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空飛ぶ広報室 [読書・恋愛小説]

空飛ぶ広報室 (幻冬舎文庫)

空飛ぶ広報室 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/04/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★★☆

航空自衛隊の花形、ブルーインパルスに入ることを夢見てきた空井大祐。
しかし彼は不慮の事故に襲われ、足を負傷してしまう。
懸命のリハビリにより、日常生活に支障は無いまでに回復したものの、
戦闘機パイロットとしての将来は断たれてしまう。
失意の彼に示された異動先は航空幕僚監部広報室だった。

ジャーナリスト志望だった稲葉リカ。
大手の放送会社・帝都テレビに入社し、配属先は希望通り報道部記者。
事件が起これば、被害者の涙も意を介さず我武者羅に取材する日々。
しかし次第に失点を重ね、同期に水をあけられるようになる。
そしてついにニュースバラエティ番組のディレクターへ異動。
リカにとっては左遷でしかなかった。

そんな二人の出会いは最悪だった。
幕僚監部広報室へ取材に現れたリカは大祐に言い放つ。
「だって戦闘機って人殺しのための機械でしょう?」

 東日本大震災を始め、近年日本を災害が襲う頻度が増し
 そのたびに自衛隊の活躍が報じられる。
 近隣諸国の軍事的脅威も増してきて、
 昔よりも格段に理解が進んできたとは思うが
 まだまだこんな風に思う人も少なくないだろう。

この物語は、そんな二人が衝突しながら
少しずつ相手のことを理解していき、
やがて心を通わせるようになっていくまでを綴っている。


二人の物語を彩るのは、ユニークなサブキャラクターたち。
広報活動のエキスパートの比嘉一曹、
比嘉にライバル心を燃やす片山一尉、
"残念な美人"の柚木三佐、生真面目な槇三佐、
そして脱力系に見えてしたたかな広報室長の鷺坂一佐。

彼らそれぞれの背景なども面白いのだけど、
(特に柚木と槇の学生時代の話では、有川カラー全開だ)
ゲストキャラの話もまた絶品。
特に、機体整備士だった父を持つ藤川士長のエピソードでは
涙腺が崩壊してしまってどうにも困った。

 今これを書いている時も、思い出すと目頭が熱くなってくる。
 私はつくづくこの手の話に弱いんだなあと思う。


組織の中で仕事を続けていけば、
意に沿わぬ異動というものも起こる。
「なんでオレがこんな仕事を・・・」って
思うこともあるだろう(私はあったよ)。

でもどんな仕事でも、それが存在しているのは
"必要な仕事" だから。だから誰かがやらなければならない。

「今いる場所で頑張れない奴は、どこに行ったって頑張れない」
ついつい不満を言いたくなる自分に対して、
常々言い聞かせている言葉だ。
なかなか言葉通りにはできないんだけどね(^^;)

大祐とリカの二人も、意に沿わぬ異動先で
新しい仕事に対するやりがいを見つけ、
ついでに大事な人も見つけてしまう(笑)。

とは言っても、有川浩の作品には珍しく、
主役カップルについてはラブ要素はやや控えめか。
(そのぶん、柚木と槇に集中しているかな)


本書は綾野剛と新垣結衣主演でTVドラマ化され、
ラストで大祐とリカは結婚しているとのこと。
(ドラマ観てないんです)

しかし原作では、本編終了時の二人の関係は
「友人以上恋人未満」という感じで、
その2年後、東日本大震災直後を描いた追加エピソード
「あの日の松島」でも、その仲は進展していない。
(というか2年間放置状態だった?www)

解説を書いてるのは、鷺坂室長のモデルになった人なんだが
その中で二人の関係をあえて進展させなかった理由を
「自衛隊広報とマスコミは、安易になれ合ってはいけない関係」だから、
と推量している。
でも、「小説世界の中でも、二人にハッピーエンドを与えてほしい」
ともある。
私も全面的に同意見だ。
続編が無理なら短編でもいいので、その後の二人を描いて欲しいなぁ。

日本各地を異動する自衛隊員と大手TV局員。
当然ながら遠距離恋愛になるだろうし、
しかも仕事に誇りを持って取り組んでいる二人なので
結婚したらしたで生活はかなりたいへんになるだろうけど、
せめてフィクションの中では二人に幸せになって欲しいなあ。


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mojo

あずきさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-01-17 00:08) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-01-17 00:09) 

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