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コワルスキーの大冒険 クラッシャージョウ別巻3 [読書・SF]


コワルスキーの大冒険 (ハヤカワ文庫 JA タ 1-30 クラッシャージョウ 別巻3)

コワルスキーの大冒険 (ハヤカワ文庫 JA タ 1-30 クラッシャージョウ 別巻3)

  • 作者: 高千穂 遙
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2022/02/02
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

 1977年から始まった、日本初の本格スペース・オペラ「クラッシャージョウ」シリーズ。その番外編だ。

 主役となるのは連合宇宙軍大佐・コワルスキー。
 正編第3巻『銀河系最後の秘宝』のラストで、乗艦である重巡洋艦「コルドバ」ともども、ブラックホールに飲み込まれて消滅するという最期を遂げていたはずなのだが・・・

 『銀河-』の刊行が1978年、本書が2022年。なんと44年ぶりにコワルスキーが ”帰ってくる” ことになった。


 ブラックホールに飲み込まれる寸前、一か八かのワープを行ったコルドバは、いずことも知れぬ宇宙空間に出現する。

 艦は大きく損傷し、動力もほとんど失うが、辛うじて最近傍の恒星系へ漂着することに成功する。そこに地球型の惑星を発見したコワルスキーは、艦を捨てて乗員183名全員で惑星へ降下することに。

 そこには先住民がいた。”クルセイダーズ” と名乗る新興宗教の信者たちだ。文明否定を教義とする彼らは、銀河連合から惑星ヌルガン(コワルスキーたちが漂着したこの星)を与えられ、そこに強制移住させられていたのだ。

 全員無事に降下を果たしたコワルスキーたちだったが、その直後にクルセイダーズに捕らえられ、幽閉されてしまう。

 しかしそこに、クルセイダーズたちの集落を襲う集団が現れる。

 それは、大宇宙海賊団ゴーマン・パイレーツのナンバー・ツーであるジェントル・リリーとその戦闘部隊だった。
 ”ある事情” で惑星ヌルガンへの不時着を強いられた彼女は、サバイバルのために住民からの略奪を開始したのだ。

 宇宙海賊こそ連合宇宙軍にとっての不倶戴天の敵。しかも目の前で民間人が襲われている。コワルスキーはクルセイダーズと協力し、部下たちとともに敢然とジェントル・リリーに立ち向かうのだが・・・


 往年のファンとしては、コワルスキーの生存が何よりうれしい。映画版(1983年)では登場したけど、あれはパラレルワールドの話だからね。

 徒手空拳の身でありながら、宇宙海賊に戦いを挑むコワルスキー。行動や指示も的確、勇敢かつ迷いをみせない。指揮官としてはとても有能だ。そして部下たちもまた、よくそれに応える。まさに勇将の下に弱卒無し。
 命をかけて民間人を守る彼らのその姿はまさに軍人の鑑、公務員の鑑(笑)。

 映画版ではコワルスキーのCVを、今は亡き納谷悟朗さんが演じていたのを思い出す。脳内でコワルスキーの台詞を納谷さんの声に変換して読むのは、至福のひとときだったよ。

 戦いも終盤にはかなりスケールアップしていき、まさに「コワルスキーの大冒険」となっていく。

 そしてラストには、シリーズのファンにとってもサプライズが。とはいってもこれは読んでいけば大体見当はついてしまうんだけど。
 というか、”これ” が書きたかったのでコワルスキーを登場させたのかも、って勘ぐりたくなる(まさかね)。

 ちなみに Wikipedia の「クラッシャージョウ」の項目には、本作ラストのネタバレがしっかり載ってるので、事前に読まないようにしましょう(笑)。



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