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女王 [読書・ミステリ]

女王(上) (講談社文庫)

女王(上) (講談社文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: 文庫
女王(下) (講談社文庫)

女王(下) (講談社文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

連城三紀彦は6年前に亡くなっているのだが、
その後も生前に残された作品が刊行されている。
本書は亡くなった1年後の刊行なので、おそらく最後のミステリー長編。

もっとも、まだいくつか書籍化されてない作品があるそうだけど。


この物語には無数の謎が登場してくるのだけど、
その中で大きなものは次の3つだろう。


一つ目は、主人公・荻葉(おぎは)史郎を巡る謎。

幼少時に両親を失った史郎は東京で祖父・祇介(ぎすけ)に育てられていた。
しかし12歳の時に失踪、まもなく福岡の海岸で発見されるが
頭部の負傷によって生まれてから12年間の記憶を失っていた。

その後、無事に成長した史郎は大学を卒業して就職、
古代史研究家だった祇介が亡くなった翌年に、
祖父の助手だった加奈子と結婚した。
しかし披露宴の終盤、式を挙げたホテルが火事になってしまう。
避難した史郎は燃えるホテルと青空を見上げているうちに、
ある光景を思い出す。

見渡す限りの炎の海、燃え落ちる家屋、焼死体の並ぶ中を逃げ惑う人々。
それは「東京大空襲」の記憶だった。
しかし史郎は昭和24年生まれ。空襲の記憶はないはずなのに・・・
その後もしばしば記憶の ”フラッシュバック” に悩まされることに。

昭和54年の冬、30歳になった史郎は
医師・瓜木(うりき)のもとを訪れるが彼にもその記憶の原因は
突き止められず、さらに17年の時間が流れる。

平成8年の1月、史郎は瓜木から手紙をもらい、彼に会いに行く。
末期ガンに冒され、死期が迫っていた瓜木は史郎に告げる。
東京大空襲の日、医学生だった瓜木は、
史郎に会った記憶があるのだという。
それも、30歳ほどの年齢の史郎に・・・


二つ目は、史郎の祖父・祇介に関するもの。

祇介は昭和47年、史郎が23歳の時に亡くなっていた。
その日は大晦日で、突然かかってきた電話を受けた祇介。
内容は彼の研究に関わるような大発見があったということで
「奈良へ行く」と言い残して家を出る。
しかし翌日・昭和48年の元旦に若狭湾の海岸で死体となって発見される。
大量の睡眠薬を飲んでおり、遺体の状況から警察は自殺と判断するが・・・


三つ目は、史郎の父であり祇介の息子でもある、
早世した春生(はるお)のこと。

タイトルの「女王」とは、邪馬台国の女王・卑弥呼のことだ。
それは祇介の研究テーマであり、作中での邪馬台国の在処もまた
大きなテーマとなっている。

春生は、成人前に祇介の蔵書を読破してしまうほどの天才だったが
古代史の研究にのめり込むあまり、
「自分には前世の記憶がある」と口走るようになった

彼の残したノートには、”当時” のことが詳細に描き込まれていた。
南北朝の時代のこと、さらには邪馬台国の時代のことまで・・・


自らの記憶の謎、祖父の不審な死の謎、そして父の前世の記憶の謎。

史郎は妻・加奈子、そして病身の瓜木医師と共に
真相を探るべく、ゆかりの地を訪ねる旅に出るのだが・・・


ここまででも充分なくらいの謎、謎、謎のオンパレードなのだけど
この後の展開も、さらに新たな謎の絨毯爆撃。
一つの謎が解けてもまたそこから新たな謎に生じていく。

本書はSFではないのでタイムトラベルとかの ”裏技” は使えない。
あくまで通常の合理性に則った解釈・真相が用意されてるはずなのだが
ここまで大風呂敷を広げてしまって、どんなふうに畳むんだろう・・・
って心配になってしまうが、なんと作者はきっちり畳んでみせます。

 まあ、しばらく経って落ち着いて考えると
 「そんなこと可能なのかな」と思わなくもないが
 読んでる最中はさほど疑問に思わず
 そのまんま受け入れてしまうんだよねえ。
 やっぱり卓越した描写力と文章力のなせる技なんだろうなあ。
 まさに「連城マジック」。

もう一つ、邪馬台国が何処にあったかについて。
「魏志倭人伝」の記述に、独自の解釈を施していくのだが
これ、古代史の専門家からすればものすごい異論がありそうだが
ミステリ的な仕掛けとすれば充分面白い。
そしてなにより、本編の謎と密接にリンクしてるのがスゴい。

そしてもちろん、連城三紀彦といえば ”女の情念”。
登場する女性たちそれぞれが心に内に秘める
”激しく妖しい熱情” もたっぷり描かれている。

文庫で上下巻、あわせて650ページほどもあり、
しかも舞台が東京・福岡・奈良・京都・若狭と移動して
時間軸も1700年くらいにまたがるというスケールの大きな舞台の上で
「記憶」という精神世界の謎と「殺人」という物質世界での謎を描く。

こういう作品がもう読めないかと思うと、やっぱり悲しいねえ・・・

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

はじドラさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-02-25 21:00) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-02-25 21:00) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-02-25 21:01) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-02-25 21:01) 

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