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こうして誰もいなくなった [読書・ミステリ]


こうして誰もいなくなった (角川文庫)

こうして誰もいなくなった (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/11/20
評価:★★★☆

 ノンシリーズものを収録した短編集。ミステリに限らず、いろんなジャンルのものが入っている。
 おおむね ファンタジー系 → ホラー系 → ミステリ系 となるような順に並べてあるとのことだが、私の印象ではちょっと異なるものも。

 以下の紹介文は、収録順(目次順)ではないことをお断りしておく。


■ラジオでの朗読作品として書かれたもの

「館の一夜」
 恋人を連れて東北の旧家を訪ねた民俗学研究者。しかしその帰りに道に迷い、山中にあった無人の屋敷で過ごすことに。

「出口を探して」
 迷路の中で意識を取り戻した女性。そこで出会った男性とともに出口を探し始めるが・・・

「謎のアナウンス」
 語り手は60代の男性。彼がスーパーマーケットに行くと、毎回同じようなアナウンスが流れるのだというが・・・

 どれも短く、ジャンル分けすると即ネタバレになりそう(笑)。


■ファンタジー

「線路の国のアリス」
 謎の世界へ迷い込んだアリスが、不思議な列車に乗って旅する話。


■奇妙な味?

「名探偵Q氏のオフ」
 名探偵Q氏と助手のF嬢の物語。ラスト2ページの描写は読んでて笑ったけど感心した。書くのが大変だったろうなぁ。

「まぶしい名前」
 ショートショート。描いている内容は現代なんだけど、なんとなく昔のSFっぽい雰囲気を感じた。


■ホラー

「妖術師」
 町外れの公園で興行を始めた ”妖術師・サンド伯爵”。得意の演し物は人体消失だ・・・


■SF

「怪獣の夢」
 アンソロジー『怪獣文藝の逆襲』で既読。子どもの頃から怪獣の夢を見続けていた少年は、大人になった時・・・


■タイポグラフィー

「矢」
 タイポグラフィーといえば夢枕獏の「カエルの死」が有名だけど、有栖川有栖が書くとこうなるのか。


■ミステリ

「劇的な幕切れ」
 アンソロジー『毒殺協奏曲』で既読。自殺願望を抱えた青年は、同じ思いを持つ女性とネットで知り合い、一緒に ”心中” することになるのだが・・・

「未来人F」
 アンソロジー『みんなの少年探偵団2』で既読。
 少年探偵団シリーズのパスティーシュ。明智小五郎がアメリカに出かけて不在の時、”未来人F” を名乗る怪人物が現れる。未来に起こることをいくつも言い当て、さらには国立博物館から国宝を盗み出すと ”犯行予告” までするが・・・。
 ミステリとして解決するのだけど、ラストでメタフィクショナルな展開が。

「盗まれた恋文」
 盗まれた手紙を取り戻した名探偵。しかし彼にはある問題が・・・。文庫で3ページ、しかもミステリなオチという離れ業。

「本と謎の日々」
 書店を舞台にした ”日常の謎” ミステリ。作者は元書店員だったので、なかなか面白いネタが。シリーズ化されないかな。

「こうして誰もいなくなった」
 文庫で約140ページと、本書の厚さのおよそ1/3を占める表題作。
 孤島に10人の人間が集められて、一人一人死んでいく・・・という「そして誰もいなくなった」パターンを有栖川有栖が書くとこうなる。
 舞台は伊勢湾に浮かぶ孤島。集められたのは8人。彼らは ”デンスケ” と名乗る謎の人物に呼ばれたのだが、そのデンスケの姿はない。実はもう一人呼ばれるはずで、デンスケを含めて総勢10人だったはずなのだが、最後の一人もなぜか姿を現さない。そして起こる連続殺人・・・
 各登場人物が抱える事情も今風だったりして、21世紀の「そして誰もー」になってる。人が死ぬたびに容疑者が減っていくので、犯人を隠すのが難しくなるのだけど、それでも犯人は分からないんだなぁ。さすが有栖川有栖。



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