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短編ミステリの二百年4 [読書・ミステリ]


短編ミステリの二百年4 (創元推理文庫)

短編ミステリの二百年4 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/12/21
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

 短編ミステリの歴史を俯瞰するアンソロジー、全6巻の4巻目。

 本書には13編を収録。

「争いの夜」(ロバート・ターナー)[1956]
 酒場で飲んでいた ”おれ” と友人のマックス。そこに見知らぬ男が絡んできて、マックスと壮絶な殴り合いに。その行き着く先まで描いて、それだけで終わる。

「獲物(ルート)のL」(ローレンス・トリート)[1964]
 廃車置き場で弾痕のあるホイールキャップを見つけたミッチ刑事。そこで出会った子どもが、強盗事件の犯人にそっくり。子どもを警察署に連れてくるが、廃車置き場の支配人が「うちの子だ」と言い出す・・・

「高速道路の殺人者」(ウィリアム・P・マッギヴァーン)[1961]
 高速道路パトロールの警官オリアリー。ハイウェイ沿いのレストランのウエイトレスと恋仲だ。そこへ殺人者が現れ、警察隊と追いつ追われつが始まる。こいつがけっこう賢くて、オリアリー(警察)との知恵比べの様相も。

「正義の人」(ヘンリィ・スレッサー)[1962]
 マッケルヴィは退職警官だが、かつて担当した強盗事件に未だこだわっていた。犯人とにらんだ男がいたのだが、被害者の女性は苛性ソーダを顔にかけられ視力を失っていた。しかし、名医の治療で視力を取り戻す可能性が出てきた・・・

「トニーのために歌おう」(ジャック・リッチー)[1965]
 兄・トニーが人を殺した。弟の ”ぼく” は、兄を死刑から救うために、州知事の息子を殺人の共犯者に仕立てて逮捕させる。州知事が ”政治力” を発揮して減刑させることを期待したのだが・・・

「戦争ごっこ」(レイ・ブラッドベリ)[1943]
 子どもの頃、戦争ごっこに夢中だったジョニー。成長し、現実の戦場に放り込まれても、彼の心は ”ごっこ遊び” の世界の中にあった。そして彼は、なぜか幾多の戦場から生還し続ける・・・

「淋しい場所」(オーガスト・ダーレス)[1948]
 子どもの頃、”わたし” は町へのお使いが恐ろしかった。帰り道に途中に、暗くて ”淋しい場所” があったから。そこには ”何か” がいるのだ・・・

「獲物」(リチャード・マシスン)[1969]
 母親の束縛から逃れたいアメリア。電話で母親に辛く当たった夜、異変が起こる。恋人の誕生日のために買った人形が動き出し、アメリアに襲いかかってきたのだ・・・。こんな映画があったような気が。

「家じゅうが流感にかかった夜」(シャーリィ・ジャクスン)[1952]
 夫婦と3人の子ども(うち一人は赤ん坊)、そして犬一匹の家族。彼らみんなが流感にかかり、寝苦しい一夜を過ごす。寝付けないままに布団や枕を持ってふらふらと家中を彷徨う様子を描く、それだけ。とにかく広い家で羨ましい(笑)。

「五時四十八分発」(ジョン・チーヴァー)[1954]
 秘書を一夜の情事の後に解雇したブレイク。クビになっても彼女は手紙や電話でブレイクに接触しようとしていたが、彼は全て無視。ある日、列車に乗ろうとしたブレイクは彼女に出くわす。どうやら直接会いに来たようだ・・・

「その向こうは――闇」(ウィリアム・オファレル)[1958]
 高級アパートに暮らす資産家の老婦人ミス・フォックス。ある日彼女は強盗に遭いダイヤの指輪を奪われてしまう。アパートのエレベーターボーイのエディを疑う彼女は、警察に彼が犯人だと告げてしまう・・・

「服従」(レスリー・アン・ブラウンリック)[1963]
 第二次大戦中、フランス人の娘の ”わたし” が暮らすアルジェリアの村に、ドイツ軍人フォルクマルが現れ、村は占領されてしまう。フォルクマルに協力する ”わたし” は、次第に彼に惹かれていくのだが・・・

「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」
   (マージェリー・フィン・ブラウン)[1970]
 ごめんなさい。私にはこの作品を理解できるだけの知性がありません。


 うーん。前巻でミステリ度が上がったって書いたけど、この巻では下がってしまったと思う。

 ミステリとして面白いと思ったのは「獲物(ルート)のL」「高速道路の殺人者」の2編。「高速-」はサスペンスとしても秀逸。

「争いの夜」はバイオレンス小説。
「トニーのために歌おう」「五時四十八分発」「その向こうは――闇」「服従」はサスペンス。「五時-」はホラーに入れてもいいな。
「正義の人」はサスペンスというよりは警察(警官)小説。
「戦争ごっこ」はファンタジーだね。さすがはブラッドベリ。
「淋しい場所」「獲物」はホラー。
「家じゅうが流感にかかった夜」はユーモア小説として読んだ。

「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」
これ、ホントに分かりません。ていうか、分かる人いるのかなぁ。

 このシリーズ、あと2巻なんだけど、一体どうなるのでしょうか。
 ミステリ以外(と私が感じる)の作品でも、だいたいは面白く読めてきたのだけど、今回の「リガ-」を読んだら、私と編者の方とでは根本的に基準が違う気がしてきて、ちょっと心配です。



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