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陽だまりの彼女 [読書・恋愛小説]

こんなに長く書くつもりはなかったんだけど、
書いてるうちに自分でも驚くほどの長文になってしまった。
(まあ私にはよくあることだが)
なので、ご用とお急ぎでない方はどうぞ。

あと、下記の評価でも分かるかと思うが
この作品が大好きだ、って人にとってはオモシロクナイことを書いてる。
そんな人は、この記事(特に後半)は読まないことを推奨する。


 


陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

  • 作者: 越谷 オサム
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/05/28
  • メディア: 文庫



評価:★★

文庫カバー裏面の惹句には「完全無欠の恋愛小説」。
帯裏面には「泣ける」「泣ける」の読者の声が満載。
その下には大きな活字で
「"二度泣ける" 再会ラブストーリー」とある。

ここまで書かれたら期待してしまう反面、
涙が止まらなかったらどうしよう、なんて読む前から心配してしまった。
もともと涙腺のユルいたちなのに加えて、
歳とったせいかさらに涙もろくなってきてるし。

というわけで、読んでみたんだが・・・


上の評価でも分かるかと思うのだけど、
結論から言うと、私は全く泣けなかった。

期待が大きすぎたのがいけなかったのかなぁ・・・

まずはストーリー紹介から。

中学1年の渡会真緒は「学年有数のバカ」だった。
何せ分数も小数もできないし漢字も書けない。
当然のように周囲からはいじめの対象になっていた。

同級生の奥田浩介は、ある日たまたま
真緒をいじめていた女子をやり込めてしまう。
ところがその方法が、かなり常軌を逸していたため
周囲から「キレる子」認定をされてしまうことに。

ということで「いじめられっ子」と「キレる子」は
なんとなく二人で行動するようになっていく。
当然のことながら浩介に懐いてくる真緒。
浩介は彼女に対して複雑な感情を抱きながらも、
真緒に勉強を教えるようになっていく。

しかしそんな関係も、中3の1学期に浩介が転校することになり、
終わりを告げることになる。

そして10年後。
広告代理店で働く浩介は、クライアントとの打ち合わせの場で
バリバリのデキるキャリアウーマンへと変貌した真緒と再会する。

真緒の華麗なる変身ぶりに驚愕する浩介。
しかし、彼女と組んで仕事を進めていくうちに、
素晴らしく魅力的な女性となった真緒にどんどん惹かれていく。
真緒もまた浩介の思いに応え、二人は急速に距離を縮めていく。

やがて真緒との結婚を決意する浩介だったが、
彼女の両親は反対する。それは、真緒自身が抱えている、
ある「事情」のためだったのだが・・・
(真緒が「バカ」だったのも、それが原因。)
浩介はその「事情」を知らされ、戸惑いはするが真緒への愛は揺るがない。
反対を押し切って家を出た真緒は浩介と入籍し、
二人はマンションの一室で新婚生活をスタートさせる。

ここまでが「起承転結」でいうところの「起」。

続く「承」では、二人のベタ甘な新婚生活が語られる。
もう読んでいる方が恥ずかしくなってしまうくらい、
バカップルさ全開である。
真緒というキャラは、仕事ではバリバリだが、
私生活ではよく言えば自由奔放、悪く言えば気まぐれで、
ちょっぴり「不思議ちゃん」が入ってる。
毎日毎日、浩介は彼女に振り回されっぱなしなんだが
そこは惚れた弱みで、もう真緒に首ったけな様子が綴られていく。
もちろん、これは後半への伏線でもある。


そして「転」では、すこしずつ二人の生活に影が差していく。
といっても二人の仲が悪くなったりとかではない。
いつまでも続くと思っていた今の幸福な生活が、
実はそうではないのではないか・・・という不安が描かれていくのだ。

ここから先は、ネタバレに近いことを書くので、
未読の人はご注意を。

「転」まで来た読者は、
このあと二人に降りかかってくる(であろう)難局がどんなものか、
いろいろ想像を巡らせるだろう。

私も何パターンか予想してみた。

そして最後はその危機を二人が乗り越えて終わるのだろう、とも思った、

だってカバー裏の惹句には
「前代未聞のハッピーエンドへ向けて走りはじめる!」
って書いてあるんだもの。
この本はハッピーエンドです、って最初から宣言してるんだよ。

ならば「結」はどうだったか。

この結末はたしかに前代未聞で、もちろん予想外、
というより予想を大きく裏切るものだった。
いい意味で「予想を裏切られる」のは快感だが、
この結末が私に与えたものは「戸惑い」だった。

なんだろう。上手く言えないんだが
たとえばフランス料理の名店に行く。
そこでフルコースの料理を堪能していて、
いよいよメインディッシュの登場。
しかし蓋を開けてみたら、そこにあったのは北京ダックだった、
みたいな感じ。

北京ダックだって高級料理には間違いないんだけど
フランス料理の締めに出てきたら驚くだろう。

この物語の結末の印象は、これに近い。
(書いてて思ったがこれでは何のことか分からないね。)


前半から中盤へかけて、主役の二人が、
どんなに一所懸命で、どんなに相手に対して誠実で、
そしてどんなに深い愛情を相手に抱いているのか。
それが痛いほどよく分かる描写が続く。

中学時代の2年あまりの間、
周囲から孤立した者同士、身を寄せ合うように生きてきて、
再会後は、空白だった10年間を埋めるように
思い出を重ねて生きていく二人。

この中盤までの展開はホントよくデキてると思うのに。

そんな二人に対して、この結末はないだろう。


男と女の間で、何をもってハッピーエンドとするのか。
その答えはカップルの数だけあるだろう。
しかし少なくとも、
これは真緒と浩介の望んだ結末ではないだろうし、
これを "ハッピーエンド" とは呼ぶのは
いささか無理がありすぎるんじゃないのか。

最後にちょこっと "救い" みたいな部分もあることはあるけど、
逆に切なさが増してしまうよ・・・

  もちろん、この結末に感動して滂沱の涙を流す人もいるだろうし、
  それを否定するつもりもない。この評価はあくまで私の感覚。

もう一度、すべてを知った上で頭から読み直すと
また違った感想が浮かぶかも知れないんだが、
少なくとも今は、というか
二度と読み直そうという気にはならないなぁ。

最後に余計なことを2つ。

ひとつめ。

文庫の帯の表面には「映画化」の文字が。
去年の秋に映画が公開されたんだね。残念ながら未見だけど。
真緒役は上野樹里。
誰がキャスティングしたのかは分からないけど
この配役は絶妙にして完璧だと思う。
実際に映画の中で、上野樹里が
どんなふうに真緒を演じているかは知らないが
小説を読んでいる限りでは、
作者が当て書きしたんじゃないかっていうくらい、
真緒のイメージは上野樹里と重なる。
帯に載ってる彼女の写真を見たせいか、本書の冒頭から
真緒の台詞が上野樹里の声で脳内再生されてしまったよ。
YouTube で映画の予告編を見てみたんだけど、
上野樹里さん、キレイだねえ。
松本潤もがんばってるとは思うんだけど、
いまひとつ浩介のイメージじゃないなあ。
もっと垢抜けない人でないと。
私の脳内映像では濱田岳なんだが。


ふたつめ。

読み終わった後、つらつら考えてみた。
この物語に似たモチーフの作品って、日本の民話にもあるんだけれど、
私が真っ先に連想したのは、
世界的に有名な海外作家さんが書いた童話かな。
日本でいちばん有名な劇団が、
結末を改変してミュージカルにしてるアレ。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-08-12 00:37) 

mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-08-12 20:52) 

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