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屋上 [読書・ミステリ]


屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

新進気鋭の盆栽作家・安住淳太郞。
しかしその前衛的な作風のために斯界の重鎮と衝突し
それが原因で盆栽業界から ”追放” されてしまう。

干されて仕事を失った安住は経済的に困窮し、
やがて精神を病むようになって、ついに自殺してしまう。

彼の残した作品群は紆余曲折を経てU銀行が引き取り、
受け入れ先が決まるまでT見市にあるU銀行自社ビルの屋上で
管理することになった。

しかしなにぶん数が多すぎて、屋上は盆栽で埋め尽くされてしまい、
社員が毎日水やりをして世話をする羽目になってしまう。

そんなある日。
U銀行の自社ビルの屋上から行員が転落死する事件が続発する。
みな、屋上の盆栽へ水やりにいったまま転落していた。
しかし、自殺するような事情を抱えた者は一人もいなかった・・・


物語は、いくつかの流れに分かれて語られる。
「屋上の呪い」というパートでは、上記の銀行内での出来事が、
「苦行者」では、会社を辞めてニートとなった男の鬱々とした日々が、
「サンタクロース」では、サンタクロースの衣装を着て
 年の瀬のアルバイトに励む四十男の悲哀が、
「宇宙人」では、転落死した女子行員が生前に見た謎の人物が。

「屋上の呪い」のパートだけでは何が何やら分からない事件も
他の3つのパートが進行していくにつれて、
奇怪な事件の背景が徐々に浮かび上がってくる。

そして後半になって「馬車道」というパートが始まり、
ここで御手洗潔が登場し、謎を解き明かす。

「暗闇坂の人食いの木」とか「水晶のピラミッド」とか、
御手洗の登場する大長編はいくつもあるけれど、
本書も540ページとそれらに匹敵する大部。
しかしながら、ページ数が多い割に真相はちょい拍子抜けな感が。
さんざん引っ張っておいてこれ? って思う人は多いのではないかな。

ただまあ、結末に至るまでに登場する人々の哀歓はそれなりに読ませる。
本人たちは必死なのだろうけど、周囲から見ればいささか滑稽な展開は
ユーモア小説とみればなかなか面白いとは思う。

でも、島田荘司で、しかもこれだけの大長編で、
密室状態の屋上からの連続転落死と、謎もなかなか魅力的。
読者はかなりの期待を持って読み始めると思うんだけど
それに応えられているかどうかは微妙な気が。

あと、読み終わって思ったのだけど、本書には
現場となった屋上の見取り図とかの図面類は一切載ってない。

載せたら、勘のいい人ならネタを見破ってしまうからかな・・・
なぁんて思いました。ちょっと意地の悪い見方かしら(笑)。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-12-30 23:06) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-12-30 23:06) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-12-30 23:07) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-12-30 23:08) 

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