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天冥の標 III アウレーリア一統 [読書・SF]


天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/07/10
  • メディア: 文庫
大河SF「天冥の標」シリーズ、第3部。

第2部「救世群」の舞台は2015年。
治療法がなく、致死率95%という脅威的な感染症・”冥王斑” の
世界的なパンデミックが描かれた。
そのラストでは、”冥王斑” の保菌者たちが
非感染者たちと(否応なく)隔離されて生きていくことになり、
彼らが独自の共同体「救世群」を結成するところまでが語られた。

第3部である本書では、時代は一気に2249年に飛ぶ。
人類は小惑星帯に多数の国家を建設し、2億人の人々が暮らしていた。

 この小惑星世界は、シリーズ中盤の主舞台となる。
 私は現在のところ第6部「宿怨」まで読み終わってるんだが
 どうやら第7部「新世界ハーブC」まではこの世界で物語が進むようだ。
 いわば本書から「天冥の標」のメインストーリーが始まるといっていい。

木星の大気中に、巨大な構造物が発見される。
異星人の遺跡と思われるそれは、
強大なエネルギー・ジェネレーターであることも判明する。
なにせ木星の大赤斑は、この遺跡が引き起こしていたのだから・・・

この遺跡は、調査のために最初に降り立った人物の名を取って
”ドロテア・ワット” と呼ばれることになるが、この調査中に
遺跡は突然、移動を開始して行方不明になってしまう。

そしてまた時は流れ、2310年。

小惑星国家の一つ、ノイジーラント大主教国の名家・アウレーリア家の
当主アダムズは、強襲砲艦エスレルの艦長として
海賊狩りの任にあたっていた。

「救世群」はこの時代、小惑星エウレカを居住地にしていたが
その議長グレア・アイザワが所有していた ”ドロテア・ワット” に関する
報告書が海賊に奪われてしまう。

グレアからの依頼で海賊を追うことになったアダムズは、
巨大動力炉 ”ドロテア” を巡る勢力争いに巻き込まれていく。


長大なシリーズの一編ではあるけれど、
本書単独でも、よくできたスペースオペラになっていると思う。

超光速航法が存在しない近未来、舞台も小惑星帯とあって
艦船運航や戦闘行動などもニュートン物理に則って行われる。
たぶん、ところどころ誇張してるシーンもあるのだろうが
リアリティと外連味がいいバランスをもって描かれてると思う。

 まあ、完璧に物理法則通りに書いたら
 無味乾燥なものになりそうな気もするのだけど、
 (それはそれで面白いところもあるとは思うが)
 そうならないのはやはり作者が巧いのだろう。

加えて、多彩なキャラクターたちが生き生きと活躍する様が面白い。
中には、前作までのキャラの子孫や、
後の巻で活躍する人物の先祖が登場したりする。
そのへんも大河歴史ものを読む楽しさだろう。


第2部と第3部ではおよそ300年の時の流れがあるが
次作である第4部「機械じかけの子息たち」は第3部のわずか3年後の話。
しかし、全くといっていいほど雰囲気の異なる話になってる。
毎回、違った作風で展開してみせるのは
作者の引き出しの多さを示してるのだろう。

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コメント 5

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-01 22:16) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-01 22:17) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-01 22:17) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-03 00:47) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2019-11-03 22:06) 

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