SSブログ

泣ける!ミステリー 父と子の物語 [読書・ミステリ]

泣ける! ミステリー 父と子の物語 (宝島社文庫)

泣ける! ミステリー 父と子の物語 (宝島社文庫)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

「父にまつわる短篇を」というオファーのもと、
5人の作家さんが競作したアンソロジー。

「進水の日」岡崎琢磨
6歳の航輝(こうき)は進水式に参加した。その船は、船乗りである父が
これから乗り組む予定のもので、その日から航輝自身も
船乗りになることを夢見るようになった。
小学校に入ると船の設計士を目指す和斗と出会い、親友となる。
しかし父が異動で地上勤務になり、航輝の一家も
そろって引っ越すことになってしまうのだが、
それがきっかけで航輝は和斗と不仲になってしまう。
やがて引っ越しの当日を迎えるのだが・・・
息子のトラブルを助けてくれるお父さんが
とても頼もしく描かれている、ほのぼの系ミステリ。

「神様のペテン師」里見蘭
かつて天才詐欺師として謳われたが、現在休業中の夏目恭輔のもとに
ある日突然、一人の女子中学生が現れる。
彼女の名は藤川小春。かつて恭輔の恋人だった藤川みひろの忘れ形見だ。
小春は父親である恭輔に助けを求めにきたのだ。
恭輔と別れたみひろは修道院に入って尼となり、
小春はそこに併設されている児童養護施設で育ったが、
その土地にマンションを建設し、高値で転売しようと考えた
地主・脇坂が修道院に立ち退きを迫ってきたのだという。
”娘” の危機に立ち上がった恭輔は、脇坂の ”野望” を阻止すべく
一計を案じて仲間を集め始める・・・
ユーモアたっぷりに描かれるコン・ゲーム小説。
詐欺師という仕事にポリシーをもっている恭輔、
彼の相棒となる蔵本はギャグ要員だが、詐欺師としての ”腕” は確か。
二人に協力する ”チーム夏目” のメンバーも魅力的。
小春もしっかりした正統派の美少女で、こんなお嬢さんから頼まれたら
お父さんはもうイヤとは言えないでしょう。
本作は連作になっていて、続きもあるそうなので読むことにした。

「家に帰ったら」友清哲
都会で出合った蔵人(くらひと)と香春(こはる)は
長閑な生活を求めて田舎の里山に移り住み、幸せな新婚生活を送る。
しかし年月を経ていくうちにその思いは希薄になっていって
いつしかお互いに離婚を考えるようになっていたが、
それをなかなか口に出せないまま、時間だけが経っていく。
そんなある日、蔵人は仕事を終えて家に帰る途中の道で
5歳ほどの少年に出会ったのだが・・・
読んでいくなかでところどころ引っかかるところがあり、
どういう話なのかがだんだん分かっていくようにできている。
話としては面白いと思うけど、これはミステリなのかなぁ。

「美女とお父さんと私」小路幸也
主人公・山河和衣(やまかわ・かずよ)は大学2年生。
父親の山河悟郎は、和衣の通う大学の文学部で教授を務めていた。
そんな父が、3年生の橋本美智に対して
セクハラ行為をしたという疑惑が持ち上がる。
美智はいろいろ不穏な噂があって、周囲から敬遠されている学生だった。
父に限ってそんなことはあり得ない、と思う和衣。
そんな中、大学の帰りに美智から呼び止められるのだが・・・
父の無実を信じる和衣さんが健気なんだけど、これは小説の話。
現実の世界では、こんな騒ぎが起こったら、
いくら普段の言動がまともでも、やっぱり一度は疑われてしまうのが
父親というものではないかなぁ。
そう思うのは私の心が曲がっているせい?(笑)

「バイシクル」冲方丁
8歳になる息子が自転車に乗れるようになるために
いろいろがんばって応援するお父さんの話・・・なんだが、
まずお母さんとの仲がよろしくないみたいで
離婚してるのかな・・・なんて思ったりする。
とにかく読んでいくと次第に不穏な雰囲気になっていく。
このアンソロジーで、ここまでの4編は
基本的に穏やかな、あるいはハッピーな話だったんだけど
最後の最後でこうきたかぁ、という話。

本書の冒頭にある「進水の日」を読みながら考えたことがある。
父親の職業、あるいは家業というのはどういうものなのだろう。

父の姿に憧れて、あるいはその仕事に意義を見出して
「後を継ごう」と思うのか、
父の姿から伝わってくる、その仕事に伴う苦労が耐えられないと思ったり
あるいはその仕事(家業)が家庭にもたらす悪影響を見ていて
「絶対継ぎたくない」と思うのか。

だいたい世の子どもたちはこのどっちかになると思うのだけど、
私は後者だった。もう物心ついた頃からそう思っていたよ。
このあたりを書き出すと長くなるのでやめておくけど(笑)。

「進水の日」に出てくる航輝くんは純然たる前者で、
こういう息子を持ったお父さんはさぞ嬉しいだろうなあとは思う。
全く同じではなくとも、似たような分野に進んでくれたら
それはそれで悪い気はしないだろうとも思うし。

たまたま、昨夜BS放送を見ていたら、
イタリアで親子揃ってタクシー運転手という人が出ていた
かの国では、子が親と同じ仕事に就くのは
ごく当たり前のことなのだとか。
お国柄はそれぞれである。


nice!(4)  コメント(4) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-11 01:33) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-11 01:33) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-11 01:34) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-11 01:34) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント