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早房希美の謎解き急行 [読書・ミステリ]

早房希美の謎解き急行 (双葉文庫)

早房希美の謎解き急行 (双葉文庫)

  • 作者: 山本 巧次
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

この本のスゴいところは、武州急行電鉄という架空の会社を設定し、
さらに架空の路線を作ってしまっているところ。

関東以外に住んでる人にはピンとこないかと思うが、
本書の冒頭にある路線図を紹介すると
池袋を起点に光が丘、埼玉県に入ってからは朝霞、新座ときて
川越の東を抜けて北上、熊谷へ至る。
支線も2つあり、総計で50を超える駅も設定されていて
急行が止まる駅/止まらない駅まで明示されてる。
さらには、他の私鉄やJRとの乗換駅まで考えられていて
いやはやたいしたもの。

作者は鉄道会社勤務という経歴を持つだけあって、
鉄道というものが大好きなのだろう。この路線図を考えるのも
嬉々として行っていたのではないかと推察する。

本書は、この架空の鉄道会社で起こる事件の数々を、
社員である早房希美(はやふさ・のぞみ)と、
彼女の祖父で元埼玉県警の刑事だった喜一郎が解決していく
連作ミステリである。

「ケース1 遮断機のくぐり抜けは大変危険です」
長閑な田舎に位置する黒岩4号踏切。
午後9時ころ、ここに設置されている特殊信号発光機が作動して
列車が急停車するという事件が起こる。
これは障害物検知装置がなにものかを感知したときに発動するのだが
障害となるものは何も発見されなかった。
しかも、この ”誤作動” が1週間で4度も起こってしまう。
希美は同僚の布施と共に現地へ調査に向かうが・・・

「ケース2 雨の日は御足元に充分ご注意ください」
武州急行釘無駅で通勤客・牧野が階段から転落してしまう。
彼は「駅員に突き落とされた」と言うが、様子がおかしい。
防犯カメラに写っていた、全身黒ずくめの謎の人物が
犯人ではないかと思われたが・・・

「ケース3 危険物の持ち込みはお断りしております」
朝のラッシュアワーを迎えた池袋駅。
通勤客の深江由香が駅員に助けを求めてきた。
ストーカーに追われているのだという。
彼女が駅務室に入った後、今度は男性客が現れる。
由香の上司の岩屋と名乗ったその男は、
彼女が語ったストーカーの外見にそっくりだった・・・

「ケース4 痴漢は犯罪です」
新座駅近くの車内で、痴漢事件が起こる。
女性から痴漢と名指しされた男は容疑を否定したが、
駅長室で取り調べを受けることになった。
女子会の帰りで、たまたま乗り合わせていた希美は、
男が駅長室へ入るときに薄笑いを浮かべているのを目撃する・・・

「ケース5 特急のご乗車には特急券が必要です」
希美は、会社の帰りにしばしば特急を利用する。
座って帰れるからだ。その日、希美が乗った車両には
特急券を持たずに乗っている女性客がいた。
彼女はそのあと車掌から特急券を購入したのだが、
その翌日も翌々日も、彼女は同様の行動を取る。
希美がそれについて車掌と話すと、
不審なふるまいをする乗客がもう一人いるという情報が・・・

いずれも、事態の背後に隠れた犯罪を
喜一郎と希美が暴いていく話なんだが、
名刑事と謳われた喜一郎の影響力はものすごい。
退職した後でも県警内に人脈を持っていて幹部ともツーカーの仲。
まあ、そうしないと話が進まないんだろうけど(笑)。
最後の話でも犯罪が描かれるけど、それと同時に
”鉄道を舞台にしたちょっといい話” になっていて、
読んでいて心がほっこりする。これで星半分増量(笑)。

 


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mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-28 10:29) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-28 10:29) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-28 10:29) 

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