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夕暮れ密室 [読書・ミステリ]

夕暮れ密室 (角川文庫)

夕暮れ密室 (角川文庫)

  • 作者: 村崎 友
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

舞台は北関東の田舎町。
時代は、作品内設定では2000年代初めらしいが
携帯電話の電波が通じない場所が随所にあるなど
個人的には1990年代初めくらいかなぁと思った。

 あのころは、建物の中でも場所によっては
 電波の届くところ、届かないところがあったよねえ。
 ああ、何もかもみな懐かしい・・・(笑)。

インターハイ出場を目指す栢山(かやのやま)高校バレー部は
7月の県大会で、格下の高校相手にまさかの準決勝での敗退。

夢破れた3年生たちは部活動を引退し、
卒業後の進路へ向けて気持ちを新たにしていく。

そして9月。3年生にとっては最後の文化祭が始まるが
その開会式の朝、バレー部のマネージャーだった
森下栞(しおり)の死体が高校のセミナーハウスで見つかる。

現場の女子シャワールームは密室状態で、
遺書らしきものが発見されたことから
学校側は自殺として処理しようとするのだが、
クラスメイトやバレー部員たちはそれに反発する。

誰からも愛され、特に男子生徒からは憧れの的だった彼女を
殺したのは誰か。生徒たちは様々な憶測を巡らせていくのだが
そんな中、さらにもう一人の生徒の死体が発見される・・・


物語は、栞の親友だった松本果林(かりん)をはじめ、
章ごとに異なる生徒の視点から語られていき、
それによって事件の様相が多面的に描かれていく。

本書の特徴は、徹底して生徒の側から描いていることだろう。
登場するバレー部の顧問や担任、学年主任なども、
あくまで生徒からの視点でしか描かれない。

警察についても同様で、捜査で判明した事実なども
ほとんど描かれない。例えば死亡推定時刻などは、
犯人絞り込みの重要な手がかりになるはずだが
それすらも生徒たちには知らされない(まあ、当たり前だが)。

逆に言うと、生徒たちは自分や仲間が見聞きした情報しか
手元にないわけで、それがために
様々な推理が成立していくことになる。

最終的には、生徒の一人が探偵役となって犯人に至るのだが
誰が探偵になるのかさえ終盤に至るまで分からない。
つまり、主要登場人物の誰にも犯人の可能性があるわけだ。

描かれてはいないけど、警察だったら密室トリックの解明や
生徒たちのアリバイ調べなどもどんどん進んで
犯人にたどり着くのも時間の問題のような気もするが
本書のキモは、あくまで生徒の心理状態を描くことなのだろう。

高校3年生も残り半年となり、進路で悩んだり将来に不安を抱えたり。
そんな不安定に揺れ動く生徒たちの間で起こった殺人事件。
解明されてみると、犯人の動機もこの時期の高校生ならでは。
登場人物もみな、同様の不安を抱えた生徒たち。
作者は、そんな彼ら彼女らの葛藤を生き生きと描きだしてみせる。

本書は、横溝正史ミステリ大賞に応募して、”落選” したものの、
選考委員から高い評価を受けて出版に至ったという。
そんな経緯も納得の青春ミステリの傑作だと思う。


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