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花窗玻璃 天使たちの殺意 [読書・ミステリ]


花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

  • 作者: 深水黎一郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/11/13

評価:★★★☆

芸術を愛する探偵・神
泉寺瞬一郎シリーズの一編。
彼がヨーロッパ遊学時代の出来事を書いた手記という形で語られる。

18歳の瞬一郎は、フランス北部の街・ランスを訪れる。
ここにはゴシック様式で建築されたランス大聖堂がある。
そしてそこには、シャガールが手がけたステンドクラスもあった。

ちなみにタイトルの花窗玻璃(はなまど・はり)というのは
ステンドグラスを意味しているらしい。

最近、ランス大聖堂で一人の人間が死んだという。
その男は大聖堂の二つあるの塔の片方から転落死したのだが
事件時には塔は密室状態にあり、警察は自殺と断定する。

しかしその半年後、再び塔で死者が発生する。

ランス大学の学生寮に住み始めた瞬一郎は
多様な学生たちと生活を共にし、さらには
ジョルジュ・ローランという歴史学の元教授と知り合う。

やがて、転落死を遂げた男と学生寮の管理人とに
意外な関係があることが明らかになり、
瞬一郎も事件に巻き込まれていく・・・

瞬一郎の手記というのがまた変わっていて、
カタカナを一切使っていない。
例えば仏蘭西(フランス)、蘭斯(ランス)、人名も洛蘭(ローラン)とか
徹底的に全て漢字表記だ。

とても読みにくいのだけど、さすがにそういう漢字表記には
必ずカタカナでルビが振られているので、そのうち慣れてくると
漢字は見ずにルビだけ読むようになっていって読む速度も上がる。

さて、肝心のミステリとしての出来について。
メインは転落死に於ける密室トリックなのだが
うーん、これはどうだろう。

理屈としては可能なのかも知れないが
実際に行うのは至難の業にような気もする。
「いくらなんでもこれはないだろう」というのが素直な感想。

私にはほとんど机上の空論のように思えるのだが
実際に行われたら、華麗にして幻想的な風景が現出するだろう、
というのは理解できる。受け入れられるかどうかは個人の好みだね。

前述のローラン氏を始め、寮の学生たち、管理人の家族など
魅力的なキャラが多数いて、18歳の瞬一郎くんの、
青春時代の思い出の物語としても楽しいのは確か。

瞬一郎は18歳から24歳までの6年間を海外で過ごしているので
また違う時期の物語が語られるのかも知れない。

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