ったが、それが次第に気にならなくなってくる。
それはよく練られた脚本と計算された演出のおかげだろう。

一人でも多くのお客さんが入ればいいなあ、と切に思う。


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謎が解けたら、ごきげんよう [読書・ミステリ]

謎が解けたら、ごきげんよう (新潮文庫nex)

謎が解けたら、ごきげんよう (新潮文庫nex)

  • 作者: アザミ, 彩藤
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 文庫

評価:★★★

「昭和少女探偵團」シリーズ、第2巻。

時代は昭和6年。
自由な校風が自慢の私立聖桐(せいとう)高等女学校に通う
14歳の花村茜は、同級生たちと ”探偵團” を結成する。

鋭い洞察力を持つ夏我目潮(なつがめ・うしお)。
電気店の娘・丸川環は、科学的素養と手先の器用さをもつ発明家の卵。
そして華族・見留(みとめ)院子爵令嬢、紫(ゆかり)。

「第一話 雨傘のランデ・ブー」
帝都を嵐が襲った2日後、潮が学校に筆入れを忘れて帰ってしまった。
茜はそれを届けに行くという口実で、教師から潮の住所を聞き出す。
私生活のことは黙して語らない彼女のことを知りたかったからだ。
潮の家は、下町の長屋だった。自分の境遇との差に戸惑う茜。
その長屋の入り口にある傘立ての中で、2本だけ雨に遭ったように
濡れたままの傘があった。昨日今日と雨は降っていないのに。
しかもそのうちの1本は潮のものだった。だれが、何のために・・・

「第二話 すみれ色の憂鬱」
茜の通う学校には敷地内に教会があり、懺悔室もある。
生徒に開放される日もあり、そのときは当番の尼僧が
生徒の懺悔を聞くことになっている。
4年生の天川櫻子が ”あること” を告白していたとき、
仕切りの向こうにいた尼僧の気配が突然消えてしまう。
訝しんだ櫻子が格子の向こうを除くと、誰もいない。
その日当番だった尼僧は、懺悔室へ来るのが遅れてしまい、
櫻子の懺悔のときには誰もいなかったはずだったというが・・・

「第三話 群青に白煙」
サブレギュラーの若手刑事・鬼頭錦郎の物語。
父が再婚した後妻の子である錦郎は、父の訃報で秩父の実家へ帰るが、
そこで意外な事実を知らされる。5人兄弟の中で、
彼だけが幼少時に同姓の他人のもとへ養子に出されていたのだ。
相手は「紙の上のことだけでいい」と父に頼まれたのだという。
やがて明らかになる自らの出生の秘密。行方不明の叔父のこと。
酒好きの暴れ者で、母を泣かせていた父の隠された意外な一面・・・
一話まるまる使って鬼頭刑事に充て、しかも殺人事件も扱われるなど
シリーズの定型や雰囲気をかなり逸脱した外伝的なエピソード。
でも、鬼頭刑事は登場直後から茜をけっこう気にかけている描写も
散見するので、今後は重要なキャラになっていくのかも知れない。

「第四話 D坂の見世物小屋」
団子坂の愛頭(めず)神社で嫉村(そねむら)興業舎による
見世物小屋が開かれていた。
しかし団員の一人が怪我で欠場、その穴埋めを頼まれたのは
潮の母親だった。嫉村興業舎には怪しげな噂も多く、
心配した潮は変装して見世物小屋に入ろうと企て、茜に手伝いを頼むが
彼女は探偵團全員で参加することを決めてしまう。
しかしなぜか小屋の周辺には鬼頭刑事を始め私服の警官が潜み、
見世物の最中には突然の白煙がテントの中に充満する・・・

「第一話」と「第二話」は日常の謎系ミステリだが
その事件の裏には、上流社会と下層の社会の断絶が隠れている。
「第四話」は、当時の歴史を背景にした物語。
昭和6年という時代ならではのミステリだ。

「エピローグ」では昭和7年へと時代が進み、満州国が建国される。
このシリーズがどこまで描くのかは分からないけど、
これからもその時々の世相を取り込んでいくのだろう。

・・・って書いたんだが、この2巻目が刊行されたのが2年前。
3巻目はどうなるのかな? まさか打ち切り?
まあ一話完結方式なのでここで終わらせてもいいのだろうけど
茜さんと鬼頭刑事の仲がどうなるのか知りたい。
続き、出ないかなぁ。

 


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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-」感想・・・のようなもの その4 [アニメーション]

※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。

■「デザリアム」とは?

「ヤマト2205 新たなる旅立ち」で登場する敵勢力「デザリアム」。
ネットではその正体についてあれこれ憶測が飛んでるみたいだけど、
ささやかながら私もそれに加わってみたい。

■旧作「新たなる旅立ち」における ”敵” は

旧作では「暗黒星団帝国」って自称されてた皆さん(笑)。
「新たなる旅立ち」と「ヤマトよ永遠に」の2作を通じて登場する。

首から下は機械のサイボーグという、ほとんどロボットのような体で、
「永遠に」でヤマトの前に姿を現した彼らの母星は、地球そっくり。
それもそのはず、「彼ら」は200年未来の地球だったのだ・・・

しかし「未来人」というのはヤマトを欺く欺瞞であり、
実は地球とは縁もゆかりのない異星人だった・・・
というのが「永遠に」の結末だったが。

■デザリアムは「未来の地球」なのか?

今回の「2205」では、今度こそ(笑) ”未来の地球” ではないか、
という説がネットを飛び交ってるみたいだ。
それは当然で、状況証拠はたくさんあるから。

デーダーがしばしば口にする「タイムライン」、「記録」、
そして「歴史」という言葉。
あたかも彼らがこの世界の辿る道を予め知っているかのような口ぶり。

グレート・プレアデス艦内に流れる地球のクラシック曲。
アナログレコードのことを知っているかのようなメルダーズの台詞。

 まあ、ちょっとあからさますぎるのが気にかかるけどね。

さらに言えば、「2202」終盤の展開の中にも。

時間断層から産み出される夥しい艦艇、AIによる戦闘指揮、
そして「銀河」のクルーが口にした、人体の機械化や人造兵士は
旧作の「暗黒」を彷彿させる。

「2205」は「2202」の途中から企画が始まっていたというから、
「2202」の終盤に次作の伏線を張っておくのは十分に可能だったろう。

 あれもこれも、観客をミスリードするための描写なのかも知れない。
 さんざん伏線を張っておいて、やっぱり旧作同様、
 「地球とは無関係でした」ってちゃぶ台を返す、って可能性もある。

とはいっても、今のところ「地球の未来」って可能性を
否定する根拠はないようだし、私もそちらのほうに一票を投じよう。

というわけで、以後はデザリアムが「未来の地球」と仮定してみて、
いろいろ考えたことを書いていってみる。

■疑問点

[1]どうやって過去へ来たのか?

これは二つの場合に分けられる。
 a:自らの意思で来た
 b:外的要因によって過去に飛ばされた

aならば、さらに次の疑問。
[1-a]過去へ来た理由は何か?

bならば、さらに次の可能性。
[b-1]人工的な要因(敵対勢力など)によって飛ばされた
[b-2]自然現象(時空の歪みに落ち込むなど)によって飛ばされた

[2]イスカンダルに固執するのはなぜか?

本編後に上映された「2205後章」の予告編では、
データーがこう言ってる。
「忌むべき星イスカンダル。その呪われし力は
 我らデザリアムによって管理されねばならぬ」

なんだかデザリアムは昔、イスカンダルに
ひどい目に遭わされたことがあるような口ぶり。

単にイスカンダルの持つ超科学全般とかが目的ではなく
何か特定の ”もの” を自分の管理下に置きたいようにもとれる。

[3]「デザリアム1000年の夢」とは何か?

そして個人的に一番気になるのが

[4]「2205世界」につながる未来なのか、そうでないのか。

まず、[4]について考えてみよう。
ここからいろいろ考察(妄想?)を広げていくと
[1]から[3]の答えも見つかるかも知れない。

■並行世界の未来

ネットの説には「時間断層を放棄しなかった地球の未来」
というものがある。
時間断層を潰すことが否決された並行世界から来た、というものだ。

 「2202」最終話で古代たちが見た ”世界樹” は
 あらゆる並行世界の可能性を示すもの。
 様々な可能性と時間軸をもった世界は無数に存在する。
 「なんでもありうる」ってテレサも言ってたし。

 「2202」25話でテレサが我々の三次元世界に出現したが、
 あれは無限の並行世界の中で、ヤマトを中心とした人の ”縁” が、
 最終局面でテレサの介入を可能とする状況をつくり出したから。
 彼女は ”世界樹” の中にその可能性を拓く世界を見出したからこそ、
 テレサはヤマトのクルーに呼びかけてきたのだろう。
 彼女はヤマトを選んだのではなく、世界を選んだのだ。

 ということは、テレサが出現することなく人型知的生命体が
 根絶されてしまった並行世界もまた存在したということだね。

■デザリアムの正体は

私も「デザリアムは並行世界から来た」という説を採りたい。

時間断層放棄を巡る国民投票の結果によって、「2202宇宙」は
可決された世界(これをY世界とする)と
否決された世界(これをD世界とする)に分岐した、と考えてる。

 古代たちが帰ってきて、時間断層を放棄した地球が
 再び軍拡の道を歩み出した、っての考えたくないなぁ。
 それは「2202」におけるヤマトの旅が
 結果的に何も実を結ばなかった、ってことだから。

並行世界説を採れば、Y世界の地球人が滅亡しても
D世界の地球には影響はないので、デザリアムの方々は
心置きなく(?)地球を攻撃できることになる。

■D世界と「1000年の夢」

古代たちが地球に帰ってこなかったD世界では
よりいっそうの軍拡が進み、ガトランティスへの恐怖から
それを超える武力を目指すようになる。

 「2202」で銀河の藤堂艦長が言ったように
 「恐怖を克服するには自らが恐怖なるしかない」

「2202」20話において、”ゼムリアの語り部” から
ガトランティスが滅びの方舟を目覚めさせたのは1000年前と判明する。
彼らはそこから1000年かけて強大な戦闘国家を創り上げ、
圧倒的な武力で地球圏へ侵攻してきた。

「1000年の夢」とは、ガトランティスの侵攻に脅えた地球が目指す姿。
すなわちガトランティスを越える武力を得ることではないのか?

■D世界の辿った歴史

ガミラスは星の寿命を迎え、居住できない星となる。
この世界ではデザリアムの侵攻はないので
爆発・消滅することはないだろうが
デスラーによる移民が進行すればガミラスは無人の星となる。

一方、地球はますます武力を増強、ガミラスとの力関係は逆転する。
そのうち、ボラー連邦に対抗できる武力も手にするだろう。
その力を持った地球は天の川銀河の征服に乗り出すかも知れない。

■イスカンダル(D世界の)の裁き?

並行するD世界からY世界へ、世界の壁・時間の壁さえも越えて
デザリアムを本星ごと ”追放” したのはイスカンダルではないのか?

かつて救いの手を伸ばした地球が、
武力による覇権国家へと変貌してしまったら・・・

「コスモリバースを与えたのは、こんな地球にするためではない!」
と ”お仕置き” をする。

とはいっても、いくら邪悪でも滅ぼすことはないだろうから
この宇宙に害を及ぼさないように、他の宇宙へ追い出したのではないか。

追放した先がたまたまY世界だった、てのはちょっと都合がよすぎるが
イスカンダルの方々が間違えたのかも知れないし
D世界と一番 ”近い位置” にあったのがY世界だったのかも知れない。
「悪い奴を送ったから後はよろしく」とばかりに
狙って放り込んだ、ってことはないと思いたいが・・・

デザリアムの ”追放” が何年後の未来なのかは分からない。
そのときのイスカンダル女王は次代、次々代のスターシャかも知れない。
まさか今上猊下だったりして・・・
でもイスカンダル人の寿命って不明だよね。
数百年単位で生きるのかも。

■デザリアムの目的

Y世界へとやってきたデザリアムの目的は、
まずはイスカンダルの持つ超科学力を我が物とすること。
もとのD世界へ帰るためか、それとも目標を変更して
このY世界で覇者となるためかは分からないが。

■デザリアムの本星=地球

この説を採ると、いろいろ都合がいい。

例えば、旧作「ヤマトよ永遠に」のように
デザリアムの母星に地球の遺跡があっても当たり前だし、
ヤマト一隻のために惑星一つでっち上げるという勤勉さ(笑)も必要ない。

その本星の内部に巨大要塞があっても、彼らの科学力で築いたのだろう。
もともと地球には地下都市が縦横無尽に建設されてたのだから
それを拡張・発展させていけばいい。

デザリアム・ハンマーを見れば、彼らには
マントルなどの惑星内部構造をいじれる技術がありそうだし。
おお、なんだか辻褄が合ってきたぞ(おいおい)。

■まとめ

最初に掲げた疑問への答えをまとめると、

[1]どうやって過去へ来たのか?
→外的要因(イスカンダル)によって過去に飛ばされた。

[2]イスカンダルに固執するのはなぜか?
→イスカンダルの超過学力を手に入れるため。
 そして (1)元の世界(D世界)に帰る or (2)Y世界で覇権を得る ため。

[3]「デザリアム1000年の夢」とは何か?
→1000年かけて超軍事国家へとなったガトランティスを目標に
 それを超える戦闘国家を目指すこと。

■古代の戦いは

デザリアムが、自分たちが帰ってこなかった世界(D世界)の
行く末だと知れば、古代はどう感じるだろう。

 地球が時間断層を放棄したのは、歴史的にも正しかったと知って
 自分たちの生還のために感じている責任は、
 少しは軽減されるのだろうか?
 まあ、そんな単純な思考にはならないとは思うが。

古代たちにとっては、なお一層のことデザリアムの存在は認められないし、
彼らとの戦いは負けられないものとなるだろう。

■ヤマト=滅びの方舟

旧作においては、地球に悪さを仕掛けた ”悪い異星人”(笑) は、
みなろくな末路を辿ってない。
ほとんどの星は滅亡してる(ガミラスも一度は滅亡してるし)。
指導者の死亡だけで済んでるのはボラーくらいか。

「2205」以降の物語でも、次々と現れる ”悪い異星人” が
”粛正” されていくのなら、ヤマトは結果として
”滅びの方舟” の役割を引き継いでしまったのではないか?
「悪しき進化を遂げた人型生命体を刈り取る」という役割を。

テレサには「2205」以後の未来の世界もまた見えていたはず。

「テレサに呼ばれた者は、あるべき未来のために、為すべきを為す」
テレサの導きは、いまだヤマトを捉えたままなのかも知れない・・・

■終わりに

・・・とまあいろいろ好き勝手なことを書いてきたけど
すべて憶測と妄想をこねくり回したものなので
当たってるとは限らない、というかたぶん外れてる。

「2205」を観れば、誰でも似たようなことは頭に浮かぶだろうから
当然ながら、制作陣はそんな素人の予想を超えた ”解” を
用意しているだろう。

とはいっても、ヤマトの新作についてあーだこーだと
妄想を膨らませることができるなんて、いい時代になったものだ。
願わくば、この幸せな時間が少しでも長く続くことを祈って。


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花窗玻璃 天使たちの殺意 [読書・ミステリ]


花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

  • 作者: 深水黎一郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/11/13

評価:★★★☆

芸術を愛する探偵・神
泉寺瞬一郎シリーズの一編。
彼がヨーロッパ遊学時代の出来事を書いた手記という形で語られる。

18歳の瞬一郎は、フランス北部の街・ランスを訪れる。
ここにはゴシック様式で建築されたランス大聖堂がある。
そしてそこには、シャガールが手がけたステンドクラスもあった。

ちなみにタイトルの花窗玻璃(はなまど・はり)というのは
ステンドグラスを意味しているらしい。

最近、ランス大聖堂で一人の人間が死んだという。
その男は大聖堂の二つあるの塔の片方から転落死したのだが
事件時には塔は密室状態にあり、警察は自殺と断定する。

しかしその半年後、再び塔で死者が発生する。

ランス大学の学生寮に住み始めた瞬一郎は
多様な学生たちと生活を共にし、さらには
ジョルジュ・ローランという歴史学の元教授と知り合う。

やがて、転落死を遂げた男と学生寮の管理人とに
意外な関係があることが明らかになり、
瞬一郎も事件に巻き込まれていく・・・

瞬一郎の手記というのがまた変わっていて、
カタカナを一切使っていない。
例えば仏蘭西(フランス)、蘭斯(ランス)、人名も洛蘭(ローラン)とか
徹底的に全て漢字表記だ。

とても読みにくいのだけど、さすがにそういう漢字表記には
必ずカタカナでルビが振られているので、そのうち慣れてくると
漢字は見ずにルビだけ読むようになっていって読む速度も上がる。

さて、肝心のミステリとしての出来について。
メインは転落死に於ける密室トリックなのだが
うーん、これはどうだろう。

理屈としては可能なのかも知れないが
実際に行うのは至難の業にような気もする。
「いくらなんでもこれはないだろう」というのが素直な感想。

私にはほとんど机上の空論のように思えるのだが
実際に行われたら、華麗にして幻想的な風景が現出するだろう、
というのは理解できる。受け入れられるかどうかは個人の好みだね。

前述のローラン氏を始め、寮の学生たち、管理人の家族など
魅力的なキャラが多数いて、18歳の瞬一郎くんの、
青春時代の思い出の物語としても楽しいのは確か。

瞬一郎は18歳から24歳までの6年間を海外で過ごしているので
また違う時期の物語が語られるのかも知れない。

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「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-」感想・・・のようなもの その3 [アニメーション]

※ネタバレ全開です。未見の方はご注意ください。

第四話 イスカンダルを救え!若き勇者たちの反乱!!

■地球司令部

「惑星規模でワープを行える星・・・」
白色彗星の本体は土星規模だったからね。
藤堂の脳裏にはガトランティスの悪夢がよぎったのかも。

■グレート・プレアデス

BGMはショパンのノクターン2番。
「我らが故郷デザリアムは遠い。
 惑星一つをまるごと移送するには、今しばらくは
 現時空間で跳躍を繰り返さなければならない」
「デザリアム1000年の夢のために」
「必要なのはイスカンダルのみ。ノイズはいらん」

”遠い”とはどれくらいか。旧作みたいに40万光年彼方ではなかろうが。

”1000年の夢” とは何だろう。中身も不明だが、進捗状況も気になる。
1000年前から始めていて、間もなく終わるのか、
今から始めて、1000年後の達成を目指しているのか、
始めてから500年目で、あと500年かけて達成させる、とか。

■奮戦!ガミラス艦隊:その4 移民船団防衛戦

今回のガミラス艦隊は戦闘ばかり。
4話の中で4回も戦闘シーンがあるんだから。

旧作の「新たなるー」でのガミラス艦隊はデスラーの私兵みたいで
彼のわがままに無理矢理つきあわされていたように見えた。
暗黒星団艦隊にどんどん撃ち減らされて
最後はデスラー艦のみになってしまって。
ほとんどの兵士は戦死じゃないのかなぁ。
それもこれもイスカンダルに固執するデスラーのせいだからね。

でも今作は違う。どの戦いにも、同胞の生命を守るという目的が
確固として存在していて、ちゃんと軍隊としての役目を果たしている。
だから彼らの戦いにも充分に感情移入できる。
実際、こんなにガミラス艦隊に入れ込んで応援したことは
かつてなかったように思う。

■イスカンダル王宮

「彼らを救う方法はある」
”儀式” を受けさせてサンクテルに迎え入れること。

「その儀式が命にとってどういう意味を持つか。
 ユリーシャ、まだ幼いあなたにはわかっていないのです」

ユリーシャさんの外見は森雪さんとほぼ同じみたいだから、
地球年齢では20代半ば?くらいに見えるんだろう。

でも ”幼い” んだそうで。
旧作の設定を踏襲してるなら、実は2197年あたりに生まれていて、
短時間(1年間)で20歳くらいまで外見が成長し、
それから2198年に地球に来た?
ということは地球の暦では8歳くらいだったりする?

まあ「2199」での彼女は ”不思議ちゃん” でしたからね。
実は精神的に幼かった、というのもありかと。

では、スターシャ猊下は何歳なんでしょうね。
女性にトシを聞くのは失礼なんだが・・・

イスカンダル人の出生にはいろいろと謎があるようで。
リメイク版ではどんな解釈を見せてくれるのでしょうか。

■サーシャ

カプセルの中の光。「2199」の ”星のエレメント” を連想させますな。
「あのままにしている」とは?
イスカンダル人は肉体と魂を分けた状態で成長する、
とかいう説をネットで見かけたけど、それもアリかと思わせる。

■藪の覚悟

ヤマトから脱走し、単身ガミラスへ行こうとする藪。
それを止める新クルー。ここからが藪くんの本領発揮(笑)。

「どうせここには俺の居場所はない!
 いや、俺にはそんなもの最初からなかった! だからガミラスに・・・
 そこでやっと見つけたんだ! 自分の居場所を! 覚悟を!
 こんな愚図で役立たずな男が、
 何で生まれてきたのか、何のために生きていくのか、
 その全部を教えてくれる、家族って居場所を!」

いやあ、台詞を書き出しているだけで涙が出てくるよ。
個人的には、ここが今作の最大の感動ポイントだったりする。

この台詞はオールドファンの方々には刺さるだろうなあ。
40年前は少年少女だった方々も、今では家族を持っている人も多かろう。
親になっている人も少なくなかろう。
喜びも悲しみも分かち合える、何物にも代えがたい大切な居場所だ。

「現実は意地が悪い。いつだって最悪に最悪を重ねてくる。
 真面目に不器用に生きてる奴ほど狙われるんだ。
 全部一人で受け止めて、潰れて死んでしまうようなバカほど」

愚直に頑張って働いてる人に限って、割の合わない羽目になるとか
現実世界ではよくあること。
やたら要領がよく、上手く立ち回って楽してる奴がいる、
ってこともよくあること。

コロナ禍でこれと同じ思いを抱いた人もいただろう。

 でも、長い人生の中で、損な役回りになってしまった時でも、
 投げ出さずに頑張ってきた人も多かろう。
 「誰かがこれをやらねばならぬ」
 この歌を胸に頑張ってきた人も多かろう。

でも、頑張りすぎて壊れてしまう人もいる。
これも残念ながらよくあること・・・

 土門のこの台詞を聞くと、ここにつなげるために
 「いままでのあらすじ」での芹澤の独白があったんだろうと思う。

「わかったようなこと言ってんな! だったらお前はどうなんだ!
 何でヤマトに潜り込んでんだ! 試したかったんだろ! 古代艦長を!
 父親の命に見合う人間か! 地球の運命を背負える人間かって!
 そんなヤツはいない、人間なんてそんなもんだって諦めてたら、
 試そうなんて思わないよな! 期待しているから!
 まだ諦めていないから! おまえは! 俺たちだって!!」

太助も外見に似合わず(失礼!)、熱血漢だった。
拳を食らわせて叫ぶ、このシーンを見ていると、
今が21世紀の令和の時代だというのを忘れてしまうよ。
昭和のスポ根アニメの世界ですな。

でもこういう雰囲気が嫌いじゃない、むしろ心地よい。
それは私も昭和の人間だからか。
今の若い人にはどう見えるのだろう。暑苦しくてダサいのだろうか。

新人クルーたちにとって、今作で一番の見せ場でもある。
でも、彼ら彼女らが「ヤマトを継ぐ者たち」になるためには、
まず生き残らないとね(えーっ)

■新クルー反乱

いつの間にか土門がリーダーとなってるのも上手い描き方。
さすが防大首席は伊達じゃない(笑)。
分担もきちんとできていて手順もいいが、如何せん相手が悪かったか。
あるいは、古代自身が既に反乱の根回しをしていたのか。

■古代の演説

「達する。こちらはヤマト艦長、古代。
 これより第65護衛隊はマゼラン銀河に向かう」

ここが前章のクライマックスだ。

「地球軍司令部の命令ではない。これは我々の意思だ」
 従えぬと言うものはあとで申し出て欲しい。
 マゼラン側のガミラス警備隊に身柄を保護してもらう」

乗組員たちに選択の機会を与える。細かいところだが、ここは大事だ。
もっとも、「降りる」とはなかなか言い出せない空気だろうけど(笑)。

「向かう先は戦場だ。厳しい状況に晒されるだろう。
 だがヤマトはただの戦艦ではない。
 人類の希望、どんなときも希望だけは失うまいと願う、人の意思の象徴だ。
 何があろうと屈するな。抗え!
 平和を求め、争いを憎む、地球人の理想に基づき、
 我々はひとりでも多くの人を救出する!
 各員の健闘を期待する!!」

ああ、古代くんは立派になったねえ・・・
「2199」の脇役筆頭から「2202」では主役になって、
散々悩んで考えて、迷いに迷って。
でもそんな時代があったからこその今日この日。

でも、”上げておいて落とす”、”落として上げる”、てのは
ストーリーテリングの常道だからね(えーっ)。

「後章」では ”残酷な事実” が待ってるらしいので
心が折れないか心配になってしまうよ。
果たして「指揮官としての覚悟」を示し続けられるのか・・・

■お偉方

彼らはこうなることを半ば予期していたような。特にバレルと山南は。
偉くなって現場からは外されてしまったが、
年長者になったからこそできることもある。
「若い者にはできないことができる」

なぜかこの台詞、かみさんがえらく気に入ってるんだが。
職場で何かあったのかな?

■奮戦!ガミラス艦隊:その5  続・移民船団防衛戦

ついにデウスーラIII世も海に着水、このあたりも旧作準拠。
しかし艦隊も撃ち減らされていき、もはや壊滅も時間の問題。

■スターシャとの再会

避難を促すデスラー。拒否するスターシャ。
旧作ではイスカンダルを離れない理由は明確ではなかったが
今作では、離れられない何らかの事情があることが判明。
その内容は後章で?

■デスラーvsデーダー

「何という浪費、何という徒労。我らが欲するのはイスカンダルのみ
 ガミラス星はその妨げとなる故、排除したに過ぎない。
 なぜ抵抗を続ける」
「貴様、誰か?」
「我らはデザリアム。
 歴史に残らぬ弱者どもよ、消え去れ!!」

ここで ”歴史” という言葉が使われているのも伏線か。
彼らはガミラスやデスラーがこの先どうなっていくのか
知ってるような口ぶりだよねぇ。

■ヤマト到来

デザリアム艦隊からの一斉砲撃に、
絶体絶命かと思われたデスラーを救ったのは
どこからともなく放たれた防壁弾。

 でも、落ち着いて考えてみるとこの防壁弾、
 誰がどこから撃ったのだろう?
 考え出すと夜も眠れなくなりそうなのだが
 まあ、「細けぇことはいいんだよ」ですな。

「来てくれたか、ヤマト」

元祖ヤマトのテーマに乗って登場するヤマト艦隊。
旧作でも中盤のヤマ場だったからね。
ここで切って後章への ”引き” とするのは正解だろう。
大気圏に突入し、ヤマトが主砲をぶっ放すところでEND

■古代の行動原理

約束は守る。助けを求めるものがいれば助けに行く。
「2202」の時は揺れ動いていたが
ガトランティス戦役を経て心根が定まってきたようだ。
雪の前では迷い、弱音を吐くがクルーの前では毅然と。
指揮官としての覚悟も備わったのだろうか。

■まとめ

総じて、とても上手く構成されたリメイクになっていると思った。
旧作とは異なる歴史を辿ることになったリメイク世界の中に
「新たなる旅立ち」前半のストーリーラインを落とし込み、
かつ旧作の持っていた数々の ”粗” をそぎ落としてある。
それもリメイク世界の設定を上手く活用して。

 「2199」のラストでガミラスが滅亡していないからこそ
 「2205」でのデスラー、そしてガミラス艦隊の戦いが
 深く観客の感情に訴えるものになったように。

「後章」もこのまま上手く進んでほしいのだけど、
やっぱり気になるのはイスカンダル、そしてスターシャの運命。
旧作のようなやるせない思いはしたくないのだけど、さて。

けっこう長々と書いてきてしまったけど、まだ続きます(おいおい)。


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遠縁の女 [読書・ミステリ]

遠縁の女 (文春文庫)

遠縁の女 (文春文庫)

  • 作者: 文平, 青山
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/05/08
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

時代小説の中編3作を収録。
それぞれ色あいがかなり異なる作品だ。

「機織る武家」
主人公・縫(ぬい)は、貧乏武家・武井由人の妻。
わずか三十俵の家禄で、姑の久代と3人暮らしである。
久代は見栄っ張りで我が儘いっぱいの世間知らず。
夫の由人は粗忽者で、仕事の上でも失敗ばかりしでかして
二十俵もの減俸となってしまう。わずか十俵では生活できない。
そこで縫は、昔取った杵柄で ”賃機(ちんはた)” を始めることになる。
賃機とは、問屋や機屋から織り賃をもらって機を織ることだ。
縫の機織りで生活が成り立つようになったが、それによって
久代と由人の振る舞いがすこしずつ変わっていく・・・
終盤近くで ”ある事件” が起こるが、本作はミステリではなく
一人の女が手にした技術で自立していく話だ。

「沼尻新田」
主人公・柴山和巳(かずみ)は番方・柴山十郎の嗣子。
経済的に困窮する藩は、”借上げ” と称して家禄を削り、
代わりに土地を与えたが、耕作に向かない荒地も多かった。
そんな博打のような ”借上げ” であったが、
十郎は手を挙げ、新田開発に家運を賭けようとしていた。
それに反対する和巳は、父が得ようとしてる土地を検分に行くが、
そこで「すみ」という若い娘と出会う。それをきっかけに
和巳は一転して新田開発に取り組むようになるのだが・・・
彼を新田開発に向かわせた動機を ”謎” ととらえればミステリとなる。
実際、ラストに明かされる理由は実に意外なものなのだが
本作はちょっと時代小説っぽくない感じを抱かせる。
具体的に日本のどの場所なのかという描写がないし、
かつて藩主によって原野に追われた集団・”野方衆” の存在なども
あって、ちょっとファンタジーのような雰囲気も味わった。

「遠縁の女」
主人公は23歳の青年藩士・片倉隆明。
剣術は好きだが得手ではない。学問は好きではないが不得手でもない。
そんな彼に、父・片倉達三は ”武者修行” を勧める。
なぜこの時代に・・・とも思ったが、文官として生きる道においても
剣術の腕は有形無形の恩恵となる、という言葉に決意し、旅立った。
この作品の前半は、隆明の武者修行ぶりを描いているが、
ここだけ独立させても1つの短篇として成立するくらい密度が濃い。
しかし本作の本領が発揮されるのは後半からだ。
修行に出て5年目、父の急逝の知らせで故郷に帰ってきた隆明。
旅の間に、藩は大きく揺れていた。
右筆(書記官)・市川正孝が手がけた藩政改革が失敗に終わり、
正孝とその娘婿・誠二郎は責任をとって腹を切っていた。
片倉家と市川家は遠縁にあたり、正孝の娘・信江は隆明の3歳下。
その夫となった誠二郎は隆明の親友で、藩校では首席だった男だ。
隆明は藩政改革の経緯、誠二郎と信江のことを叔父・佐吉に尋ねるが
彼の語る誠二郎の姿は、隆明の記憶とはおよそ異なるものだった。
何が原因で誠二郎は変わったのか。佐吉は、原因は信江にあるという。
隆明は、隣の藩で暮らしている信江に会いに行くのだが・・・
本書の中ではもっともミステリ度の高い作品だ。
終盤に信江の口から語られる意外な事実の数々には素直に驚かされる。
藩政改革に対する様々な思惑、執政として奔走する正孝の姿、
誠二郎を追い詰めたもの、そして父・達三が武者修行を勧めた真意。
ラストに於ける隆明の決断には驚かされるが
武者修行をしていた頃からの積み重ねがあればこそ
こうなる結末を選ぶ、ということか。


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