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プリズン・トリック [読書・ミステリ]


プリズン・トリック (講談社文庫)

プリズン・トリック (講談社文庫)

  • 作者: 遠藤 武文
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/01/17
  • メディア: 文庫
評価:★★

第55回江戸川乱歩賞受賞作。

千葉県市原市の交通刑務所内で、受刑者・石原が殺害される。
現場は密室状況で、さらに犯人と目される受刑者・宮崎は
刑務所を脱走していた。

宮崎は家族の住む長野県安曇野市にも姿を見せず、
さらには死体の顔が損壊されていたことから
石原と宮崎が入れ替わっている可能性が浮上する。

やがて、宮崎が収監される原因となった交通事故と
安曇野市の汚職事件とのつながりが明らかになり・・・


私のつけた評価が低いのはいくつか理由がある。

まず、物語の中でスポットが当たる人物が複数いて、
それが頻繁に入れ替わるので、事態の進行が分かりにくい。

 単に私のアタマが悪いだけかも知れないが。

脱走者の捜索に加わる刑務官・野田、
捜査を指揮するキャリア警察官僚・武田、
週刊誌の記者から保険会社の調査員へと転身した滋野、
細かいところでは要所要所で情報をつかんでくる捜査員もいて、
それぞれの視点でストーリーが綴られていく。

しかも、彼らの中に "主役" はいない。
というか全編にわたってそれらしき人物がいない。
強いて言えば主役は "犯人" なのだろうけど、
これも終盤近くにならないと明らかにならない
(もちろん、ミステリだからwww)。

そしてまた、見事なまでに彼らに感情移入が出来ない。
というか感情移入できるような描写がされてない。
むしろ、真相(動機)が明らかになるにつれて
"犯人" の側に感情移入できるようになってしまう。

終盤にはそれなりにサスペンス・シーンもあるのだけど
登場人物への思い入れが乏しいのであまりハラハラしないし。

そして最大の理由は、読後感がよろしくないこと。
詳しく書くとネタバレになるので明かせないけど
いわゆる "イヤミス" なのかとも思う。


私は、長編では特にその傾向があると思うんだが
登場人物に入れ込んで読む質(たち)のようで、
それができにくい作品は評価が低くなる傾向があるようだ。
そして、入れ込んだキャラが報われないとさらに評価が辛くなる。

日本最大のミステリの賞をもらった作品だけあって、
冒頭の密室トリックや人間の入れ替わりとか、
多彩な謎が作中に仕込んであって
ミステリとしての要素は十分に持ちあわせていると思う。

でもまあ、私の好みには合わなかったということで。

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