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ホームレス・ホームズの優雅な0円推理 [読書・ミステリ]


ホームレス・ホームズの優雅な0円推理 (富士見L文庫)

ホームレス・ホームズの優雅な0円推理 (富士見L文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14

評価:★★☆


 医学部の入試に落ちた岩藤(いわとう)すず。納得できない彼女は大学に忍び込み、答案用紙を確認しようとするが、そこで見つけたのは大学の副学長の死体だった・・・
 彼女の前に現れたのは、ホームレスなのだが鋭い推理力を持つ男。彼女は彼を "ホームズ" と呼び、事件の真相を探り始める。


 主人公は、名探偵の相棒である「ワトスン」として生きることを目標にしている岩藤すず。その手始めに、原典通り医師になるために蔦野(つたの)医科大学を受験する。しかし結果は不合格。模試では常にA判定だったし、自己採点でも充分合格圏内に入っていたはずなのに・・・

 納得できないすずは大学に向かい、学生から答案の保管場所を聞き出す。どうやら校舎8階の〈ルームD〉にあるらしい。
 ここまで書いてきて思ったが、なんともセキュリティがルーズな大学だ。答案の保管場所も公然の秘密だったりする。もっとも、過去に28人もの侵入者がいたらしいが、みな警察のお世話になったらしいので大学も放置しているらしいのだが・・・

 すずもまた〈ルームD〉に忍び込むことに成功するが、彼女が見たのは床に散らばった答案用紙の束、そこには赤い血のシミがこびりついていた。しかもそのシミは、イヌ科の動物の足跡らしい。でも、それにしては巨大すぎる。
 そして、窓から見下ろす地面には副学長の死体が。状況から見て、ここから転落したと思われるが・・・?

 現場から逃げ出したすずだったが、翌日改めて大学へやってくる。そこで謎のホームレス男に出くわすことに。
 理知的な彼の佇まいに、すずは思わず尋ねてしまう。
「ねえ君、シャーロック・ホームズでしょ?」


 タイトルにもなっている "ホームズ氏"。ホームレスなのだが全くホームレスらしくない。
 公園の段ボールに住処があるのだが、実は "秘密のアジト" を持っていて、そこではけっこう優雅な生活を送っていたりと、いろいろ "訳あり" な様子だ。

 そしてそれはすずさんのほうも同様で、物語のけっこう早い段階で、彼女は片目が義眼であることが示される。なぜそうなったかは語られないが、彼女もまた過去に何かがあったらしいことをうかがわせる。


 巨大な犬の足跡など、明らかに『バスカヴィル家の犬』がモチーフの殺人事件の解明がメインのストーリーラインだが、それが解決した後に、2人が過去に意外な関わりがあったことが明らかになってエンディングとなる。

 ライトノベルのレーベルからの発刊なので、すずさんメインのパートはライトでコミカルな雰囲気をまとっているものの、最後に明らかになる真実、そして "ホームズ氏" の正体はかなり重いものだ。



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