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もしかして ひょっとして [読書・ミステリ]


もしかして ひょっとして (光文社文庫)

もしかして ひょっとして (光文社文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/09/13

評価:★★★


 日常の謎系ミステリを6編収録した短編集。

* * * * * * * * * *

「小暑」
 赤ん坊の那々美(ななみ)を抱いて東海道線の下り電車に乗った "私"。子どもをきっかけに、向かいに座った老婦人との間で会話が始まる。それは60年前、老婦人の兄が医学生だった頃に起こった "女性問題" の話だった・・・
 どこがミステリなのかな、と思っていたら、ラスト近くで「そこだったか!」
 でもまあ、分かってみれば老婦人があの話題を出してきたのも理解できるし、最後の "私" の心境の変化につなげる流れも上手い。


「体育館フォーメーション」
 県立南高校の男子バスケット部の内部で、最近パワハラの嵐が吹き荒れているという。2年生の酒々井(しすい)による、練習中の1年生への罵声や恫喝が目に余り、他の部の練習にも差し支えているらしい。
 苦情を持ち込まれた運動部担当の生徒会役員・荻野研介(おぎの・けんすけ)は、調査を始めるのだが・・・
 ミステリとしてのオチもきちんとつくのだが、登場してくる他の運動部の部長たちがみなユニークなキャラなのも楽しい。


「都忘れの理由」
 ”私” は84歳の元大学教員。15年前から紀和子(きわこ)さんという家政婦を頼んでいる。5年前に妻を亡くしてからは、紀和子さんに生活全般の世話をしてもらっている。
 しかしその紀和子さんが突然辞めてしまう。でも理由は何も思い当たらない。家事については無能力者な "私" はほとほと困ってしまい、彼女に会いに行こうとするのだが・・・
 原因は些細な行き違いなのだが、当人にとっては重大事なのはよくあること。"私" の家事音痴ぶりは面白いのだが、自分を振り返るとあまり笑えない。
 まあ、私の方が "私" より少しはマシだとは思うのだが。


「灰色のエルミー」
 人材派遣会社で働く永島栄一(ながしま・えいいち)は、高校時代の友人・佐田美鈴(さだ・みすず)から飼い猫のエルミーを預かった。家を空ける用事があるのだという。
 しかし美鈴は交通事故に逢い、意識不明の状態になってしまう。「猫を預かることは誰にも言わないで」と彼女に云われたことから、事故の裏に何らかの事情を感じた栄一だが・・・
 美鈴の信頼に応えようとする栄一の行動が頼もしい。友人以上恋人未満だった二人の関係が、事件を通じてもう一歩先へ進みそうな予感を示して終わるラストシーンが心地よい。


「かもしれない」
 不動産会社で働く昌幸は勤続20年。2年前、同期の菅野はウイルスメールを不用意に開いたことで会社に損害を与えてしまい、その後の人事で長野県の工務店へ出向を命じられていた。
 あるきっかけから菅野のことを調べ直した昌幸は、女性がらみの意外な事情が潜んでいたことを知る・・・
 菅野の "侠気" が泣かせる一編。


「山分けの夜」
 大学4年生の卓也は、介護施設にいる70歳の伯母・芳子の要望で、彼女の身の回りの品をとりに、伯父の家に行くことになった。しかし、伯父の前近代的で男尊女卑の塊のような言動に呆れてしまい、それ以後は、伯父の留守中に伯母の用事を済ますようになる。
 そしてあるとき、伯母から「伯父の部屋にある紙袋を取ってきてくれ」と頼まれて訪れた卓也は、伯父の撲殺死体を発見してしまう。そして紙袋もなくなっていた。卓也は大学のサークルの先輩・香西(かさい)に相談したのだが・・・
 探偵役の香西の推理で解決かと思いきや、さらにもうひとひねり。


 巻末の「あとがき」によると、「すべての短編に共通する点がある」とあるのだけど、それが何かは分からなかったなあ。
 強いて言えば、どの作品もラストはそれなりにハッピーに終わること?



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