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帝都探偵大戦 [読書・ミステリ]


帝都探偵大戦 (創元推理文庫 M あ 9-8)

帝都探偵大戦 (創元推理文庫 M あ 9-8)

  • 作者: 芦辺 拓
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/01/27
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

 小学校の頃に読んだ「ルパン対ホームズ」。それぞれ作者が異なるので、本来共演は出来ないはずのキャラクターたちが一つの作品に出演する。
 いわゆる ”夢の顔合わせ” というものだが、その超拡大版が本書だ。なんと総勢50人に及ぶ ”名探偵たち” が登場する。まさにオールスター・ゲームだ。


「帝都探偵大戦 黎明編」
 舞台は江戸時代。ここで登場するのは捕物帖の主人公たち。
 銭形平次(野村胡堂)、若さま(城昌幸)あたりは、創元推理文庫の時代劇ミステリ集で読んでるのでなじみはあるものの、それ以外はほとんど知らない。
 でも、かつてのTVドラマとかで名前だけなら知ってるキャラもいる。銭形平次は言うまでもないが、三河町の半七とかむっつり右門あたりもドラマになってる。現代でこそ希少だが、昔は時代劇はTVでよく放映されていたから。

「帝都探偵大戦 戦前編」
 意外と、江戸時代よりこちらの方がなじみのないキャラが多い。TVドラマにもならなかったし(なってたかも知れないけど、少なくとも私は知らない)。
 小栗虫太郎、海野十三、甲賀三郎、浜尾四郎、大阪圭吉、久生十蘭、木々高太郎。このあたり、作者名は知ってるんだが、彼らが創造した探偵さんまでは知らないんだよねぇ・・・

「帝都探偵大戦 戦後編」
 ここまで来ると、やっと私の ”ホームグラウンド”(笑) の時代のはずなんだが・・・。神津恭介(高木彬光)、明智小五郎(江戸川乱歩)とかのビッグネームは多くの人が知ってるだろうけど、それ以外のちょっとマイナーな探偵さんが、それも私が知らないキャラがわんさか出てくるんだよねぇ・・・。作者の博識には恐れ入るばかり。

 ちょっと脇道にそれるが、辛うじて加賀美啓介(角田喜久雄)は知ってたよ。何故かというと、親父の蔵書の中に『高木家の惨劇』があったから。読んだのは中学3年か高校1年の頃だったかな。
 ちなみに、その横には『悪魔の手毬唄』(横溝正史)があって、実は私の ”初横溝” ”初金田一” はこれ(あ、マンガ版『八つ墓村』[作画:影丸譲也]のほうが先だったかな?)。
 さらにその横には『化人幻戯』(江戸川乱歩)もあった。これは思春期の男子にはちょっと刺激が強かったなぁ(笑)。
 親父が読む本はほとんど時代小説ばっかりだった記憶があるんだが、こうしてみるとけっこうミステリも好きだったのかも知れない。

閑話休題。

 さて、3編合計で50人もの名探偵が出てくるんだが(巻末に「名探偵名鑑」としてまとめてある)、主役ばかりの物語には欠点もある。だってそれぞれのキャラに見せ場を作らないと、それぞれのファンが怒るだろうし。そのへんはかなり苦労したのだろうと思われる。例えば「黎明編」では、事件解決の場に名探偵たちが総集合して、リレー形式で謎解きをしていく。豪華ではあるがバランスという面ではいささか苦しい。

 まあ、プロ野球のオールスター・ゲームが、純粋に野球の試合として見たらどうなのか、評価はまた別の話であるように、本書のミステリとしての評価はまた別だろう。名探偵たちの共演を楽しむ ”お祭り” だと割り切れば、値段分の価値は十分にあると思う。


 巻末には「黒い密室 ー続・薔薇荘殺人事件ー」が収録されてる。
 これは鮎川哲也のパスティーシュ作品なんだけど、ちょっと内容紹介が難しいかな。鮎川哲也ファンなら大喜びの一編だとだけ書いておきます。



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