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梟の胎動 / 梟の好敵手 [読書・SF]


梟の胎動 梟の一族 (集英社文庫)

梟の胎動 梟の一族 (集英社文庫)

  • 作者: 福田和代
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2023/12/07
梟の好敵手 梟の一族 (集英社文庫)

梟の好敵手 梟の一族 (集英社文庫)

  • 作者: 福田和代
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2024/01/11

評価:★★★


 忍者の末裔にして、眠らない特殊体質をもつ〈梟〉(ふくろう)の一族。彼らが隠れるように住んでいた山奥の里が壊滅して4年。
 一族の生き残りのひとりで、大学生になっていた榊史奈(さかき・ふみな)の前に現れたのは、並外れた臭覚をもつ〈狗〉(いぬ)の一族だった。
 さらに、〈梟〉の力を借りたいという男が現れるのだが・・・

 『梟の一族』、続編登場。

* * * * * * * * * *

 『-胎動』『-好敵手』は二ヶ月連続刊行され、内容的には前後編になっている。


『梟の胎動』

 太古の時代から存在し、眠らない特殊体質をもつ〈梟〉(ふくろう)の一族。その特性ゆえに忍者の供給源ともなって、その時代の支配者に仕えてきた。
 しかし彼らが隠れるように住んでいた山奥の里が急襲され、壊滅してしまう。それから4年。一族の長の孫だった榊史奈(さかき・ふみな)は東京で大学生となっていた。

 ある夜、史奈は彼女を尾行する男たちに気づく。鍛えた体術を以てしても、なぜか振り切ることができない。彼らが並外れた臭覚をもっていることに気づいた史奈は、それを逆手にとって逃げ延びる。

 その翌日、史奈は〈梟〉の力を借りたいという男・出水敏郎(いずみ・としろう)と逢うことに。彼の話では、エマリスタンという国が、国家を挙げて遺伝子改変による身体能力の強化、つまり "遺伝子ドーピング" を行っているらしい。
 それに関わっていた日本人研究者・十條(じゅうじょう)が、帰国後に消息不明になっているという。彼を探し出すことが出水の依頼だった。

 そして、史奈をつけ回していた男が再び接触してきた。彼は森山疾風(もりやま・はやて)と名乗り、自分たちもまた古代から続く〈狗〉(いぬ)の一族なのだという。

 彼によると、近々新しいスポーツ団体が旗揚げされる。「ハイパー・ウラマ」というその新競技は、バスケットボールと陸上のトラック競技と格闘技を融合させたような競技で、特筆すべきは、あらゆる人体強化の手段が許されるということ。ドーピング、遺伝子編集など、違法でない限り何をしても自由だ。そして〈狗〉の一族もその競技に参加するという。

 やがて正式発表された「ハイパー・ウラマ」は、かつてドーピングで選手生命を絶たれた "超有名アスリートたち" が大挙して参戦することが判明、一気に世間の注目を集めることに。

 史奈の従兄弟で、〈梟〉の一族でもある長栖諒一(ながす・りょういち)は、その体力を活かしてスポーツ用品メーカーのアテナと専属プロ契約を結んでいたが、彼もまた「ハイパー・ウラマ」への参戦を表明する。
 ただし、一切のドーピング行為無しの状態で、正々堂々と勝負し、そして優勝してみせる、と宣言する。

 しかし「ハイパー・ウラマ」は3人チームによる集団戦というルールを提示してきた。競技団体の裏側に遺伝子ドーピングや〈梟〉の一族を滅ぼそうという陰謀を感じ取った史奈は、諒一の妹・容子とともに彼のチームのメンバーとしてハイパー・ウラマへの参戦することになる。


『梟の好敵手』

 第一回ハイパー・ウラマ世界大会予選が開かれる。
 史奈の〈梟〉チームの他には、〈狗〉のチーム、ステロイドでガチガチに筋肉をつけたマッチョなチーム、かつてドーピングで失格となった選手のチームなど、"個性豊か" な総計13組が参加し、いよいよ一回戦が始まる・・・

 大会予選では、チームごとの戦いの模様を通じて、このゲームの異様さもまた描かれていく。史奈たち〈梟〉のチームと森山たち〈狗〉のチームの試合ももちろんある。
 ストーリーはこの大会予選の行方を追いつつ、出水敏郎の野望も明らかにしていく。しかし〈狗〉の一族の実態や決着のついていない要素も残され、そのために史奈が東京を離れて旅に出ることを決意するところで幕となる。

 この2巻で「第二部・完結」とはなるが、いつか書かれるであろう「第三部」に乞うご期待、というところ。



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