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みやこさわぎ お蔦さんの神楽坂日記 [読書・ミステリ]


みやこさわぎ お蔦さんの神楽坂日記 (創元推理文庫)

みやこさわぎ お蔦さんの神楽坂日記 (創元推理文庫)

  • 作者: 西條 奈加
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/07/11

評価:★★☆


 高校生・滝本望(たきもと・のぞむ)の両親は、仕事のために札幌に長期滞在中。その間、望は元芸者で神楽坂に住む祖母・お蔦さんのもとで暮らすことに。
 神楽坂の街で起こる事件やもめ事を解決していくお蔦さんの活躍を描く、シリーズ第3作。


「四月のサンタクロース」
 神楽坂のイタリアン・レストラン『コルディ・アリタ』を営む夫婦が離婚しそうだという。原因は、夫の在田輝幸が妻の麻美に対し、一人娘の真心(こころ)は自分の子ではないのではないかと言い出したことだ。
 お蔦さんのもとに居候している奉介おじさん(望の大叔父で離婚経験者)がいい仕事(笑)をする一編。


「みやこさわぎ」
 お蔦さんが稽古をつけている若手芸妓・都(みやこ)姉さんが寿退職することになった。相手は多数の飲食店を経営する実業家・髙橋。"みやこ" にちなんで385万円の婚約指輪を贈られたが、その直後、都姉さんは失踪してしまう。しかし高橋は、事を荒立てるつもりはないという・・・


「三つ子花火」
 神楽坂のマンションに住む舟木学・美穂子の夫婦には2歳の三つ子がいる。美穂子が法事に出かけた間に三つ子を預かった望はてんてこ舞いをする。しかし、美穂子は本当は家出をしているらしい。仕事にかまけて家のことを妻に任せていた学に説教をするお蔦さんだったが・・・
 こういう夫は世の中にごまんといるだろう。男の側、社会の側の意識が変わらない限り、少子化は止まらんだろうなぁ。


「アリのままで」
 望の通う桜寺学園は中高一貫校。望は中等部からそのまま高等部へ進級したが、クラスメイトの笹井真棹(まさお)は、東大進学率トップの女子中高一貫校から、わざわざ受験して桜寺の高等部へ入学してきた生徒だった。どうやら、桜寺でやりたいことがあったかららしいのだが・・・
 しかし桜寺学園の理事長とは半世紀にわたる呑み友達なんて、お蔦さんどこまで顔が広いのか。


「百合の真贋」
 昔、神楽坂に住んでいた岩井兄妹(兄、妹二人)が相続争いをしている。原因は、亡くなった母が残した、新藤省燕(しょうえん)画伯が描いた白百合の日本画。時価500万円とも云われている。新藤画伯に問い合わせをしたところ・・・


「鬼怒川便り」
 お蔦さんのもとへ、宅配便で鮮魚が届く。中身は鬼怒川産の鮎だった。望は、生前の祖父が "鬼怒川の鮎" と聞いて怒りだしたことを思い出した。祖父の知人だった川端六郎(むつお)が半年前に亡くなり、その孫が宅配便の差出人だった。望はお蔦さんに川端のことを聞くが、「忘れちまった」と云うばかり・・・


「ポワリン騒動」
 望の友人・森彰彦の兄・行也(ゆきや)が夏休みにアルバイトを始めた。時給はいいが、かなりの体力仕事だった。そして行也は、つき合っている彼女に20万円も貢いでいるらしいと云うのだ・・・
 第一巻収録の「シナガワ戦争」の後日談的な話。お蔦さんがあまり絡まない話のせいか、けっこう現代的なオチ(笑)。


 本書に登場するのは、タイトルにもあるように、事件と云うよりは "騒ぎ"。お蔦さんも探偵役と云うよりは、その "騒ぎ" を遠くから見ていて、頃合いを見計らって事態を丸く収めるべく介入してくる、調停役といった方が近いだろう。話によってはミステリですらなく、人情噺や滑稽噺だったりする。

 ミステリ風味は濃くないけれど、それを補うのが望が毎回つくる料理だ。お蔦さんが一切厨房に入らないので、食事の支度はすべて望の仕事。もうけっこう長いことやってるので腕も上達してきて、読んでいると腹の虫が鳴きそうになる(笑)。このままどこかの料理屋に勤めてもやっていけそうである。

 不満を言えば、望くんが淡い思いを寄せている楓ちゃん(奉介おじさんの娘で望と同い年の女の子)の出番が少ないことか。「アリの-」では彼女の意外な趣味(?)が明らかになるが、もうちょっと本筋に絡んだ話が読みたいな。でもまあ、そのあたりは続編のどこかでがっつり描くのでしょう。



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