「蒼穹のファフナー THE BEYOND」 第10話~第12話(最終話) [アニメーション]
※本編のネタバレはありません。たぶん(笑)。
大河アニメ・シリーズ、堂々の完結である。
■「蒼穹のファフナー」とは
2004年のTVシリーズ(いわゆる「無印」)全26話に始まり、
2005年の単発OVA「RIGHT OF LEFT」、
2010年の映画「HEAVEN AND EARTH」、
2015年の第2TVシリーズ「EXODUS」全26話とつづき、
2019年から始まった「THE BEYOND」。
全12話を3話ずつ半年おきに劇場公開するという形式で始まったが
途中でコロナ禍となってしまった。
予定通りなら1年前に終わってたはずかとも思うが・・・
私がこの作品を知ったのはレンタルビデオだったから、
2006年のことだったと思う。
たちまちハマってしまって、円盤も全巻買ってしまった。
「無印」からリアルタイムで観てきた人からすれば17年。
私としても15年くらい、この作品とつき合ってきたことになる。
作品中での時間も短くはない。
「無印」から「THE BEYOND」まで11年くらいか。
シリーズの前日譚である「RIGHT OF LEFT」を含めれば12年。
「無印」では14歳の中学生だったメインキャラたちも、
「THE BEYOND」では25歳の立派な大人へと成長している。
■フェストゥム
本作は宇宙から飛来した謎の生物・フェストゥムと
人類との戦いを描く、いわゆるロボット・アニメのひとつ。
「ファフナー」とは、人類が開発した人型兵器の総称だ。
”個” を持たず、”全体で一つ” というシリコン型生命体。
人類とはあまりにも異質すぎて、意思の疎通すらできない。
”彼ら” は他の生物を同化もしくは消滅を目的に行動する。
人類もまた例外ではない。
物語開始時点で、フェストゥムの到来から40年以上が過ぎ、
人類の生存圏は刻一刻と狭まっている。
■平和への道
しかし、この長く果てしない戦いを終わらせる方法は、
実は物語の序盤である「無印」の中で既に示されている。
「フェストゥムに、(人間の)悲しみを教えること」
それは「とても簡単で、とても難しい方法」でもあった。
しかし物語の中で、フェストゥムが知ってしまうのは ”憎しみ” だった。
だが、”憎しみ” を知ったフェストゥムと人類との壮絶な戦いが続く中、
新たな希望もまた現れてくる。
■対話と理解
なにぶん長大な作品であるし、登場人物も多岐にわたる。
いろいろなテーマを含む作品ではあるが、その中でも
「対話と理解」は本作を貫く重要な柱の一つであると思う。
最終話を見終わって思ったことは、「ファフナー」という作品は
この点については最後までブレなかったということだ。
相手を滅ぼすのではなく、理解する/理解してもらう ことによって
戦いを終わらせる。
「対話と理解」を以て戦いに終止符を打つ、
この物語の最終章となる「THE BEYOND」。
その中心に立つのは、「無印」から主役を務めてきた者たちではない。
彼らの下の世代の者たちだ。
上の世代が築き、残したものを受け継ぎながらも
時には反発し、逆らい、否定する。
先行する世代が持ち得なかった価値観で、
先行する世代が届かなかった、新たな可能性にたどりつく。
長い時間をかけてつくりあげた物語の土台を壊しかねない展開だが
それがラストの、これ以上ないという最高のカタルシスにつながる。
つくづく、この作品を見続けてきてよかった、
そう思わせるエンディングだった。
■最終回の風景
この第10話~最終話は、最終章ということもあるのか
「無印」を想起させるシーンが随所にある。
中でも、物語の掉尾を飾る最終話は、それが顕著だ。
それぞれのキャラクターたちの着地点が描かれるのだが、
長きにわたった物語ゆえに、ファンにとっては
いろいろ思い出すだろうし、感慨深いものがあるだろう。
映画館で私の横に座っていた20代半ばかと思われる女性は
最終回が始まるとすすり泣きを始め、
”あるシーン” になると号泣してしまった。
もちろん私も滂沱の涙(T_T)。
あんなシーンを見せられたら、泣くしかないじゃないか・・・
ラストシーン近くで交わされる、○○と□□の会話は
「無印」第★話の△△と□□の会話を彷彿とさせる。
この物語は、”いなくなった者たち” を忘れることはない。
これもまた、全編を通じて揺るがなかった。
長きに渡って、素晴らしい物語を見せてくれた制作スタッフの皆さん、
ありがとうございました。