時が新しかったころ [読書・SF]
評価:★★★☆
創元SF文庫で既刊の
「時の娘 -ロマンティック時間SF傑作選-」に収録の
同題の短編を長編化したもの。
ヤングという作家さんは基本的に短編型で、長編は5作しかない。
その長編群も、「たんぽぽ娘」(河出書房新社)巻末の
伊藤典夫氏の文章によると、総じて高い評価ではないようだ。
とはいうものの、前出の短編はたいへん面白かった。
このブログでも過去に読書記録の記事を書いていて
私は「この作品だけなら★4つ」なんて書いてる。
長編版があると聞いて「たしかに短編にしておくには惜しい話」とも。
私と同じことを思った人は多かったようで、
このたびの長編版の出版となったようだ。
恐竜時代であるはずの白亜紀後期の地層から、
人間の化石が発見される。
主人公のカーペンターは、北米古生物学協会の調査員。
しかし、7405万1622年の時を遡った彼が見つけたものは、
イチョウの木の枝に並んで腰掛けている女の子と男の子だった。
姉はディードレ、弟はスキップと名乗り、
二人はこの時代の火星の王女と王子で、
誘拐犯に拉致されて地球に連れてこられたのだという。
折しも、二人を追ってプテラノドン型の飛翔機が現れ、
カーペンターは二人を連れて逃げ回ることになる・・・
短編版では、太古の火星に地球人と同種の人間がいる理由は
明確には説明されてなかったように記憶している。
この長編版では "クー" という超越的な知性体が、
火星と地球に人類を "播種" したことになっているらしい。
私は、カーペンターの時代よりさらに未来の人類の一部が
過去の火星に移住したんじゃないかって思ってたんだけどね。
まあ、物語の本筋には関係ない部分ではあるが。
おおまかなストーリーは短編版と変わっていない。
カーペンターの駆る、トリケラトプス型のタイムマシン・ "サム" が
タイムボカンばりの大活躍を見せる序盤から、
7000万年と7000万キロという時空を超えた愛を成就させる
ヤングお得意の離れ業が炸裂するラストまで、堪能させてもらった。
読む前から「あまり評判が芳しくない作品だ」って
予備知識があってハードルが下がっていたせいかも知れないけど、
私はけっこう面白いと思ったし、充分に楽しんで読んだ。
独立した長編SFとして評価するなら、
物足りなさを感じる人もいるかも知れないが、
ヤングのファンからすれば、気にならないんじゃないかなあ。
ヤング独特の "ほのぼの感" みたいなものが全編にあふれていて
それを長編で味わえるのだから・・・
私は好きだよ、この雰囲気。
短編版を読んでいたので、ラストのオチがわかっているぶん、
ワクワク感に乏しかったのは認めるけどね。
短編版を未読の人がどう評価するかは気になるところだ。
巻末の「訳者あとがき」によると、
「時を生きる種族 -ファンタスティック時間SF傑作選-」収録の
「真鍮の都」の長編版も刊行されるらしい。
またひとつ楽しみが増えましたね。
makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-03-31 23:13)