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クラーク巴里探偵録 [読書・ミステリ]


クラーク巴里探偵録 (幻冬舎文庫)

クラーク巴里探偵録 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 三木 笙子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

時は日露戦争が終結して間もない頃、
山中晴彦はヨーロッパを巡業中の曲芸一座に転がり込んだ。
家事一切を引き受けることを条件に
一座の敏腕番頭・片桐孝介と同居をはじめることに。
そんな二人が、パリを舞台に起こる事件を解決するべく
奔走する姿を描く連作ミステリ。
探偵役が孝介で、晴彦はワトソンの役回りだ。

「第1話 幽霊屋敷(メゾンアンテー)」
一座の座長に、贔屓筋から相談を持ち込まれる。
座長に頼まれた晴彦と孝介とは、資産家であるデュボア氏の屋敷へ。
息子ジュリアンの部屋に幽霊が出るという。
バラバラと物を叩きつけるような音がして目覚めると
部屋の中に無数の小石が散らばっていた・・・

「第2話 凱旋門と松と恋」
日本大使館員の本多が住んでいる下宿のマダム・クラリスが
妙な男につきまとわれているという。男の正体に迫るため、
美しき未亡人クラリスの過去について調査を始めた晴彦と孝介は、
彼女の夫を看取った医師が死亡していたことを知る。

「第3話 オペラ座の怪人」
晴彦に「面白いものを見せてやる」といって孝介が案内したのは
アパートの3階にある舞台美術家ガルニエ氏の部屋だった。
そのアパートで10万フランの現金盗難事件が起こる。
しかし入り口には二人がいたため、犯人の逃げ場はなかったはずだが
建物の中に犯人の姿は見当たらない・・・

「第4話 東方の護符」
晴彦がヨーロッパに来て孝介に接近したのには、ある目的があった。
第1話から第3話にかけて少しずつそれが明かされてきて
この最終話で決着を見るのだが、晴彦は基本的に善人なので、
密かに孝介を裏切っていることに良心の呵責を常に感じ続けていた。
約束された報酬と孝介との友情。その間で板挟みになり苦しむ晴彦。
そしてすべての "事情" を知った孝介がとった行動は・・・

ミステリではあるが、メインとなるのは
パリに住む人々の暮らしぶりであったりする。
多彩な登場人物の言動を通して、当時の "花の都" の様子が描かれる。

そしてなにより晴彦と孝介。共に積み重ねた時間と、
事件を解決してきた経験が二人の絆を紡いでいく。
いつ見ても不機嫌そうな孝介だが、内に秘めた優しさと強さが
最終的に晴彦を救うことになる。

ラストシーンで晴彦はパリを去り、日本へ帰ることになるが
後日、再びパリに戻ってくることが示唆されて終わる。
つまり、二人の探偵譚は今後も続くということだ。


そして、続編である『露西亜の時間旅行者 クラーク巴里探偵録2』も
既に刊行されており、実は手元に持っている。
これも近々読む予定。

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