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白魔の塔 [読書・ミステリ]


白魔の塔 物理波矢多シリーズ (文春文庫)

白魔の塔 物理波矢多シリーズ (文春文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/10/06
  • メディア: Kindle版
評価:★★★☆

 終戦直後の日本各地を放浪し、復興に尽力しようとさまざまな世界に飛び込んでいく青年・物理波矢多(もとろい・はやた)を探偵役とするシリーズ、第2作。

 第1作での炭鉱を離れた波矢多は、海上保安庁の養成学校へ入学、卒業後に航路標識看守、つまり灯台守となった。
  波矢多の赴任先は、東北地方の轟ヶ埼(ごうがさき)灯台。そこで彼が経験する怪異を描いていく。そこには、地元の人間が ”白もんこ” と呼ぶ、白い人影のように見える謎の存在(怪物?妖怪?)が跋扈していた。

 物語は大きく三部構成になっている。


「第一部 守塔精神」

 轟ヶ埼灯台は、険しい山と深い森に覆われた半島の突端にあった。
 波矢多を乗せた漁船は海からの上陸を図るも、波が高い(と漁師は主張するのだが)ために断念、一番近い漁村である網引(あびき)港へ降り立つ。

 港から灯台までは、山と森の中の道なき道を辿って丸1日かかるらしい。波矢多は案内人を頼み、灯台まで徒歩で向かうことになるのだが・・・
 ここから波矢多が灯台に辿り着くまでが、文庫でおよそ100ページにわたって綴られる。

 波矢多は途中で案内人とはぐれてしまい、さらには彼の跡を追っていると思われる ”不気味なもの” の気配を感じ、逃げ惑ううちに日が暮れてしまう。
 野宿を覚悟した波矢多だったが、山中に一軒家を発見する。そこは地元の人間からは ”白屋” と呼ばれ、忌み嫌われている場所だった。

 住人は白穂(はくほ)という若い娘とその祖母・白雲(しらくも)。しかしその家は異様で妖しげな雰囲気に満ちていて、波矢多は恐怖の一夜を過ごすことに。
 このあたりは典型的な怪談の雰囲気が横溢している。

 そして翌日、白屋を発った波矢多は、ようやく轟ヶ埼灯台に辿り着く・・・


「第二部 日暮途窮」

 轟ヶ埼灯台の灯台長・入佐加(いさか)は、波矢多に対して、20年前に自身が経験したことを語り出す。

 20年前、若き入佐加は轟ヶ埼の灯台員として赴任した。波矢多と同じように網引の港から陸路で灯台を目指すが、彼もまた道に迷い、白屋へ辿り着く。

 そこで暮らしていたのは二人の女性。一人は白雲、もう一人はその娘・白露(はくろ)と名乗った。
 入佐加は特に怪異に出くわすこともなく、翌日無事に灯台に辿り着く。

 しかし勤務を続けるうちに、灯台の内外に「白い人影」の存在を感じるようになる。それは次第に彼の精神を消耗させていく。
 そんなとき、灯台に一番近い集落・白子(しろご)村で神楽祭りが開かれる。それに参加した入佐加は神社の宮司夫妻の娘・道子と知り合う。

 相思相愛の仲となった2人だが、彼女と結婚するには神社への婿入りが条件だった。灯台員を続けたい入佐加は、駆け落ちのように道子を連れて轟ヶ埼を離れ、北海道の灯台へと赴任していくのだが・・・


「第三部 五里霧中」

 物語の中で、様々な謎が現れる。灯台の内外や深い森の中に現れる、神出鬼没の ”白もんこ” の存在をはじめ、どう考えてもホラーな要素もたくさんあるのだが・・・
 この第三部の中で波矢多が解き明かすのは、その謎の一部だ。

 合理的に解明される部分は、ミステリを読みなれた人なら何となく見当がつくであろうレベル。前作『黒面の狐』はミステリ寄りだったが、本書はホラー寄りといえるだろう。

 物語としては十分に面白いのだけど、評価は好みによって別れるかな。ミステリとしての期待が大きすぎると、アテが外れたと思うだろうし、ホラー好きならたまらないだろう。
 私もホラーは苦手なので、ちょっと据わりの悪さを感じてしまった。



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