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スノーバウンド@札幌連続殺人 [読書・ミステリ]


スノーバウンド@札幌連続殺人 (光文社文庫 ひ 21-3)

スノーバウンド@札幌連続殺人 (光文社文庫 ひ 21-3)

  • 作者: 平石貴樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/02/14
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 札幌の街中で誘拐された女子高生・久美子。しかし誘拐犯の少年が殺され、さらに久美子の父親まで殺されてしまう。
 旅行で札幌に滞在中の弁護士・山崎千鶴は当事者4人に事件を手記という形でまとめさせ、真相に迫っていくが・・・

* * * * * * * * * *

 16歳の女子高生・島村久美子は、札幌の街中でナンパされる。相手は藤田浩平・17歳。しかし彼の目的は誘拐だった。浩平のアパートに連れ込まれた久美子は手足を拘束されてしまう。

 そして誘拐された翌日の夜、浩平は久美子をクローゼットに閉じ込めた後、アパートにやってきた人物と口論を始めた。その激しさに近所の人が警察に通報し、駆けつけてきた警官によって久美子は救出されるが、彼女が見たのは浩平の撲殺死体だった。
 そして間を置かず、こんどは久美子の父・義夫が殺されてしまう。


 本書の中心人物は、札幌在住の弁護士・岡本里緒(りお)。浩平の父・洋二郎から久美子へ慰謝料を払いたいという依頼を受け、友人の弁護士を紹介した。それが山崎千鶴だ。

 千鶴は慰謝料のみならず、殺人事件自体にも興味を示し、当事者4人に事件の経緯をノートにまとめさせる。本書は、この4人の手記を交互に引用する形で進行していく。
 4人の当事者とは、"主催者" の岡本里緒、被害者の久美子、浩平の友人である畑中久志と矢部公和だ。

 前作『サロメの夢は血の夢』では、登場人物がみなそのシーンの語り手を務めるという "離れ技" というか "荒技" を駆使して読者を煙に巻いた(笑)のだが、さすがに読んでいると視点が頻繁に飛びすぎて落ち着かない感があった。
 本作はそれが4人にまで減ったので読みやすくはなったが、書いてある内容が全部真実とは限らないのは前作と同じ。だからその辺は眉に唾をつけて読まなければならない。

 弁護士としての里緒は、宮の森東中学校の暴力教師・田丸耕治に対する訴訟という案件を抱えているのだが、浩平・久志・公和の3人は宮の森東中学の同級生で、田丸から暴力行為を受けていたという共通点があった。
 しかも田丸の背後には札幌市の教育委員会、さらには新興宗教の存在も見え隠れするなど背景の複雑さを伺わせる。

 犯罪に異様にのめり込むなど、千鶴のエキセントリックな性格は相変わらずだが、本書の結末というか ”決着のつけ方” は通常のミステリとはいささか異なる。しかしこれも探偵役が千鶴さんだからこそ。読者も、彼女の "決断" に異を唱える人は少ないのではないかな。

 そして本書のラスト2ページでは一気に時間が跳んで、"当事者" たちのその後が語られている。さらにそこでは千鶴さん自身も意外すぎる "転機" を迎えていて、これにはみな驚くだろう。
 ひょっとしたら、本書が山崎千鶴シリーズ(本書を含めて3冊しかないけど)の最終巻になるのかも知れない。



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