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荒神 [読書・ファンタジー]


荒神 (新潮文庫)

荒神 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

「ソロモンの偽証」以来、久々の宮部みゆき。

本書は "怪獣が出てくるスゴい時代小説" だという噂を聞いたので
怪獣好きの私としても放っとけない。
というわけで読んでみた次第。
ちなみにタイトルは「こうじん」と読むそうです。


時は元禄。東北の二つの小藩が舞台となる。

香山(こうやま)藩と永津野藩は、関ヶ原の昔からいがみ合う仲であった。
もともとは永津野藩の家老の一人、瓜生氏が独立したのが香山藩だが
それを認めない永津野藩主・竜崎氏は香山藩の併合を狙っていた。

その永津野藩に曽谷弾正という男が現れる。
彼は藩主・竜崎高持に気に入られ、
藩政改革で成功を収めて、たちまち藩主側近筆頭まで上り詰める。

やがて故郷から妹・朱音(あかね)を呼び寄せたが、
彼女は城下の屋敷住まいを嫌がり、
香山藩との境界近くの集落に居を構えた。

そんなある日、朱音は瀕死の状態の少年・蓑吉を保護する。
意識を取り戻した蓑吉が語ったのは、恐るべき変事だった・・・


この物語における "人間側の主役" は朱音だろう。
人間のドラマも、"怪獣" を巡るストーリーも、
最終的には朱音に集約されていく。


"謎の巨大生物" が現れ、破壊の限りを尽くすのが
メインストーリーとなれば、もうこれは怪獣ものの王道パターン。
それも『ゴジラ』がモチーフとなっている。

主要登場人物の一人である曽谷弾正が、
隻眼で眼帯をつけているところなど
『ゴジラ』に登場した科学者・芹沢博士への
オマージュ以外の何物でもないだろう。

もっとも、その役回りは芹沢とはかなり異なる。
"怪獣" を "葬る" のに大きく関わるのは同じなのだが・・・

その "怪獣" だが、通常の生物ではないことがだんだん分かってくる。
どちらかというと "妖怪" に近い存在かと思う。
終盤でその出自が明らかになるのだが、読者はちょっと驚くだろう。

"怪獣" の出現の背後には凄まじい "人間の業" があり、
そういう意味では『大魔神』にも通じる雰囲気もある。


メインとなる怪獣譚とともに、サイドストーリーも同時並行して語られる。

香山藩側のメインキャラとなるのは、藩主の小姓・小日向直弥。
長い病気療養から復帰した直弥は、
永津野藩との境で起きた "変事" の真相を探るべく現地へ向かう。

その香山藩では、藩主の世継ぎが病に伏すが、
そこには何者かによる陰謀の存在が疑われる。

 このあたりはミステリ的な "絵解き" も最後に示される。
 さすがは宮部みゆきと言うべきか。
 これだけでも短編が一本書けそうなネタが投入されている。

永津野藩では、弾正が壮大な野心を内に秘めて画策を続ける。


複数のストーリーラインに伴い、多彩なキャラが登場する。
朱音を支える浪人・榊田宗栄(さかきだ・そうえい)、
相模藩の絵師にして諸国放浪中の菊地圓秀(きくち・えんしゅう)、
直弥の親友・志野達之助、その父・兵庫之介、
志野家に仕える従者・やじは、何やら事情を秘めた様子。

冒頭に登場人物の一覧表があるのだけど、
けっこう登場シーンが多くて台詞もあるキャラが載ってなかったりする。

特に、物語上重要と思われるキャラが2名ほど載っていない。
これは入れ忘れたのではなく、故意に載せていないのだろう。
(だからここにも書かない。)

どんなキャラが出てくるのかは読んでのお楽しみだ。


"怪獣" の猛威の前に、人間たちはあまりにも無力だ。
そんな人間たちの愛憎のドラマをも呑み込んで、
"怪獣" は人間たちの営みを蹂躙していく。

そして "怪獣" の出自が明らかになったとき、
同時にそれを "葬る" 策もまた、もたらされる。
その方法とは・・・

しかし、このエンディングはなあ・・・
ちょっと××い結末なので、本体なら星4つなんだけど
星半分減点してしまいました。

いや、「素晴らしいラストだ」って思う人の方が多いと思うよ。
それは分かってるんだ。
でも、私の好みとは微妙に異なるんだなぁ。


この小説は、NHKでドラマ化されて
来年1~2月頃にBSで単発ドラマとして放送されるとのこと。
ちなみに放送時間は100分。うーん、ちょっと短いかな。
枝葉のエピソードがばっさりとカットされそう。

NHKのホームページで、現在までに判明している配役は以下の通り。

朱音:内田有紀
曽谷弾正:平岳大
榊田宗栄:平岡祐太
菊地圓秀:柳沢慎吾

この4人に関しては、けっこうイメージはあってるように思う。

特に平岳大さんは、最近ますますお父さんの平幹二朗に似てきて、
(本人は嫌がるかも知れないけど)いい雰囲気。

"人間の業" の化身のような、
野心たっぷりの弾正を見せてくれそうだ。

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