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さよなら願いごと [読書・ミステリ]


さよなら願いごと (光文社文庫 お 43-8)

さよなら願いごと (光文社文庫 お 43-8)

  • 作者: 大崎梢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/08/09
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆


 丹沢山系に近い山間の街・白沢町(しらさわちょう)。30年前、そこでは少女の殺害事件が起こっていた。
 この町で暮らす3人の少女たちのエピソードが綴られる。彼女たちの物語は意外なつながりを示し、過去の事件の真相へと導いていく。

* * * * * * * * * *

 本書は4つの章からできている。3つの章では、白沢町に暮らす3人の少女たちそれぞれのエピソードが描かれ、最後の章ではそれまでの出来事がひとつながりになり、30年前に起こった少女殺害事件の真相が明らかになっていく。


「願いごとツユクサ」
 夏休みを迎えた小学4年生の琴美(ことみ)は、"佐野くん" がやってくるのを待っている。佐野くんこと佐野隆(さの・たかし)は父の恩人の息子で、雑誌ライターの傍ら、時たま琴美の家の農作業の手伝いにやってくる。
 爽やかで快活な性格で人気者なのだが、琴美の学校で起こった幽霊騒ぎの真相を推理してみせたことから、彼女にとっては "名探偵" だ。
 クラスメイトの光弘の祖母の家から、指輪と手紙がなくなるという事件が起こった。そのとき、家には誰もいなかったはずなのに。琴美は早速、佐野くんに相談するのだが・・・
 小学生を主人公にした日常の謎系ミステリか、と思って読んでいくと、なんとも不穏なシーンで幕切れになってしまう。読者はこの落差に愕然とするだろう。


「おまじないコスモス」
 中学3年生の祥子(しょうこ)は、父が海外へ長期出張しているため、母と二人暮らしだ。祥子は同級生の土屋拓人に想いを寄せていたが、友人の美奈が拓人と逢っていたという話を聞き、心が騒ぐ。
 そんなとき、拓人から「話がある」と呼び出された祥子は意外なことを知る。拓人の父と祥子の母がたびたび逢っているのだという。こっそり父の携帯を盗み見た拓人は、それらしい文面のメールまで見つけていた。母の浮気が信じられない祥子なのだが・・・
 このエピソードもまた、不穏なシーンで終わる。


「占いクレマチス」
 高校2年生の沙也香(さやか)は新聞部の部長。文化祭の発表テーマが「オカルト」と決まり、地元の心霊スポットである廃ホテルの調査を行うことに。
 選挙の結果によって新道の通るルートが変更され、それを宛てにしていたホテルの建設は中断、そのまま廃墟となってしまったのだ。そこにはホテルの施工主の幽霊が出るという噂も。
 ホテルの関係者に逢って話を聞いているうちに、祖母・万智子(まちこ)の名が出てきて驚く沙也香。祖母は占い師を生業にしているのだが・・・


「花をつなぐ」
 この最終章で、先行する3つの章の関係も明らかになっていく。読者はここにくるまでに、いろんな推測/想像を巡らすだろうが、物語は(いい意味で)読者の予想を裏切っていく。
 あれがここにつながるのかとか、あのキャラとこのキャラにはこんな関係があったのかとか、パズルのピースがひとつひとつカチカチとつながって、一枚の絵ができあがっていく "怒濤の伏線回収" が展開されていく様子は、とても心地いいものだ。そして読者は30年前の少女殺害事件の意外な真相、そして真犯人を知ることになる。

 本書の惹句は「大崎梢史上、最高濃度の長編ミステリー」だという。まさのその通り、看板に偽りなしの作品だ。



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