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巫女島の殺人 呪殺島秘録 [読書・ミステリ]


巫女島の殺人 (新潮文庫)

巫女島の殺人 (新潮文庫)

  • 作者: 萩原 麻里
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/12/23
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆


 かつて呪術を執り行っていた一族が封じられた島・呪殺島(じゅさつとう)。そのひとつ、千駒島(ちこまじま)から届いた手紙は、島の秘儀を司る巫女の解放を求めるものだった。
 幼馴染みの三嶋古陶里(みしま・ことり)や大学の准教授たちとともに "僕" は島にやってくるが・・・


 広島県の沖合の瀬戸内海に浮かぶ千駒島は、かつて呪術を行っていた一族が封じられたという "呪殺島" のひとつだ。
 その島から、"僕" の通う大学の研究室に手紙が届く。島では未だに巫女を崇め、死者の魂を呼ぶ秘儀が行われている。多くの死人が出ており、差出人の幼馴染みも殺されたという。巫女を解放し、島を呪いから解き放ってほしい、と。

 幼馴染みの三嶋古陶里(みしま・ことり)、民俗学の世志月伊読(よしづき・いよみ)准教授、助手の和沢瑚太朗(かずさわ・こたろう)とともに、"僕" は千駒島にやってくる。

 島の領主は、巫女の一族でもある千駒(せんこま)家。島の管理全般を取り仕切る山長(やまおさ)家をはじめとする島の旧家は、巫女一族に代々仕えてきた。

 過疎化と高齢化がすすむ島なのだが、本書のメインキャラとなるのは意外に若者が多い。みな島の秘儀に於いてそれぞれ重要な役を受け持つ旧家の子女だ。
 山長飛露喜(やまおさ・ひろき)は山長家の息子、チャラ男の能鷹冬樹(のうたか・ふゆき)、お洒落な稲波綾花(いななみ・あやか)、優等生タイプの篠峯竹葉(しのみね・たけは)。みな高校3年生だ。そして当代の巫女は千駒美寿々(せんこま・みずず)といい、彼らとは同い年だが高校には行かず、千駒神社で暮らしている。

 島を案内される "僕" たち一行。頻繁に耳にするのは "今年は特別な年" で、"本来の役目を果たす祀り" が執り行われるという言葉。しかしその実体は不明のまま。

 そんな中、飛露喜と竹葉が姿を消す。そして千駒神社の奥の斎宮にある滝壺の中に、人が沈んでいるのが発見される。しかし遠目では男女の判別すらできない。
 しかし、そこは巫女が身を清める "聖域" であるとして、頑として立ち入りが認められない。そしてさらなる殺人が続いていく・・・


 いくら呪殺の島と云っても現代の話であるから、上に書いたように島の若者たちは総じて "今風" である。古来からの秘儀とか風習とかに囚われている島の現状に対して、疑問や閉塞感を抱いたり、さらには自由を求めようとする動きもある。
 若者vs年長者という世代間対立の要素もあり、それが今回の事件の背景の一部になっている。この手の伝奇ミステリでは、こういうところはあまり描かれてこなかったとも思うので、目新しいなと思った。

 作中では「秋津真白」と呼ばれている "僕" は、前作から引き続いて相変わらずの鈍くさい行動で(笑)、ヘマばかりしでかすのだが、それがストーリーを動かしていくという貴重なキャラ。ワトソン役として申し分ない働きだろう。

 巫女の正体についてのカラクリは古典的だが、こういうシチュエーションなら現代が舞台でも、さほど無理を感じさせない。閉鎖的な "呪殺の島" というのはいいアイデアだと思う。

 古陶里の推理は、事件の真相のみならず、島を挙げての企みまでも暴き出す。ネットなどで情報拡散が容易い時代に「外部に悟られずに、そこまでできるか?」とも思ったが、実在するカルト宗教だって、内部ではけっこうえげつないことが行われていて、しかも意外と知られていなかったりするするから、そんなに驚くことではないのかも知れない。



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