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ふたえ [読書・ミステリ]

ふたえ (祥伝社文庫)

ふたえ (祥伝社文庫)

  • 作者: 白河三兎
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2018/06/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

高校の修学旅行を間近に控えた2年5組に転入してきた生徒、
手代木麗華(てしろぎ・れいか)は、傍若無人な態度と
担任教師さえ言い負かす傲岸不遜な言動で、
一気に ”問題児” のレッテルを貼られる。

当然ながらクラスでも彼女に近づく者はおらず、修学旅行の班分けでは
友人のいない「ぼっち」な者たちが集まった班に入ることに。

どんくさい「ノロ子」、地味な「ジミー」、
弟に将棋でかなわない「劣化版」、
影の薄い「美白」、不気味な「タロットオタク」。

修学旅行中に4日間ある班行動期間のプランを決めるに際し
麗華は彼ら彼女ら5人に対して強引に自分の計画を押し通してしまう。
すなわち4日間の間、彼女の班のメンバーはすべて
「京都国際マンガミュージアム・えむえむ」で
終日マンガを読んで過ごす、というものだ。

 ちなみに、この施設は実在しているみたい。

意外にもこのプランは担任にあっさり受理されてしまう。
そしていよいよ修学旅行が始まったが
麗華はこのプランの裏に、ある計画を潜ませていたのだ。

「第一章 重なる二人」では、以上の経緯が
「ノロ子」の視点から語られる。そして班行動が始まった初日、
彼女は麗華が「えむえむ」から抜け出すのを見つけてしまう・・・

「第二章 素顔の重ねる」では、こんどは別の生徒の視点から
同じく修学旅行中の様子が語られる。

その人物も「えむえむ」から抜け出して単独行動を始めるのだが
ここまで読んでくると、「ぼっち班」のメンバーが章ごとに
代わる代わる視点人物になって修学旅行中に起こったことを
多面的に描いていくのだろう・・・と思った。

基調としては、メンバーそれぞれが今まで自分を縛っていた
”殻” を破って前向きに生きるようになっていく、という ”いい話”。
実際、章も全部で6つあるし。

そういう ”いい話” が進行していくのと並行して、
読者は少しずつ違和感を感じ始めるだろう。
「え? ちょっとここ、前の話と違うんじゃない?」
小さな矛盾から始まり、それはだんだん大きくなって、
最初の予想の範囲からどんどん逸脱していく。

もちろん、最終章ではきっちり辻褄が合うようになってるんだけど
この真相はなぁ・・・

文庫裏表紙の惹句には「二度読み必至」とある。
確かに私も、途中で「第一章」を読み直してしまったし。

「物語が生まれ変わる驚きの結末!」ともある。
たしかにラストまで読むと、各章の物語の意味合いが変わってくる。
でも、明らかにされた真相が心地よいものかどうかは別だ。

本書は、基本的に若者の成長を描いた話なのでねぇ。
この真相はどうなんだろう。
ミステリとしてはよくできているのだろうけど
”物語” としては如何なものか、とも思うんだよねぇ。

私はちょっと哀しかったかなぁ。
「若者は○○○○○○○○」と思う私は、
ミステリ読みとしては甘いのかなぁ。


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mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-08-16 11:00) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-08-16 11:00) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-08-16 11:00) 

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