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謎が解けたら、ごきげんよう [読書・ミステリ]

謎が解けたら、ごきげんよう (新潮文庫nex)

謎が解けたら、ごきげんよう (新潮文庫nex)

  • 作者: アザミ, 彩藤
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 文庫

評価:★★★

「昭和少女探偵團」シリーズ、第2巻。

時代は昭和6年。
自由な校風が自慢の私立聖桐(せいとう)高等女学校に通う
14歳の花村茜は、同級生たちと ”探偵團” を結成する。

鋭い洞察力を持つ夏我目潮(なつがめ・うしお)。
電気店の娘・丸川環は、科学的素養と手先の器用さをもつ発明家の卵。
そして華族・見留(みとめ)院子爵令嬢、紫(ゆかり)。

「第一話 雨傘のランデ・ブー」
帝都を嵐が襲った2日後、潮が学校に筆入れを忘れて帰ってしまった。
茜はそれを届けに行くという口実で、教師から潮の住所を聞き出す。
私生活のことは黙して語らない彼女のことを知りたかったからだ。
潮の家は、下町の長屋だった。自分の境遇との差に戸惑う茜。
その長屋の入り口にある傘立ての中で、2本だけ雨に遭ったように
濡れたままの傘があった。昨日今日と雨は降っていないのに。
しかもそのうちの1本は潮のものだった。だれが、何のために・・・

「第二話 すみれ色の憂鬱」
茜の通う学校には敷地内に教会があり、懺悔室もある。
生徒に開放される日もあり、そのときは当番の尼僧が
生徒の懺悔を聞くことになっている。
4年生の天川櫻子が ”あること” を告白していたとき、
仕切りの向こうにいた尼僧の気配が突然消えてしまう。
訝しんだ櫻子が格子の向こうを除くと、誰もいない。
その日当番だった尼僧は、懺悔室へ来るのが遅れてしまい、
櫻子の懺悔のときには誰もいなかったはずだったというが・・・

「第三話 群青に白煙」
サブレギュラーの若手刑事・鬼頭錦郎の物語。
父が再婚した後妻の子である錦郎は、父の訃報で秩父の実家へ帰るが、
そこで意外な事実を知らされる。5人兄弟の中で、
彼だけが幼少時に同姓の他人のもとへ養子に出されていたのだ。
相手は「紙の上のことだけでいい」と父に頼まれたのだという。
やがて明らかになる自らの出生の秘密。行方不明の叔父のこと。
酒好きの暴れ者で、母を泣かせていた父の隠された意外な一面・・・
一話まるまる使って鬼頭刑事に充て、しかも殺人事件も扱われるなど
シリーズの定型や雰囲気をかなり逸脱した外伝的なエピソード。
でも、鬼頭刑事は登場直後から茜をけっこう気にかけている描写も
散見するので、今後は重要なキャラになっていくのかも知れない。

「第四話 D坂の見世物小屋」
団子坂の愛頭(めず)神社で嫉村(そねむら)興業舎による
見世物小屋が開かれていた。
しかし団員の一人が怪我で欠場、その穴埋めを頼まれたのは
潮の母親だった。嫉村興業舎には怪しげな噂も多く、
心配した潮は変装して見世物小屋に入ろうと企て、茜に手伝いを頼むが
彼女は探偵團全員で参加することを決めてしまう。
しかしなぜか小屋の周辺には鬼頭刑事を始め私服の警官が潜み、
見世物の最中には突然の白煙がテントの中に充満する・・・

「第一話」と「第二話」は日常の謎系ミステリだが
その事件の裏には、上流社会と下層の社会の断絶が隠れている。
「第四話」は、当時の歴史を背景にした物語。
昭和6年という時代ならではのミステリだ。

「エピローグ」では昭和7年へと時代が進み、満州国が建国される。
このシリーズがどこまで描くのかは分からないけど、
これからもその時々の世相を取り込んでいくのだろう。

・・・って書いたんだが、この2巻目が刊行されたのが2年前。
3巻目はどうなるのかな? まさか打ち切り?
まあ一話完結方式なのでここで終わらせてもいいのだろうけど
茜さんと鬼頭刑事の仲がどうなるのか知りたい。
続き、出ないかなぁ。

 


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