SSブログ

演奏しない軽音部と4枚のCD [読書・ミステリ]

演奏しない軽音部と4枚のCD (ハヤカワ文庫 JA タ 13-1)

演奏しない軽音部と4枚のCD (ハヤカワ文庫 JA タ 13-1)

  • 作者: 高木 敦史
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

ヒロイン・楡未來(にれ・みらい)の境遇はなかなか複雑。
母は幼い頃に他界し、父は借金を作って蒸発した。
そしていまは祖父母のもとで暮らしている。
とは言っても本人はけっこう頑張って生きていて、
通っている高校は県下でも有数の進学校。
でも、経済的な面から大学進学は難しそうだ。

そんな彼女の身の回りに起こった4つの事件を描くミステリ連作。


「DISC1 ザイリーカ」
高校1年生の秋。未來の叔母が亡くなった。
CDショップを営んでいた彼女が未来に残したのは4枚のCD。
叔母がこのCDを残した理由を探るため、軽音部の部室を訪れた未來は、
そこで「演奏しない」「聴くのが専門」という部員・塔山雪文と出会う。

「DISC2 コンタルコス」
未來が属する文芸部の先輩にして部長の廿日市(はつかいち)妙子。
彼女の書いた小説が、文学賞の最終選考に残ったという。
しかし、その作品に盗作の疑いがあることを知った未來は、
塔山くんの助けを借りて妙子に不正を認めさせようとするが・・・

「DISC3 無限大の幻覚」
未來の親友である軽音部員・熱川真由。
彼女が部室に置いて帰ったギターが、翌朝何者かに壊される。
塔山くんが犯人捜しに乗り出すが、さらにその翌日、
無人のはずの早朝の部室から大音量のギターが鳴り響く・・・

「DISK4 ハートに火をつけて」
二学期の終わりも近い避難訓練の日、校内でぼや騒ぎが起こる。
たまたま現場に居合わせた未來に、放火の疑いがかかる。
塔山くんが解き明かしたのは、発火トリックのみならず、
20年前から続く因縁だった・・・

作品中の随所に、塔山くんの音楽についての "蘊蓄" が語られ、
それが事件の解決に結びついていく。
あいにく私はその方面の知識には疎いので、
単純に「へぇ~」としか言えないんだが・・・


4つの連作短編であるが、「DISK4」まで読むと
全体を通して、本筋とは別のもう一つの物語が浮き上がってくる。


ミステリがメインではあるものの、
未來と塔山くんとのラブコメとしても楽しく読める。

「DISK1」ではお互い初対面ということもあって、
相手の出方を探りながらの他人行儀な場面が多いが、
物語が進むにつれてすっかり打ち解けていく。

特に未來のキャラの変化が面白い。
作中でも言及されているけれども、
(たぶん境遇にも遠因があるだろうが)
最初は「クールビューティ」と周囲からは思われていた。
それが「DISC2」以降は、慌てん坊でコミカルなドジキャラに。

エピローグで披露されるバカップルぶりも、微笑ましい。

読後感も爽やか。
とても楽しく読ませていただいた。


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 1

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-03-31 23:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0