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カエルの小指 a murder of crows [読書・ミステリ]


カエルの小指 a murder of crows (講談社文庫)

カエルの小指 a murder of crows (講談社文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/02/15
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

 長編『カラスの親指』の続編。ストーリー的にはつながりはないのだけど、前作のキャラが大挙して登場するので前作を読んでおいたほうが楽しめるのは間違いない。まあ、本書を手に取る人は、ほとんどが前作を読んだ人だろうけど。

 前作からおよそ10年。詐欺師だった武沢は足を洗い、実演販売士になっていら。
 実演販売とは、街頭や店頭などの往来の前で実際に商品を扱ってみせ、集まった客に商品を買ってもらうという販売形態のこと。それを演じているのが実演販売士だ。通販番組なんかでもよく見かける、あれだ。

 そんなとき、武沢の前に現れた女子中学生・キョウは、実演販売を教えてほしいと言い出す。
 TV番組『発掘!天才キッズ』に出たいのだという。出演すれば1万円、優勝すれば20万円の賞金がもらえる。要するに金がほしいのだ。

 シングルマザーだったキョウの母親が悪質な詐欺被害に遭い、ホームセンターの3階から身を投げてしまったのだという。
 母親をだました詐欺師はナガミネと名乗っていた。彼を見つけるために探偵を雇いたい。その資金を得るためのTV出演なのだと。

 そして彼女の話を聞くうちに、武沢はキョウの母親と15年前に出会っており、”ある因縁” があったことを知る。

 前半は、実演販売の特訓を通してTV出演を目指すキョウの姿が描かれる。
そして後半では、キョウの母を陥れた詐欺グループに対して報復の ”ペテン” を仕掛けるべく、一度限りの ”現役復帰” をする武沢と、彼に協力するかつての詐欺仲間たちの活躍が描かれる。

 とはいっても、詐欺がテーマであるから、欺し/欺されが本書の根幹。そのための伏線も冒頭から随所に仕込まれていて、物語は二転三転、いやいや四転五転もしていく。
 その ”ひっくり返り” ぶりもまたとっても鮮やか。だんだん ”欺される快感” すら感じるようになってきたよ(おいおい)。流石の道尾秀介だ。

 前作のキャラたちも10年経って変化している。彼ら彼女らの再登場も嬉しいのだけど、なんといっても本作のヒロイン・キョウちゃんのキャラ立ちぶりが群を抜いている。
 中学生とは思えないほど、海千山千のはずの元詐欺師のオッサン・武沢を翻弄してみせる。終わってみれば本書は、徹頭徹尾、彼女の物語だったのが分かるのだが、読後感は爽やか。

 楽しい読書の時間を過ごすことができました。



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