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漱石先生の事件簿 猫の巻 [読書・ミステリ]

漱石先生の事件簿 猫の巻 (角川文庫)

漱石先生の事件簿 猫の巻 (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/11/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★

夏目漱石と言えば「国民的作家」の筆頭だし
『吾輩は猫である』といえばもちろん漱石先生のデビュー作。

私も読んだのだけど、はて、いつだったか。

 小学校で「少年探偵団」にはまり、
 そこから「ホームズ」「ルパン」へとすすみ、
 中学ではもう創元推理文庫で
 ヴァン・ダインとかクイーンとか読んでたはず。
 高校に入るとそれにSFが加わって
 純文学なんぞほとんど読まなくなってたから、
 たぶん中学のどこかだと思うんだけど・・・


さて本書だが、語り手は猫の"吾輩"ではなく、人間の「僕」。

探偵小説好きの学生である「僕」は、
父の事業が失敗して仕送りが途絶えてしまったため、
書生として"英語の先生"のもとへ書生として住み込むことになる。

やがて起こる、原典に記された様々なエピソード。
「僕」の目に映るそれらは、みな立派な "謎" の数々だった。
"真相" を突き止めるべく奮闘する(させられるw)「僕」。
そして明らかになる意外な真実。

要するに原典『吾輩-』そのものを "日常の謎系ミステリ" として
読み解いてしまおうという "発想の勝利" 的作品。


「其の一 吾輩は猫でない?」
 ペストの蔓延を防ぐため、菌を媒介するネズミの駆除が奨励される。
 鼠を捕まえて交番へ持って行くと一匹あたり五銭もらえるのだ。
 ある日、車屋の亭主が"先生"の家へ怒鳴り込んでくる。
 "先生" の飼っている猫が、
 車屋が捕まえるはずの鼠を横取りしているという・・・

「其の二 猫は踊る」
 二弦琴のお師匠の飼い猫・三毛子が亡くなる。
 その原因が "先生" の飼い猫にあると非難されるが・・・
 原典で有名(?)な「トチメンボー」と、
 猫が餅をのどに詰まらせて踊り廻るエピソードもここで出てくる。

「其の三 泥棒と鼻恋」
 "先生" の家に泥棒が入った。しかし、盗まれたのは木箱一つ。
 しかもその中身は山芋だった・・・
 実業家の金田氏の夫人、"鼻子" さん登場の巻。

「其の四 矯風演芸会」
 "先生" の家に出入りする変人たち、
 寒月、東風、迷亭らが参加する月に一度の「矯風演芸会」。
 しかしそれにはある秘密が隠されていた・・・

「其の五 落雲館大戦争」
 "先生" の家の裏手にあるのが落雲館中学。
 そこの学生たちが突如、野球の試合を始め、"先生" の家には
 連日、ボールが飛び込んでくるようになってしまった。
 しかし、その裏にはある "陰謀" が・・・

「其の六 春風影裏に猫が家出する」
 "先生" の飼い猫が突然姿を消してしまう。
 「僕」を含め、家人総出で探すうちに見つけた猫は・・・


もちろんパスティーシュとしても楽しいが、
登場するおなじみの面々に対して作者の抱く愛情も感じられる。


最後に一言。

原典を読んだ方なら覚えがあると思うんだが
あのラストはちょっとしたトラウマになってませんか?
そんな人はぜひ本書を読もう。
私は長年にわたる胸のつかえがおりた気分です。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-07-26 00:26) 

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