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恐怖の緑魔帝王 [読書・ミステリ]

([あ]5-3)恐怖の緑魔帝王 (ポプラ文庫)

([あ]5-3)恐怖の緑魔帝王 (ポプラ文庫)

  • 作者: 芦原 すなお
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2017/06/02
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

ポプラ社発行の、「少年探偵団」シリーズへの
オマージュ作品の第4弾。
前回の「少年探偵」も ”変化球” だったが、
こちらもまた異なる方向に振り切った ”クセ球” だ。


ある秋の夕暮れ、少年探偵団の井上君とノロちゃんの前に
一人の老婆が現れる。
緑の服に緑の足袋、緑の鼻緒のついた草履、右手には緑色の杖、
左手には緑色の数珠、そして頭髪までも緑色(!)。
そして何やら不気味で恐ろしげな言葉をブツブツと・・・

 ちなみに横溝正史ではありません。江戸川乱歩の世界です(笑)。

そして探偵団の二人に向かって告げる。
「今日見たことを小林少年と明智小五郎に伝えよ」と。

その頃、港区白金にある資産家・湧水(わきみず)健太郎氏の屋敷に
怪人二十面相から予告状が届く。

内容は、湧水が所有する雪舟の山水画を頂戴すること、
そして、一緒に湧水の一人娘の登喜子も攫っていくこと。

湧水はさっそく明智小五郎に依頼に赴くが
折しも明智は他の事件のために小笠原諸島へ出張中。
そこで、小林少年が明智の代理として二十面相と対決することになる。

しかしその直後、明智探偵事務所を一人の青年が訪ねてくる。
明智の紹介状を持ったその男は天道聖一と名乗り、
小林少年に協力するためにやってきたという・・・


ストーリーだけを取り出すと、正統的な「少年探偵もの」って
感じがするんだけど、読んでみるとかなり雰囲気は異なる。

全編にわたって横溢するのは謎のコメディ感(笑)。

例えば、二十面相からの予告状は
「拝啓」で始まり、「時候の挨拶」へと続き
さらに「突然の手紙を出したことへの無礼の謝罪」へ。
やたら礼儀正しい(笑)手紙に意表を突かれる。

小林少年と湧水氏の会話も、ボケとツッコミの応酬で
漫才かコントを見てるようだ。
地の文にも随所にとぼけた表現があり、
時には自分の文章に自分でツッコミを入れたりと
なんだか噺家が新作落語を語ってるみたいに思えてくる。

と思えば、シリーズの約束事にもツッコんでくる。

予告状を送ってわざわざ仕事の難易度を上げる二十面相とか、
コストパフォーマンスが著しく悪そうな、怪人の纏う異様な風体とか。
そして、そんな格好をして、脅かす相手を延々と待ってるという
想像するだけでその根気強さに頭が下がる行動(笑)、とか。

上のあらすじを見ただけでも、天道というキャラが
胡散臭そうにみえるだろうが
そういうところも読者の期待を裏切らない(笑)。
彼の正体や二十面相との関わりも読みどころ。
私は彼の意外な素性にちょっと驚いたよ。

もちろん終盤では明智も登場して活躍するし、
ミステリの勘所も押さえてあるし
「少年探偵団、ばんざーい!」で終わるところもお約束。

とてもよくできていて、オリジナルへの愛にあふれた、
オマージュと言うよりはパロディというべき作品。

原典の雰囲気を忠実に再現したものもいいけど
こんな作品もあっていい。

この調子でホームズやルパンも描いてくれないかなぁ。
そしたら喜んで読ませてもらうけど。

nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-02-23 22:34) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-02-23 22:34) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-02-23 22:35) 

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