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夢と魔法の国のリドル [読書・ミステリ]

夢と魔法の国のリドル (新潮文庫nex)

夢と魔法の国のリドル (新潮文庫nex)

  • 作者: 七河 迦南
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/05/29
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

ヒロイン・神流川杏那(かんながわ・あんな)は、
空手家の両親の下に生まれ、彼女もまた高校で空手部に所属していた。

ある夜、杏那は暴漢に襲われている男性・相田優(ゆう)を助ける。
彼は医師免許を取得して間もない研修医だった。

これをきっかけにつき合い始めた二人だが
仕事が忙しくて休みが取れない優と、大学受験を控えていた杏那では
なかなか会う機会が取れなかった。

しかし杏那も卒業の時を迎え、大学も決まった。
そして3月31日。杏那の高校生としての最後の1日に
2人は ”夢と魔法の国” を謳うテーマパーク、
〈ハッピーファンタジア〉へデートに出かける。

 ハッピーファンタジアのモデルはもちろん、あの ”ネズミの国” だが
 外国発祥のあちらと違い、ハッピーファンタジアは日本人が設立した
 純然たる国産の ”夢と魔法の国” である。
 とはいっても、『ナルニア国』とか『指輪物語』とか
 『イルスの竪琴』とか『デューン 砂の惑星』とか、
 海外産のネタも大量に入っているのは作者の趣味なのか(笑)。

長かった ”おあずけ状態” (笑)を脱し、優との距離を縮めようと
張り切る杏那だが、入園して早々に謎の建造物を発見する。
パーク内の他の建物とは明らかに異なる雰囲気だ。

そこは新しいアトラクションや企画を立案する ”研究所” だった。
本来は「関係者以外立入禁止」のはずなのだが、なぜか遮る者は現れず、
杏那に引っ張られて優も一緒に建物の中に入ってしまうのだが、
そこで2人ははぐれてしまう・・・

ここから物語は杏那のパートと優のパートに別れ、
2人がそれぞれ出くわす ”事件” が並行して語られていく。

迷った杏那が入り込んだ部屋は、書斎のようなつくり。
そこで彼女は何者かに襲われてしまう。
意識を失う直前に杏那が見たのは、
ハッピーファンタジアのキャラクターである
クマのエドガーが何者かに殺される(!)ところだった。

目を覚ました杏那の前に現れたのはリスのフレディ、
ヤギのジョージ、サルのロジャー、ヤマネコのハロルド。
みなハッピーファンタジアのキャラクターたちだ。

彼らが言うには、書斎には魔法の呪文がかけられていて
何者も出入りできなかったはずなのだという。
突然放り込まれた夢と魔法の国で、
杏那は 密室殺人(殺キャラ?)事件に巻き込まれてしまう。

一方、”こちらの世界” に留まっていた優は、
研究所の一室で、男性の死体を発見する。
被害者はハッピーファンタジア運営会社の専務・椎野利雄だった。
しかも現場は密室状態で、誰にも知られずに
出入りすることは不可能だった・・・

杏那のパートは、てっきり着ぐるみによるキャラクターショーで
新しいアトラクションの試行中なのかと思ったのだが
読んでいくとそうではなく、純然たるファンタジー世界での
出来事であることがわかってくる。

見知らぬ世界に放り込まれても、杏那さんは元気いっぱいだ。
なにせ彼女は空手の達人だからね。そこらへんのお嬢さんとは
鍛え方が違うから、アクションシーンも難なくこなす。
そんな杏那さんの波瀾万丈の冒険が綴られていく。

優のパートがなければ、特殊条件下の異世界ミステリに移行したのかと
思うところなのだけど、一方でリアル世界での事件も進行しているわけで
どうやらこれは、杏那の ”夢の世界” での話じゃないかなぁ・・・とは
誰でも考えるところだろう。

そのへんはネタバレにもなるので書かないが、
最終的に杏那は ”あちらの世界” で起こった事件の真相にたどり着く。
このあたりは作者に上手く丸め込まれたような気もするのだけど(笑)。

そして ”こちらの世界” への帰還も果たし、優とも再会する。

”こちらの世界” の事件の真相を解き明かすのは優なのだけど
杏那の持ち帰った ”あちらの世界の情報” も重要な手がかりとなる。

 杏那は ”あちらの世界” ではホームズ役なので、
 本書は「ダブル探偵もの」ともいえるが、
 ”こちらの世界” からみるとワトソン役ともいえる。
 もっとも、こんなに大変な思いをして手がかりを見つけてくる
 ワトソン役というのも珍しいだろう(笑)。

どうやってリアルとファンタジーをつなげるのかが
本作の ”キモ” なのだが、そうやって導かれる真犯人はかなり意外。

作中人物の杏那さん自ら「究極のアンフェアじゃないの?」って
思ってしまうくらいなんだが、実際私も「えーっ」って思った。

伏線を拾っていけば論理的にその結論に至る、って納得するには
ちょっと時間がかかった。人によっては怒り出すかも。
でもまあ、それを堂々と読者に対して仕掛けてきた
作者さんの勝ち、なんだろう。

作中に出てくる魔方陣や暗号など、夢と魔法の世界っぽいアイテムも
とてもよくできていて、楽しい読み物になっているんじゃないかな。

感情豊かで、考えるより先に体が動いてしまうような杏那、
冷静沈着で、試行錯誤を重ねながら思考を続けていく優。
なかなか魅力的なカップルだ。とくに杏那さんがカワイイ。

この2人、本作だけでお終いというのはもったいないなぁ。
長編が無理なら短篇でもいいからまた杏那さんに会いたい。


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mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-08-16 11:00) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-08-16 11:04) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-08-16 11:04) 

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