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この恋が壊れるまで夏が終わらない [読書・SF]


この恋が壊れるまで夏が終わらない(新潮文庫nex)

この恋が壊れるまで夏が終わらない(新潮文庫nex)

  • 作者: 杉井光
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/04/26

評価:★★☆


 主人公は高校1年生の柚木啓太(ゆずき・けいた)。彼には "時を遡る" という特殊能力があったが、あまり活用もせずに生きてきた。
 だが高校に入り、恋をする。相手は図書委員の久米沢純香(くめざわ・すみか)。しかし夏休み最後の日、校舎裏で彼女の死体が発見される。
 純香を救うため、啓太は時を遡るのだが・・・

* * * * * * * * * *

 柚木啓太には、"時を遡る" という特殊能力が生まれつき備わっていた。頭の中で念じることで、きっかり12時間前の過去に遡ることができる。
 記憶はそのままなので何が起こるかは分かっている。その気になればテストで満点を取ることもできるし、ギャンブルも賭け放題。
 しかし、副作用として激しい頭痛と体力の消耗を伴うことから、滅多に使うことはなく、今まで生きてきた。

 そんな啓太だったが、高校へ入学早々、恋をしてしまう。相手は3年生の図書委員・久米沢純香。啓太も図書委員となり、放課後で彼女と過ごす時間はたまらない幸福のひとときだった。

 しかし夏休みの最終日、校舎裏で純香の死体が発見される。彼女を救うために啓太は時を遡るのだが・・・


 いわゆる "タイムリープもの"。この手の話では、一度の "巻き戻し" で事態は解決しないことが多い。その例に漏れず、本書でも啓太が12時間過去に戻って "やり直し" をしようとしても、結果的に純香の死を回避できない状況が続き、結果として何度もタイムリープを繰り返すことになる。

 "特殊能力" を繰り返し使うことで、副作用もだんだん激しく。だから遠からず限界が来るんじゃないか、ということも示唆される。
 体力を消耗し尽くして立ち上がることもできなくなるとか、能力が "擦り切れ" て行使できなくなるとか、最悪の場合は死んでしまうんじゃないかとか、読者はいろいろ心配するのだが、それでも啓太は "タイムリープ" を繰り返していく。まあこれも "お約束" だろう。

 啓太が自分の命を削るような思いをして救おうとする純香さん。基本はラブストーリーなのだから、メインヒロインの純香さんには、それだけの魅力がなければならないと思うのだけど・・・私には、彼女のキャラ設定がどうにも感情移入がしにくいものに思えるんだけどねえ。まあそのへんは人によるとは思うんだが。
 そして、それでも純香さん一筋を貫く啓太くんは、たいしたものだと思う。

 啓太が所属する美術部の2年生・道永佐世(みちなが・さよ)さん、啓太とは幼馴染みで同じ高校に通う水泳部の燈子(とうこ)さんなど、魅力的な女性サブキャラ陣もいるのだけれど、啓太くんは脇見はしない(笑)。

 もちろん終盤では純香さんの死の真相も明らかになる。途中からなんとなくそうじゃないかと思わなくもなかったのだけど、わかってみるとちょっと肩透かしな感じが否めない。
 加えて、さらにもう一つの事実が明らかになる。SFとしてはこっちのネタのほうがメインになるのかもしれないけど、これも唐突な気がする。

 どうもいまひとつ楽しめなかった、というのが正直な感想です。いろいろ書いてきましたが、私とは相性がよくない作品のようです。



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