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彼方のゴールド [読書・その他]


彼方のゴールド 千石社シリーズ (文春文庫)

彼方のゴールド 千石社シリーズ (文春文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/07/07
評価:★★★☆

 まず書いておくが、私はスポーツが不得手だ。
 不器用なので球技はからっきし。小学校の昔から、かけっこで上位に入ったためしがないくらい足も遅い。水泳は平泳ぎで25mプールを何とか泳ぎ切れるかどうかというレベル。辛うじてスキーは人並みくらいには滑れるかな。たいていのコースは何とか転ばずに降りてこられるから。とはいっても、もう15年くらい行ってない。

 そのせいか、スポーツ中継にもあまり思い入れがない。オリンピックはそれなりに観るし、日本人がメダルを取れば嬉しいとは思うけど。
 現在、甲子園では高校野球まっさかり。球児たちの熱闘ぶりには頭が下がるけど、その一方でいろいろな ”邪念” が湧いてきてしまうんだよねぇ・・・いや、 ”邪念” というと角が立つね。”素朴な疑問” としておきましょう。
 その内容をここに書き出すと、熱烈な高校野球ファンから袋だたきにされてしまうだろうから、ナイショにしておきますが(笑)。

 閑話休題。

 本書は、そのスポーツをテーマにした小説だ。上に書いたように、スポーツに疎い私が、なんでこの本を読んだのか。
 まあ、好きな作家さんの本だというのが大きいかな。その作家さんが、スポーツという題材をどんな風に描いたかも興味があったし。

 本作は総合出版社・千石社を舞台にしたシリーズの4作目。とはいっても各作品は独立していて主人公も異なるので、本書から読み始めても全く問題ない。


 主人公は入社3年目の目黒明日香。営業部から異動になった先は総合スポーツ雑誌「Gold」編集部。

 ちなみに千石社のモデルは文藝春秋社(本書は文春文庫刊)。「Gold」のモデルは「Sports Graphic Number」だそうだ。

 記者としては新米ながらも、明日香はバドミントン、プロ野球、マラソン、女子バスケット、Jリーグと、スポーツ選手たちへ取材し、記事に仕立て、誌面を通じて読者へ伝えていく。
 読者は、一冊のスポーツ雑誌が完成するまでに、記者以外にも多くの ”その道のプロ” が関わってることを知ることになる。その一連の流れを追っていく ”お仕事小説” の面がある一方、明日香自身の物語も描かれていく。

 小学校の頃、スイミングスクールに通っていた明日香。彼女自身にとっては習い事のひとつでしかなかったが、一緒に通う仲間には、選手コースに入って本格的に競泳に取り組んでいる者もいた。
 彼ら彼女らが描く究極の夢はオリンピック出場、そして金メダルだ。

 結果のタイムに泣き、笑い、喜び、悔しがり。選手たちの間には時に激しい軋轢まで生じる。それでも上を目指して諦めずに挑み続ける。しかしその一方で、競技から離れていく者もいる。その理由もまた様々。

 物語の序盤では回想で綴られるのだが、中盤以降、明日香はそのときの仲間たちと再会していく。そして、意外な現在の姿も知ることに。


 冒頭にも書いたように、私はスポーツというものにさほど思い入れのない人間なのだけど、「スポーツを伝える」ということの ”目的” というか ”意義” は分かったように思う。
 明日香の視点から描かれる物語はとても興味深く、けっこう楽しく読ませてもらいました。



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