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アンマーとぼくら [読書・その他]

アンマーとぼくら

アンマーとぼくら

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/08/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★

作者は昨年(2019年)、筆名を「有川浩」から「有川ひろ」に改めた。
やっぱり「ひろし」って誤読されることが未だに多いのかしら?
ちなみに、タイトルにある ”アンマー” とは、
沖縄地方の方言で ”母親” のことだという。


東京で暮らすリョウは、2泊3日の予定で沖縄に里帰りする。

出迎えたのは ”おかあさん”。
リョウが幼い頃に実の母は病死し、
その後、父が再婚した相手が ”おかあさん” だ。
その父も今はすでに亡い。

リョウは ”おかあさん” と共に、父との思い出の場所を巡り始める。

物語はリョウの一人称で進行していく。
二人の ”旅” を綴る現在のパートと、
実の母と死別し、それまで生活していた北海道を離れて
カメラマンの父と共に沖縄へ移住、そこで始まった
新しい ”おかあさん” との生活を描く過去のパートが並行して語られる。

とにかくリョウの父親のキャラが強烈だ。
冒頭、実の母が今際の際にリョウに語りかけた言葉が掲げられているが
この言葉が、ほぼ全編にわたって物語の内容を示している。

「お父さんを許してあげてね。
 お父さんは、ただ、子供なだけなのよ」

最初の妻を喪って以後、リョウの父は奇行が目立ち始める。


 奇行はそれ以前からあったのかも知れないが
 リョウが幼くて分からなかったのだろう。

最初のうちは、妻を喪った寂しさを紛らわせ、
息子を励ますためなのかとも思っていたが
読み進めるうちに、どうやらそうではないらしい、ということに気付く。

リョウの父は、本当に「子供」だったのだ。
まあよく言えば純粋で繊細だったのかも知れないが、
幼いリョウにとっては理解できない行動ばかりに見える。

息子というものは、多かれ少なかれ
父親というものに反発を覚える時期があると思う。

一番身近な同性の大人であるから、否が応でも意識せざるを得ない。
どんなに立派な人間だろうと、100%完全無欠な奴はいないから
息子から見れば、どうしても好意的に捉えられないところは出てくる。

もし立派な大人であっても、その「大人の理屈が嫌だ」とか
一所懸命に稼いでも、「金儲けばかりしてる」とか
まあ父親からすると理不尽なところで嫌われることもあるだろう。

 私の父親も、金は人並み以上に稼いでくれたが
 家庭人としての評価は辛かった。さすがにDVとかは無かったが
 けっこう嫌いだと思ってた時期は長かった。
 「まあ親父もあれはあれで大変だったんだな」と思えたのは
 自分が家庭を構えてからだったが・・・

ましてや、どうしようもない悪い奴だったら仕方がないのだろうが、
本書に登場するリョウの父は、基本的に善人なのだ。

作中でどんな行動を取ったのか、具体的には挙げないけれど
彼の行動はすべて、基本的には善意から発している。

相手(リョウ)に対してよかれと思って行動するのだが
それが相手(リョウ)からすれば
ことごとく我慢ならない愚行に思えてしまう。

読んでいると、ホントに腹が立ってくる。
もしこの親父が目の前にいたら、
殴りかかってしまうんじゃないかとすら思う。

ここまで感情をかき乱されるのは珍しいが、
そこはやっぱり有川ひろ、その筆力は伊達じゃない。


さて、”おかあさん” と共に沖縄各地を巡るうち、
リョウはしばしば不思議な体験をする。
これについてはネタバレなので書かないが、
SFともファンタジーとも解釈できそうな現象。

 とは言っても、この作品をそういうくくりで
 ジャンル分けするのは「無粋」というものだろう。

そして、どうやらこの3日間が終わるとき、
何かが起こりそうな ”気配” がゆっくりと醸し出されていく。

これについてもネタバレなので書かないが
本書の初刊が2017年7月。文庫版の刊行が2020年8月。
どちらも ”夏” というのがポイントか。


nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-08 03:02) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-08 03:02) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-08 03:02) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-08 03:02) 

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