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本格王2019 [読書・ミステリ]

本格王2019 (講談社文庫)

本格王2019 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/07/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★
2018年に発表された短篇ミステリの中から
ベストな作品として選ばれた6編を収録する。

「ゴルゴダ」飴村行
小説家志望の青年・岡光明彦は、伯父の英一から手紙をもらう。
長年連れ添った妻を亡くし、さらに退職したのを機に
10日間の旅行に出るので、その間の留守番を頼みたい、と。
しかし伯父の家に着いた矢先に謎の男・重富(しげとみ)の訪問を受け、
英一には妻の存命中から愛人がいたことを聞かされる明彦。
さらに英一の家には、かつて昭和中期に活躍した
ミステリ作家・掘永彩雲が暮らしていたこと、
そして彼が愛憎に満ちた壮絶な人生を送ったことを知る。
英一の人生と彩雲の人生が微妙にシンクロするホラーな話かと思いきや
ラストには大技が炸裂して背負い投げを食らってしまう。
でもこれは私的には反則技だなあ・・・

「逆縁の午後」長岡弘樹
消防官・吉国(よしくに)の息子・勇輝(ゆうき)は
父と同じ消防士となるが、消火活動中の事故で殉職してしまう。
勇輝の葬儀を終えた吉国は、改めて「お別れの会」を開く。
会場となるホテルの一室に集まった参加者を前に、吉国は語り始める。
勇輝の誕生、幼い日々の思い出からやがて成長して消防士となり、
そして死の当日の火災現場の模様まで・・・
読んでいると、途中で勇輝の死の真相が見えてくるだろう。
ミステリである以上、早めに真相が割れてしまうのは
必ずしもいいことではない(むしろよくない)のだが
作者はあえてそういう風に書いているのだろう。

「枇杷の種」友井羊
アンソロジー『特選 the どんでん返し』で既読。
主人公・蔦林(つたばやし)は、過去の ”事情” により定職に就けず
仕事を転々としていた。いまの職場でも単純作業に従事している。
休日の夜、河川敷を歩いていた蔦林は高校生の変死体を発見する。
この街では連続殺人が起こっており、犯人は同一と思われていた。
警察に第一発見者として取り調べを受けた蔦林は、
解雇されることを覚悟するが、上司の事業部長・陣野は
なぜか蔦林を支えると言って自宅に招くのだが・・・
陣野がいかにも胡散臭く、実際ウラがあるのだが、これは想定の範囲内。
連続殺人事件の犯人も意外だが、私が一番驚いたのは
蔦林の ”事情” の中身だったりする。
”罪を背負う(背負わされる)” にも、いろんな形があるのだろうが・・・

「願い笹」戸田義長
北町奉行所の同心・戸田惣左衛門は、吉原に逃げ込んだ
お尋ね者の芳三(よしぞう)を捕らえ、
それがきっかけで人気花魁・牡丹(ぼたん)と知り合う。
一方、牡丹の所属する遊女屋を経営するお千(せん)は、
怪しげな信仰にかぶれた夫・富蔵を殺すことを決意する。
その計画の一端として、お千は富蔵宛に殺害予告の手紙が来た、という
虚偽の理由をでっち上げて、惣左衛門に夫の護衛を頼みこむ。
夜を徹して祈祷をするという富蔵と同じ部屋で過ごす惣左衛門だが、
彼の眼前で富蔵は何者かに刺し殺されてしまう。
誰もその部屋に出入りすることはできなかったという密室状況に、
惣左衛門自身が殺人の容疑者とされてしまう。
進退窮まった惣左衛門の危機を救ったのは、意外にも牡丹だった・・・
トリック自体は先行例があるけれども、
吉原という特殊な場所ならではのアレンジが秀逸。
惣左衛門とその嫡男・清之介、そして探偵役となる牡丹の
3人を主人公とする連作短篇の1つ。
全12作となる短篇は『恋牡丹』『雪旅籠』の2冊に収められている。
私はすっかり牡丹さんに惚れ込んでしまったので、
このあと2冊とも読んでしまった、近々記事にアップする予定。

「ちびまんとジャンボ」白井智之
アングラで違法な ”大食い大会” を取り仕切る『もぐもぐ興業』。
そこが主催した ”大日本フナムシ食い王決定戦” に参加した
フードファイター・ちびまんが ”競技” 中に死亡する。
フナムシを喉に詰まらせたことが死因と報道されるが
実はアコニチン(トリカブト)による毒殺だった。
『もぐもぐ興業』からの借金を抱える主人公・すすむは、
犯人を探し出すことを強要されるが・・・
うーん、ここまで読んできた人は予想がつくかも知れないが
全編これグロとゲロ(笑)だらけの怪作としか言いようがない(苦笑)。
本格ミステリとしては優れているのかも知れないが
私はダメですねぇ。生理的に受け付けません。
こういうのに目がない人も、世の中に一定数いるのでしょうが・・・

「探偵台本」大山誠一郎
刑事の和戸宋志(わと・そうじ)は帰宅途中に火事に遭遇する。
彼が現場から救出した意識不明の男は春日壮介。劇団付きの脚本家だ。
春日が抱えていた原稿は、劇団用に書き下ろした推理劇の脚本。
しかし一部は損傷して読めず、結末部分も失われていた。
主役の和戸は、”周囲にいる人間の推理力を飛躍的に向上させる” という
“ワトソン力(りょく)” なるものを持っているという設定で、
病院に集まってきた劇団員たちは、劇の真相を巡って
様々な推理を凝らしていくことになる。
ミステリ作家さんというのは、いろんなことを考えるものだねぇ。
文庫で30ページほどだが、なかなか濃密。


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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:17) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:17) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:18) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-12 02:18) 

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