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ラブコメ今昔 [読書・恋愛小説]

ラブコメ今昔 (角川文庫)

ラブコメ今昔 (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: ペーパーバック



評価:★★★☆

タイトル通り、ラブコメ小説の短編集なのだが
普通のラブコメではない。
なぜならば、本書でラブコメを演じる方々が
みんな「自衛隊員」だから。
自衛隊といっても人間なのだが、その職場の "特殊性" ゆえに、
ひと味違う恋愛模様が垣間見える。


「ラブコメ今昔」
 習志野を本拠とする第一空挺団の隊長・今村二佐。
 ある日、彼の前に隊内広報誌『あづま』の記者を務める
 矢部千尋二尉と吉敷一馬一曹が現れる。
 『自衛隊員の恋愛と結婚について』をテーマに、
 今村に結婚当時のことを語ってほしいという。
 冗談じゃないとばかりに二人から逃げ回る今村だが、
 それをきっかけに妻との出会いの頃を思い巡らす・・・
 いやあ、昭和のラブ・ストーリーだねえ。こういうの大好きだ。

「軍事とオタクと彼」
 出張からの帰りの『のぞみ』車内で歌穂が出会い、
 意気投合した森下くんは、海上自衛隊の三曹。
 しかも戦隊ものと仮面ライダーとマンガとアニメを
 こよなく愛するオタクちゃんだった。
 しかし、めげない歌穂は(えらい!)
 順調に森下くんとの仲を深めていくのだが、
 中東地域で行われるPKO活動に森下くんが参加することに・・・
 歌穂さんにココロの広さに乾杯したくなる。

「広報官、走る!」
 政屋征夫一尉は、防衛省広報室勤務。
 現在は、軍事小説の大家の原作による、
 自衛隊が登場するSFドラマの撮影に協力している。
 撮影スタッフのAD・鹿野汐里と組んで連絡/調整を担当するが
 頻繁に変更されるスケジュールに二人はきりきり舞い。
 しかも、ディレクターが勝手に変更した台本が
 原作者の怒りを買い、撮影は中断してしまう羽目に。
 窮地に陥った汐里を救うべく、征夫は一計を案じる・・・
 この「軍事小説の大家」って福井晴敏がモデルだよねえ。
 
「青い衝撃」
 相田公恵の夫・紘司は航空自衛隊の花形、
 ブルー・インパルスのパイロットだ。
 毎回、大量の女性ファンに追いかけられる紘司だが、
 ある日、夫の制服の襟裏に隠された紙片を見つける。
 それは、見知らぬ女性から公恵に宛てられた "挑戦状" だった。
 その日から、夫の浮気を疑う日々が始まるが・・・
 自衛隊員にもストーカーがつく時代なんですねえ。

「秘め事」
 航空自衛隊第10飛行隊所属の手島岳彦二尉は、
 人に言えない秘密を持っている。
 それは、彼の直属の上官である
 水田三佐の娘・有季とつきあっていること。
 いつ上官に打ち明けるかタイミングを計っていた頃、
 事故で隊員の一人が命を落とした。
 葬儀に出席し、悲しみに暮れる遺族を見た水田三佐は宣言する。
 「俺の娘にだけは、こんな思いはさせない」
 いやあ、お父さんの気持ちはよ~く分かります。

「ダンディ・ライオン~またはラブコメ今昔イマドキ編」
 冒頭の「ラブコメ今昔」の前日譚。
 矢部千尋二尉と吉敷一馬一曹の馴れそめが綴られる。
  こちらは平成のラブ・ストーリーですね。

基本的にはラブコメで、みなハッピーエンドなストーリーなので
けらけら笑いながら読めるのだけど、
その底にはさまざまな "覚悟" が潜んでいる。

毎日が生命の危険と隣り合わせの生活を送る覚悟、
有事があれば死地へと飛び込んでいかなければならない覚悟、
そしてそういう家族を持ち、共に生きる覚悟。
本書に登場し、ドタバタ騒ぎを演じる恋人たちや夫婦も、
みなそれぞれの "覚悟" を背負っている。

本書は実はひと月前(3/6)に読み終わってる。
今回、この文章を書くためにもう一度手にとって
ページをぱらぱらめくっていたら、
いつのまにか夢中になって読みふけってしまった。
再読、三読に耐えるのも、ストーリーテリングの巧みさもあるけれど
上記のような "覚悟" をもったキャラクターたちが
たまらなく愛しく思えるようになるからだろう。


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mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-04-09 22:17) 

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