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TANG [映画]



 デボラ・インストール原作の長編小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の映画化。舞台をイギリスから日本に置き換え、日本人キャストで描いている。
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 原作小説については2019年2月13日に記事を書いている。
 この記事をベースに、この映画の感想めいたものを書いてみる。


 時代は近未来。人型ロボットが街や施設内を闊歩し、ドローンが物流の主役となっているようだ。
 主人公夫妻が住んでいる街は、広々とした敷地にけっこうな豪邸が立ち並ぶ、それこそハリウッド映画に出てきそうな高級住宅地。

 はて、日本にこんな場所あったかな・・・と思ったが、製作がワーナー映画なので「日本人キャスト部分だけあとで外国人俳優の演じたものと差し替えて、ハリウッド版を作っちゃうじゃないだろうか」なんて邪推もしてしまった(笑)。
 ちょっと後で、ここが北海道に設定されてることが明かされますが。

 ちなみに映画の中盤では、舞台が中国の深圳(しんせん)に移るのだけど、ここも実に華やかに描かれていて、科学技術についても先進都市ぶりが強調されてる。このあたり、中国での公開を睨んでのことかなと邪推したり。

 うーん、邪推ばっかりですね。ちょっと反省。


 絵に描いたような幸福な新婚生活だったはずが、夫の健(二宮和也:原作ではベン)が ”ある理由” から研修医の道を放り出し、ひきこもりのニート状態になってしまう。
 日夜ゲームに明け暮れて、弁護士として働く妻・絵美さん(満島ひかり:原作ではエイミー)のヒモ状態に。というわけで彼女の中に不満が鬱積していく。

 そんなある日、健は庭先に迷いこんだ一体のロボットを発見する。いかにもあり合わせの部品を集めて作ったような、見るからにポンコツな外見。”彼” は自らを「タング」と名乗るが、どこから来たのかは答えない。

 そんな矢先、とうとう絵美さんは健に愛想を尽かし、彼はタングともども家から追い出されてしまう。なんとかタングを厄介払いしたい健は、タングを作ったと思しき大手ロボット製作会社を訪ねていくのだが・・・


 2019年の記事には、私はこんなことを書いている。

「これは、タングとの間の ”疑似親子関係” を通じた、ベン(健)の ”父親修行” の物語だ」
「『子育ては自分育て』。はじめから立派な親はいない。子どもを育てながら、自分も親になっていくものだ」

 タングは学習型AIを搭載しているらしく、健とのやりとりを通じてだんだん人間ぽい受け答えを覚えるようになっていく。
 最初はタングを嫌っていた健も、タングの ”成長” に伴い、だんだん愛着を覚えるようになっていく。

 その記事の中では、こうも書いている。

「タングと共に旅を続けるうちに、タングの保護者としての自覚と行動を身につけていき、ベン(健)はだんだんと ”父親” らしく振る舞えるようになっていく」

 この健の成長こそが原作のメインテーマで、映画もしっかりそこのところは押さえて作られている。

 しかし、大筋においては原作通りでも、細かいところはけっこう改編されている。

 いちばん大きいところは、ベンの妻・エイミーの描き方だろう。
 原作での2人の仲は、けっこうドロドロしてる部分もあったのだけど、映画ではそのあたりは一掃され、満島ひかりさん演じる絵美は、可愛らしく健気な奥さんとして描かれる。
 こんなよくできた嫁さんを、悲しませるポンコツ男を二宮和也が演じてる。映画前半の健は、ホント感情移入できない ”嫌なヤツ” と感じさせる。なかなか好演といえると思う。

 原作での夫婦の描き方のほうが今風でリアルなのかも知れないが、夏休み公開のファミリー映画としてみるなら、この改編は必須で、かつ正解だったと思う。

 それ以外でも、タングを付け狙う ”悪党たち” に、かまいたちの2人+小手伸也を起用してるのも、ファミリー向け映画感を醸し出している。


 2019年の記事では、最後の方にこんなことを書いてる。

「総体的にSF的雰囲気は薄いかな。アシモフのロボットものみたいな作品を期待するとあてが外れるが、”親子” の情愛物語としてみれば、ベタな展開だけど手堅く読ませる」

 映画の評価も、ほぼこのまま。終盤の展開はだいたい予想がついてしまうんだけど、それが大多数の観客が望むエンディングだろう。
 そのあたりに物足りなさを感じる人もいるかも知れないけど、小さいお子さん連れの家族や、若いカップルには楽しめる映画になってると思う。



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