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分かれ道ノストラダムス [読書・冒険/サスペンス]


私が「ノストラダムスの大予言」(五島勉)を読んだのはいつだったか。
1973年の出版だから、たぶん中学3年生の頃だったろう。
その内容に、ずいぶん怖い思いをしたことを覚えている。

その後、五島氏が執筆したSF小説には「ー500℃の超低温」だかの
とんまな記述があって「トンデモ本」に ”認定” されてしまったそうな。

 念のタメに書いておくと、温度の最低値は「ー273℃」で、
 これより低い温度はこの宇宙に存在しない。
 ちなみに、高校の理科で勉強する内容だ。

要するに、そんな人が書いた与太話だか怪談話だかのレベルの本に
脅かされてたわけだよねぇ・・・

でも、信じてしまった人は一定数いたみたいで、
1999年7月にやってくる ”人類の滅亡” から逃れるために、
オウム真理教に入信した人も多かったとか。

閑話休題。


分かれ道ノストラダムス (双葉文庫)

分かれ道ノストラダムス (双葉文庫)

  • 作者: 深緑 野分
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/11/14
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

時代設定は1999年6月。

高校1年生の日高あさぎは、中学時代にクラスメイトだった
宮ヶ瀬基(みやがせ・もとき)の三回忌に出席した。

1997年、中学2年生だったあさぎは、
思いを寄せていた基とけんか別れした形で離れてしまい、
その直後に彼が心臓疾患で亡くなったことで、トラウマを抱えていた。

法要を終えたあさぎは、基の祖母から彼の残した日記を譲り受ける。
しかし彼の日記に不審な記述があった。
1996年に書かれた日記に、93年に交通事故死した
彼の両親の、事故前後の行動が記されていたのだ。

あさぎは、同級生で読書好きの八女研輔(やめ・けんすけ)に相談する。
日記を読んだ八女は、基が ”両親が死ななかった可能性” を
探っていたのではないか、と推測する。

あの日、父と母はどんな行動を取っていたら
事故に遭わずに済んだのだろう・・・

それを知った浅葱は、”基が死ななかった可能性” を考えるようになる。
八女の助けを借りて、日記の記述から
基が死亡する直前の行動を探り始めるのだが・・・

一方、「ノストラダムスの大予言」が人類の滅亡を告げたと言われる
1999年7月を迎えて、世間は騒然としていた。
あさぎたちの暮らす街でも、怪しげな宗教団体「アンチ・アンゴルモア」
なるものが活動し、信者たちがさまざまな騒ぎを引き起こしていた

そして、基が死亡する直前の日記に記された電話番号が、
「結城循環器内科クリニック」のものだったことが判明する。
この医院はすでに閉鎖されていたが、
「アンチ・アンゴルモア」の幹部に結城という人物がおり
これが結城医院の医師だったのではないか、との疑いが浮上する。

基の足跡を追うあさぎと八女は、やがて「ノストラダムスの大予言」を
巡る、「アンチ・アンゴルモア」の陰謀に巻き込まれていく・・・


前半では、高校生たちの日常がじわじわと
謎の不安にむしばまれていく様子が描かれていくが
中盤過ぎあたりから物語は一気に加速を始めて
あさぎは何度も生命の危険にさらされる。

そして終盤は ”予言の成就” を巡る
タイムリミット・サスペンスに移行していく。
極限状態へと追い詰められたあさぎと八女の運命やいかに・・・


まず主役二人のキャラがいい。

ヒロインのあさぎは、感情の起伏がやや大きく、
時には、考えるより先に体が動いてしまうという
ちょっと危なっかしいお嬢さんである。

対する八女君は、本の虫でありながら意外と度胸があって
思慮深く頼れる好青年として描かれる。
これには、彼のユニークな家庭環境もあるのだろうが
このへんの設定も面白い。

あさぎの中学時代の友人である水戸ちゃんや彩瀬ちゃんも
単なる賑やかしではなく、ちゃんとストーリーに絡んでくる。

八女の知り合いでアクアリウムショップの店長・久慈や
あさぎの行く先々で現れる謎のホームレスの老人とか
青少年心理カウンセラー・桐晴彦(きり・はるひこ)とか
胡散臭そうな人物も多々現れ、サスペンスを盛り上げる。

もっとも、黒幕は中盤過ぎには明らかになってしまうので
犯人当てミステリーとしての趣には乏しいけれど、
終盤の緊迫感あふれる描写は半端ではない。
「戦場のコックたち」で戦場のリアルを描いた筆力が
存分に発揮されていると思う。


人生、別れもあれば出会いもある。
本書は、初恋の人・基との悲しい別れを経験したあさぎが、
悲しい思い出を抱えながらも、新しく出会った人たちと共に
それを乗り越えていくまでの物語だ。

物語開始時点で15歳、もし ”予言” が成就したら
16歳になる前に死んでしまうんだなぁ・・・と思っていたあさぎだが
もちろん、彼女にはまだまだ長い人生が待っている。

エピローグでは、あさぎをはじめ物語に登場した人々の、
”予言” を超えたちょっぴり未来の話が綴られる。

このブログのあちこちで書いてるように
私は青春小説なるものが苦手なんだが、
本書はハラハラしながらも面白く読めたし、
物語の締め方も素晴らしい。
楽しい読書の時間を過ごせました。

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コメント 4

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-20 00:03) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-20 00:04) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-20 00:04) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-26 00:56) 

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