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ドアを開けたら [読書・ミステリ]


ドアを開けたら(祥伝社文庫 お23-2)

ドアを開けたら(祥伝社文庫 お23-2)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2022/04/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

 主人公・鶴川佑作(つるかわ・ゆうさく)は54歳。独身で横須賀のマンションで一人暮らしをしている。”ある事情” で仕事を辞め、現在は無職。近くマンションを引き払って郷里に帰るつもりでいる。

 同じマンションの住人・串本英司は70歳を超えているが、佑作は親しくつきあってきた。
 引っ越しの準備もほぼ終わり、串本から借りていた雑誌を返そうと部屋を訪ねた佑作は、そこで彼の死体を発見してしまう。
 外傷はなく、事故死か病死か、はたまた殺人なのかも判然としない。

 驚いて逃げ出した佑作だったが、その様子を撮影していたのが高校生の佐々木紘人(ひろと)だった。佑作は紘人に脅され、串本の部屋に戻って ”手帳” を回収する羽目に。

 翌朝、警察に通報することを決めた佑作は、「第一発見者」になるために紘人とともに再び串本の部屋を訪れるが、なんと死体は消えていた・・・

 独身で、世界中を旅して廻ってきた串本。悠々自適の余生を送っていたはずの彼は、どのような状況で死に至ったのか? そして彼の死体を隠したのは誰か?

 佑作と紘人はその謎を解くため、串本の私生活を探り始めるのだが・・・


 探偵役は40歳近い年齢差がある2人。いわゆる ”バディもの” である。対立と反感から始まった関係が、次第に世代を超えた深い絆へと変わっていくのが読みどころだろう。

 ”ある事情” で仕事を辞めた佑作。紘人もまた、学校で ”何か” があって不登校になっていることが明らかになる。
 社会から、学校から、ドロップアウトしかかっている2人だが、串本の事件を通じて、彼らは自らの居場所を取り戻していく。

 串本の意外な私生活が明らかになっていくのは予想の範囲内だが、それに加えて、彼には別の犯罪の容疑がかけられていたことも判明する。
 そちらの ”事件” は、物語の冒頭から伏線は張られているので、気がつく人も多いだろう。果たして串本は ”犯罪者” だったのか・・・?

 終盤では、”事件” の真相が明かされるのだが、その中心人物の正体はかなり意表を突く。映画やドラマではよくあるのかも知れないけど、まさか○○○の○○が○○○を○○○○なんてねぇ・・・ビックリだよ~!(笑)

 明らかになった串本の私生活には、悲哀を感じる部分もあるけれど、彼は彼なりに幸せだったのだろうとも思える。私も数年後には彼の年齢に達するわけで、他人事とは思えない。

 すべての物語が終わった後、佑作と紘人にも新しい未来が提示されて、読後感はすこぶる良い。やはり大崎梢は素晴らしい作家さんだ。



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