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名探偵誕生 [読書・ミステリ]


名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2021/12/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

 主人公兼語り手は星川瑞人(ほしかわ・みずと)くん。
 彼の家の隣には千歳(ちとせ)さんという美人のお姉さんが住んでいた。
 年齢差は6歳。瑞人にとって彼女は、時に優しい庇護者であり、時に尊敬すべき教師であり、そして ”初恋の女性” でもあった。
 そして何より、鋭い洞察力をもって事件を解決する ”名探偵” だった。

 というわけで、彼女とともに成長していく瑞人くんの物語が綴られていく。


「第一話 となり町は別の国」
 瑞人くん小学4年生。千歳さんは高校1年生。
 友人たちととなり町まで ”探検” に出かけた瑞人。”幽霊団地” に住む ”シンカイ” という謎の男の噂を聞き、それを探りにいったのだ。
 ”シンカイ” の住む部屋を見つけ、そこから出てきた男を尾行する瑞人たち。しかしその男は、ブロックで囲まれて出口のない小さな公園の中で姿を消してしまう・・・

「第二話 恋するドトール」
 瑞人くん中学2年生。千歳さんは大学2年生。理学部物理学科らしい。
 「木内美花」なる女の子からラブレターをもらった瑞人くん。待ち合わせに指定されたドトールへ出向いたものの、相手は現れない。
 隣の席には作家と思われる男性が座っていたが、席を立って帰って行った。瑞人くんも帰ろうと立ち上がったところ、隣の席のテーブルの下にスマホが落ちているのを見つける。
 男性の忘れ物と思って後を追って店を出ると、女性が現れて「それは私のものだ」と声をかけられる。だが彼女の言動には不審なものが・・・

「第三話 海王星を割る」
 瑞人くん高校2年生。千歳さんは大学院修士課程1年で、理学研究科物性理論研究室に所属している。
 友人とともに隣県の私立高校の文化祭を訪れた瑞人くん。見学した地学教室では、天文部による巨大な太陽系の模型展示が。しかし、その中の海王星の模型が何者かに破壊されるという事態に出くわす。
 部員たちの話を総合すると、犯行可能な時間帯に地学教室に人が入ることは不可能だったのだが・・・

「第四話 愛していると言えるのか」
「第五話 初恋の終わる日」
 瑞人くん大学2年生。千歳さんと同じ大学の工学部材料工学科へ入った。
 サークルは彼女と同じSF研究会。その千歳さんは博士課程2年となっている。
  サークルのメンバーらとともにキャンプ場を訪れた瑞人くん。お約束の酒盛りの後、3つのログキャビンに分かれて宿泊する。しかし明け方、キャビンの一つから出火する。そして、そこに1人だけで泊まっていた男子学生の焼死体が発見される。煙草の火による過失死かと思われたが・・・


 「第一話」から「第三話」まではいわゆる ”日常の謎” ながら、人間消失や不可能犯罪など、なかなか骨太の謎を提示してくる。それを見事に解き明かす千歳さんの名探偵ぶりも素晴らしい。

 そして「第四話」「第五話」はいわば前後編で、密室状態のログキャビンでの殺人事件となる。ここでも千歳さんの推理は犯人に到達するのだが・・・

 最終話の題名は「初恋の終わる日」。
 ”初恋の終わり方” はひとそれぞれ。初恋がそのまま実ったという希有な人もいるだろうが、実らずに終わるケースが大半だろう。
 さて、瑞人くんの初恋はどのように ”終わる” のか。
 ここが一番の読みどころであり、本書のタイトル「名探偵誕生」の意味もここで回収される。



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