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エクソダス症候群 [読書・SF]

エクソダス症候群 (創元SF文庫)

エクソダス症候群 (創元SF文庫)

  • 作者: 宮内 悠介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/07/20

評価:★★★

主人公はカズキ・クローネンバーグ、29歳。
開発が進み、60万人が暮らす火星で生まれたが
地球で教育を受けて医師となった。
しかし恋人が自殺したことから地球の医学界に居場所をなくし
生まれ故郷の火星へやってきた。

新たな勤務先は、ゾネンシュタイン病院。
10棟もの病棟を抱える、この星で唯一の精神病院であり、
亡くなった父親がかつて勤務した場所でもあった。
しかし薬やベッド、スタッフなどの医療資源は慢性的な不足状態。

そんな中、カズキは着任早々「ここでは俺が法だ」と豪語する
院長のイワンから第7病棟の病棟長に任命されてしまう。

火星では今、妄想や幻覚を伴う強い脱出衝動に駆られる精神病、
<エクソダス症候群>が発生していた。
カズキ自身もこの病に冒されており、薬で症状を抑え込みながら
患者の治療に当たっていく。

病院の特殊病棟である第5棟には、この病院最古の患者にして
第5棟の病棟長でもあるチャーリー・D・ボップがいた。
彼はこの病院の過去に関する何かを知っているようだ。

やがて病院の内外でいくつかの異変が発生し、
カズキ自身の出生と家族の秘密、そして
<エクソダス症候群>の正体が明らかになっていく・・・

一癖も二癖もありそうな医師や看護師、
心に何らかの葛藤を抱えているがゆえに、
独特な感性をもって行動する患者たち。
多彩なキャラの絡む物語は、次第に不穏な空気を増していき、
先の展開を予想するのは容易ではない。

病院内の謎めいた雰囲気の中で進行するサスペンスであり、
終盤にまとめて真相が明らかになるのはミステリ的でもあり。
精神医学をテーマにしたSFでもあり。

全体的に陰鬱な物語で、正直なところこういう話は苦手。
でも、エピローグに至ると厚い雲が薄れ、
薄日が差し込みつつあるような明るさを感じさせるのが救いか。


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