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『ゴジラ ー1.0』 ネタバレあり感想 中編 [映画]

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 公開して四週間近く経ちました。表記にあるとおり、『ゴジラ ー1.0』のネタバレあり感想・中編を始めます(「後編」のはずだったんだけど、思ったより長文になったので二分割しました)。
 未見の方はぜひ劇場でご鑑賞の上で再度お越し下さい。
 映像・音響共に、まさに映画館の優れた設備で ”体験” するための作品で、一見に値する映画だと思います。

 ちなみに私は DolbyCinema と IMAX で観ました。映像のクリアさでは前者が、音響の迫力では後者が勝るような気がします。人によって好みはあるでしょうけど、私は IMAX のほうが本作に向いてるような気がしてます。

 「ネタバレなし感想」は11/12にアップしております。


■「海神作戦」

 政府も米軍も当てにならない中、民間主導によるゴジラ殲滅のための「海神(わだつみ)作戦」が、野田によって立案される。

 ゴジラを1500mの深海に沈め、その水圧で息の根を止める。ダメなら次に海上まで一気に引き上げて、圧力差によってゴジラに止めを刺す。
 確かに、深海魚を一気に引き上げると水圧差によって目玉や内臓が内側からはじけ出して死んでしまうが、果たしてそれがゴジラに通用するのか?
 作中でも成功が疑問視され、「穴だらけの作戦」と言われてしまうが、他に方法はない。「できることをやるしかないんです」

 どう考えても分が悪すぎる戦い。集まった者たちのうち、参加を拒否して去っていく者もいる。だが、残る者もいる。

 「誰かが貧乏くじを引かなければならない」

 映画の前半での秋津の台詞だ。だが貧乏くじの引き方は二つある。たまたま引いてしまった場合と、わかっていてもあえてそれを引く場合だ。この場に残った者たちは、もちろん後者だろう。

 もちろん、誰だって貧乏くじなど引きたくはない。だけど人生の中で、ある程度の仕事を任されて働いているなら、あえて貧乏くじを引かなければならなかったときが、誰でも一度や二度はあったのではないか?
 自ら「火中の栗を拾う」決断をしたことはなかったか?
 誰かが貧乏くじを引いてきたからこそ、人の世は廻ってきたのではないか?

 もちろん、ゴジラと戦うなんていう、命の保証もないようなとんでもない選択はなかったかも知れないが、「貧乏くじと分かっていても、あえてそれを引く」彼らの覚悟に、自分の今までの人生を重ね合わせた人もいるのではないか?
 だからこそ、彼らの決断は、私の胸を震わせた。


■野田と堀田

 野田は全編を通じて常識的な人間として描かれるのだけど、この作戦説明の際、スライドの光を受けていた中で見せる ”目つき” は、ちょっと ”イッてる” 感じで(笑)、マッド・サイエンティストっぽさを感じさせる。個人的には本作に於ける吉岡さんのベストショットだと思う。

 そして「ネタバレなし感想」でも書いたけど、駆逐艦「雪風」元艦長・堀田辰雄[田中美央]の存在感が抜群。彼が登場すると画面が一気に締まる。こんな素晴らしい俳優さんがいたんだ、って発見の驚きがあった。

 私の場合、東宝特撮映画で ”指揮官役” と云えば、真っ先に思い浮かぶのが田崎潤さん。『妖星ゴラス』(1962)での土星探査宇宙船・隼号の園田艇長役や『海底軍艦』(1963)の轟天号艦長・神宮司大佐役で有名な方。

 田中美央さんも、私の中では田崎さんに匹敵する存在となりました。


■「海神作戦」へのツッコミ

 ここは、あえて「重箱の隅をつつく」ようなことを書くので、退屈な人は次の章(■)まで飛ばしてください(笑)。
 この手の映画で、細かい矛盾点をあげつらうのは野暮なことだと百も承知なのだけど、気がついてしまったんで書いてみる(おいおい)。

(1)第一段階
 ゴジラの周りを泡で包んで沈めてしまう作戦なのだけど、1500mの深海まで沈めるのはけっこう大変そうだ。水深1500mでの圧力は150気圧。このとき、気体の体積は海上時の1/150になってしまう(高校化学で勉強する「ボイルの法則」だ)ので、水深1500mで海上時と同じ大きさの泡でゴジラを包もうと思ったら、海上時の150倍の量の気体が必要になる。総量としては、けっこう膨大な量の気体を用意しなければならないだろう。
 用いる気体がフロンガスというのも気になる。フロンの商用生産は1930年頃に始まってるけど、昭和22年(1947年)の時期に、日本国内で大量に用意できたかというとかなり厳しいように思う。

(2)第二段階(予備作戦)
 1500mの深海に沈んだゴジラを炭酸ガス(二酸化炭素)を用いた気嚢(風船)で一気に海上まで引き上げる作戦。
 だが、二酸化炭素には大きな難点がある。深海1500mでの150気圧の状態では、二酸化炭素は気体にならずに液体になってしまう。つまり、そもそもの前提として気嚢を膨らませることはできないわけだ。


■なぜフロンガスと二酸化炭素なのか

 上に書いたように、海神作戦に用いる気体、フロンガスと二酸化炭素には問題点がある。一番簡単な解決法は、たぶん安価で大量に手に入りやすく、高圧でも気体のままである「窒素」を用いることだろう。

 ではなぜ窒素ではなく、フロンガスと二酸化炭素を用いたのか。私は、製作陣はあえてこの二つの気体を選んだのではないかと思っている。

 フロンガスは、大気圏上層のオゾン層を破壊し、地上へ降り注ぐ紫外線を増やすとして問題となり、現在は製造も使用も禁止されている気体だ。
 そして二酸化炭素は、これも地球温暖化の原因となっている気体で、世界的に排出規制が進んでいる。

 つまり、地球環境を破壊する気体の代表格であるこの二つを使ってゴジラを倒す、という、いわば ”毒を以て毒を制す” という展開をしたかったのではないかなぁ、って考えている。考えすぎかもしれないけど(笑)。


■「震電」復活!

 典子を喪い、ゴジラへの復讐に燃える敷島もまた「海神作戦」に参加、戦闘機によるゴジラ誘導を申し出る。

 それに応えて野田が見つけ出してきたのが、なんと「震電」(しんでん)!

 このシーン、思わず「うおぉぉ」って叫びそうになってしまった(叫ばなかったけど)。この映画のための架空の戦闘機と思った人もいたかも知れないが、これは実在した機体だ。

 「震電」は太平洋戦争末期に局地戦闘機(主にB29爆撃機の迎撃を目的とする戦闘機)として開発されながら、終戦によって日の目を見ることなく終わった機体。計画最大速度は750km/hと、完成していたらレシプロ機(プロペラ駆動機)としては当時最速の戦闘機となったはず。その独特なフォルムもあいまって知名度も人気も高い。なんと将来的にはジェットエンジンに換装した「震電改」の構想まであったとか。

 私と同じくらいの世代の方なら、第二次大戦の戦闘機のプラモデル作りに凝った人も多かろう。私も中学3年生のとき(もう半世紀も前だが)、高校受験そっちのけでプラモデルにハマっていて、もちろん「震電」も作ったことがある。おかげで担任からは怒られたが(おいおい)。

 そんな ”幻の試作戦闘機” が、対ゴジラ作戦の要として甦り、大空を舞う日が来ようとは、何と胸が熱くなる展開だろう・・・もうこのあたりから涙腺が決壊を始めてしまったよ。


■橘、再登場

 終戦から2年も放置されていた「震電」を甦らせるため、敷島は因縁の相手である橘を探し出す。橘は敷島の ”真の目的” を知り、協力することに。

 機体を飛行可能な状態に復元するだけではなく、30mm機銃4門を2門に減らし、燃料タンクの容量の半分に。これにより合計で620kg軽量化し、空いたスペースに合計750kgもの爆弾(これは設計時の最大爆装重量の2倍を超える)を仕込む。でも差し引きで重量増加は130kgで済むので、機体の運動性能にも大きな影響は無いのではないか。

 NHKの番組「魔改造の夜」どころではない突貫工事をわずかな時間(作中時間では長くても一週間くらいかと思われる)で完成させるなんて、橘くん(+2人の仲間)はマジ天才整備士だね(笑)。


■決戦前夜

 ゴジラ再出現の報せに、海神隊の出航時刻も決まる。

「皆さんは可能な限り、今夜は自宅に戻って、家族と過ごしてください」
「覚悟しろってことですよね?」

しかし野田は首を振る。

「思えば、この国は命を粗末にしすぎてきました」
「今作戦では、一人の犠牲者も出さないことを誇りとしたい」
「今度の戦いは死ぬための戦いじゃない。未来を生きるための戦いなんです」

 野田の台詞が胸にしみる。間違いなく、本映画のドラマ上のクライマックスのひとつだろう。そして吉岡秀隆さんがこれ以上はないハマり役ぶりをみせる。


■震電、出撃

 作戦決行の日、いよいよ「震電」は出撃のときを迎える。
 爆弾を抱えて重くなってるはずの機体も難なく離陸させ、わずかな慣熟飛行(作中では1~2分?)で、初乗りの機体にも関わらず、しっかり馴染んで操縦もバッチリ。敷島くんの本領発揮だ(笑)。

 まあ、機体修復~改造~離陸~飛行までをリアルにやってたら尺がいくらあっても足りないので、ここはこれで正解だ。

 もっと言ってしまえば、「震電」は迎撃目的の機体なので、もともと航続距離が短い。爆装による重量増加に加えて燃料を半分にしてしまったので、作戦の最後まで飛んでいられるのか心配になってしまったが、そんな細かいところに文句をつけるのは野暮というものだろう。それに、そもそも敷島は帰路の燃料なんか心配していなかったはずだし。

 しかも、コクピットに典子の ”遺影” まで飾ってしまう。おいおい、それって最大級の死亡フラグだぜ・・・


■電報

 敷島の家に電報が届く。受け取ったのは明子の世話をしていた澄子さん。その文面を見て驚愕の表彰を浮かべる。

 このとき、典子の生存を確信した人は多かろう。私も、心の中でガッツポーズをしていたよ(笑)。

 しかし澄子さんの表情は冴えない。彼女は、敷島が生きて帰ってこないつもりであることを察していたのだから・・・


 今回はここまで。「後編」は明後日(12/2)にアップする予定。


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