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赤銅の魔女 / 白銀の巫女 / 青炎の剣士 紐結びの魔道師 [読書・ファンタジー]


赤銅の魔女 紐結びの魔道師1 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ (創元推理文庫)

赤銅の魔女 紐結びの魔道師1 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 乾石 智子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/03/11
白銀の巫女 紐結びの魔道師2 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ (創元推理文庫)

白銀の巫女 紐結びの魔道師2 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 乾石 智子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/06/14
青炎の剣士 紐結びの魔道師3 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ (創元推理文庫)

青炎の剣士 紐結びの魔道師3 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 乾石 智子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
評価:★★★★

 作者の代表作である〈オーリエラントの魔道士〉シリーズ。
 テイクオク(紐結び)魔法を操る魔道師・リクエンシスを主人公にした長編三部作。とはいっても、ストーリーは連続しているので、実質はひとつながりの大長編(文庫で総計して約840ページ)になってる。

 リクエンシス(エンス)のことは他の作品集でも語られているけど、本書では彼の若き日(20代後半くらいかと思われる)の冒険が描かれる。


 舞台は異世界・コンスル帝国。建国から1500年近く経ち、国威の凋落が著しい。それにつけこんだのか、東方の隣国・イスリル帝国が侵攻してきた。

 主人公エンスは、相棒で祐筆のグラーコ(リコ)、剣闘士のマーセンサス(マース)とともにコンスル帝国東部のローランディアに暮らしていた。

 ちなみにリコの ”祐筆” というのは、エンスの紐魔法を書き留め記録する役目のこと。なにせ紐魔法というのは、紐の色や長さや結び方や結ぶ順番とか細かいきまりごとがたくさんあって、とても覚えきれない。それをリコが記録していて、紐魔法を発動させるときにはエンスに必要な情報を教えるという役割分担。

 エンスたちが住むローランディアにもイスリルの先発隊がやってきた。そこで住んでいた館を放棄して西方へ脱出する3人だったが、イスリルの魔道士が館の裏手の墓地に眠る ”邪悪な魂” を呼び出してしまう。そしてそれは、エンスのことを執拗に追跡し始めるのだった・・・

 一方、オルン村に暮らす〈星読みの魔女〉トゥーラは、自ら見いだした予言に従い、村の若者たちを使嗾して〈覇者の剣〉なるものを手に入れるべく動き出したが、彼女の目論見は意外な方向へ転がっていく・・・

 そして、拝月教のカダー寺院では、エミラーダ軌師(きし:”弟子を導く師” くらいの意味と思われる)が、水盆に映る月の姿から未来を幻視する。それは世界の破滅を示すかのような凄惨な光景。しかしそれを防ぐ道も示される。
 エミラーダは ”ローランディアからやってくる魔道士” を探すべく、寺院を出奔する・・・


 ここまでがほんの序盤。大長編だけあって、ストーリーも重層的。

 エンスをつけ狙う ”邪悪な魂” の正体、それを解き放ったイスリルの魔道士の目的、そして何が世界の破滅をもたらすのか、〈覇者の剣〉の役割とは・・・

 さらに、遙かな過去の因縁も絡んでくる。オルン村のある地には、1500年前には女王が統べる ”オルン魔国” があり、当時の魔女がかけた ”呪い” は今もなお解けておらず、人々に影響を与えているらしい。


 キャラクターたちも多彩だ。

 主役のエンスは、魔道師という言葉のイメージに縛られないユニークさ。何事にも楽観的でおおらか、情にも厚い。それでいて剣をとっても一流の腕前。とぼけた言動を繰り返すのも親近感を抱かせるし、ついでに女に惚れやすい(笑)。

 リコは高齢だが物知り。だがいささかわがままな爺さん(笑)。

 マースは剣闘士だけあって、剣の腕も一流だが、軍師的な知恵も回り、頼りになる相棒だ。

 ヒロインとなるトゥーラは20歳。エンスとは物騒なシチュエーションでの出会いを果たすのだけど、エンスは彼女に一目惚れしてしまう。
 でまたエンスのことだから、やたら「いい女だ」って口走っては周囲をあきれさせる(笑)。
 トゥーラのほうも、序盤では野生の猛獣みたいにやたらと突っかかってきては刃物を振り回すという凶暴な(笑)お姉さんだっんだけど、エンスのことを知るにつれてだんだん惹かれていってしまい・・・というお約束の展開。
 とはいってもストーリーを彩るだけでなく、彼女自身にもある秘密が隠されており、物語上も重要なキャラになってる。

 元修道女のエミラーダは40代かと思うのだけど、枯れた感じは全くなく、実に生き生きとした女性として描かれている。知性と教養と、女性としての魅力が高レベルでバランスがとれていて、実にいい案配になってる感じである。

 そして、この物語においてエンスたちの最大の ”敵” として登場するのが、元コンスル帝国軍人のライディネス。帝国の凋落に乗じて、自らの国を打ち立てようという野心に燃えている。とはいっても ”いかにもな悪役” ではなく、彼なりの理想と目的を持った、芯のある人物としてしっかり描かれる。

 他にもオルン村の少年ユース、女魔道師エイリャ、その弟子の青年サンジペルスなども重要な役周りで登場する。
 そして、〈思索の蜥蜴(とかげ)〉ダンダン。人語を話す小さな蜥蜴として登場し、エンスと行動を共にしていくのだけど、”彼” もまた終盤で大活躍をする。


 多彩な登場人物が織りなす波瀾万丈のファンタジー冒険譚。
 とても楽しませていただきました。



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