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アルスラーン戦記 1~4 [読書・ファンタジー]


王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/02/21
  • メディア: 新書
落日悲歌・汗血公路 ―アルスラーン戦記(3)(4) (カッパ・ノベルス)

落日悲歌・汗血公路 ―アルスラーン戦記(3)(4) (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/05/21
  • メディア: 新書
『銀河英雄伝説』と並ぶ、田中芳樹の大河ファンタジー・シリーズ。
1986年の第1巻から数えて31年、
2017年12月に最終16巻が刊行され、めでたく完結となった。

その間、劇場アニメ・OVAになって(91~96年)、
同時期に漫画化もされたが
いかんせん原作の刊行が止まってしまっていずれも未完。

しかし2013年から荒川弘による漫画化が始まり、
2015年には二度目のアニメ化と人気は衰えを知らないようだ。


さて、原作は無事に最終巻まで刊行されて、
待ちわびていたファンの一人として大変喜ばしく思っているのだが
一気に読んでしまうのもなんだかもったいなくて
少しずつちまちまと読んでいるところ(笑)。

最終巻まで読んでから記事に書こうかとも思ったんだが
なんせ冊数が多いので、とりあえず4巻分ごとにまとめて
記事に書くことにした。
ちなみに15年4月~9月まで放送されたアニメ(1期)は、
この1~4巻までの内容だ。

初刊の発行年を掲げてみると
1巻「王都炎上」(1986年)、2巻「王子二人」(1987年)、
3巻「落日悲歌」(1987年)、4巻「汗血公路」(1988年)。
おお、この頃はまめに出てたんだねえ。

ちなみに1986年5月には同じ作者による『銀河英雄伝説』第7巻が刊行、
87年11月には最終巻となる第10巻が刊行されて本編は完結、
88年頃は外伝を執筆していた時期に相当する。
作者としても一躍人気作家に躍り出て、
勢いにあふれた時期だったんだろうと推測する。


さて、『アルスラーン戦記』は第一部7巻、第二部9巻からなる。
当初は第二部も7巻で14巻で完結予定だったのだが
いつの間にか2巻増えてた(笑)。まあ増える分にはいいかな。

第一部は順調に終わったのだが、
第二部に入って2巻ほど出たあたりからばったり途絶え、
数年おきに思い出したように刊行されるようになった。
平均すると4年に一巻くらいになってしまったので、
オリンピックのようにやってくるようになった(笑)。

というわけで、第一部の7巻分はもう複数回読んでいるのだが
第二部の9巻め以降は買っても読まずに積んでおいた。
「完結したらまとめて読もう」って思ってたんだが
まさかこんなに時間がかかるとはねえ(笑)。

閑話休題。内容の紹介に移ろう。


舞台は中世ペルシアに似た異世界。

大陸公路の要衝に位置するパルス王国は
剛毅の国王アンドラゴラスの統治のもとで繁栄を極め、
その国勢は盤石かとも思われていた。
しかしパルスの隣国であるマルヤム王国を滅ぼした
宗教国家ルシタニアがその矛先をパルスへ向け、侵攻を開始する。

アトロパテネの平原にルシタニア軍を迎え撃ったパルス軍だったが
敵の奸計にはまって壊滅的な大敗北を喫し、
アンドラゴラスは捕らえられてしまう。

この日、初陣を迎えていた14歳の王太子アルスラーンは
パルス随一の戦士・ダリューンに守られ、
わずか二騎で辛くも戦場を脱出する。

勢いに乗るルシタニア軍はパルスの王都エクバターナを占領、
帰るべきところを失ったアルスラーンは、
ひとまずダリューンの親友であるナルサスの元へ向かう・・・


『アルスラーン戦記』第一部は、
この王子一人、騎士一人というたった二人の戦いから幕を開ける。
ルシタニア軍の追っ手から逃れながらも、
アルスラーンのもとには少しずつ有能な家臣が集まっていき、
やがて国内の残存戦力を糾合して侵略者打倒のために挙兵、
王都の奪還とルシタニア軍との決戦を経て、
パルスの王座に就くまでが描かれる。


アルスラーンと共に立つのは最強戦士ダリューン、天才軍師ナルサス、
その侍童エラム、女神官ファランギース、放浪の楽士ギーヴ。
この5人を手始めに、後の世に "アルスラーンの十六翼将" と称される
家臣たちが巻を重ねるごとに続々と集まっていく。

人気作家だけあって筆力は抜群。キャラ立ちも完璧で
多人数が登場する場面でも、台詞を読んだだけで誰の発言か分かる。
キャラ同士による軽口と冗談と毒舌の応酬も絶品で
このへんは田中芳樹の真骨頂だろう。

圧倒的な劣勢にあっても彼らは陽気さを失わず、
主君とともに戦いの渦中へ飛び込んでいく。
この "アルスラーンと愉快な仲間たち" の活躍が
全編にわたって綴られていくのだ。

本作の人気の理由はいろいろあるだろう。
流浪の王子が国を取り戻すという王道ストーリー、
それを波瀾万丈の冒険物語に仕立て上げる構成の妙、
綺羅星のごとく登場する魅力的なキャラクターたち、
寡兵をもって大軍を打ち破る戦略・戦術の描写など
挙げればいくらでも出てきそうだ。

その中でも、最も特徴的だと思うのは主人公の造形だろう。

大国の王子に生まれながら、なぜか両親には愛されず
(そこにはある秘密があったのだが)
幼少期は乳母夫婦に預けられ、平民に混じって王宮の外で暮らす。
幸いにして養父母からは充分な愛情を注がれて育ち、
長じて王太子に冊立されて王宮内に戻っても、
その "庶民感覚" を失わずにいる。
作中に登場する14歳のアルスラーンは、そんな素直で純真な少年だ。

剣技も未熟だし、飛び抜けた知略を示すわけでもない。
「オレについてこい!」的な威勢の良さを持つわけでもない。
ある意味 "平凡" なキャラクターで
ヒロイック・ファンタジーの主役としてはかなり異色だろう。

しかし彼のもとには、なぜか有力な臣下が集まってくる。
それも王室の権威によることなく、彼自身の資質と、
自らの理想の旗を掲げることによって。

物語初期におけるアルスラーンの行動理由は
「侵略者を追い出して平和を取り戻すこと」だったが
戦いを通じて "玉座" というものの光と闇に触れ、
「王が善政を敷けば世の中の不幸を減らせる」ことを知る。
そして巻を追ううちに「良き王となり、この国を変えたい」という
思いが募っていくのだ。

アルスラーンが改革のトップに掲げるのは「奴隷制の廃止」。
これはパルスの旧弊な体制の象徴となるものだ。
それを実現するためには、自らの力を持って侵略者を追い払い、
その功績を以て守旧派の父王に改革を認めさせなければならない。

軍師ナルサスは、自分の領地で奴隷制の廃止を試みて失敗した過去を持ち、
この若い王子に新たなる国家建設を託すようになる。
他の臣下たちもアルスラーンの中に「良き王たる資質」を認め、
その理想の実現に力を貸すことを選んでいく。

まあ、簡単に言えばみんなアルスラーンのことを好きになって、
彼をもり立てようという気分になってしまうんだね。
それくらい「人望」を集める能力がある少年なんだ。

後世、"解放王" と呼ばれることになるアルスラーンと、
"十六翼将" (まだ全員集まってないけど)たちの戦いは、
まだ始まったばかりである。

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コメント 3

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-01-29 20:43) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-01-29 20:43) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-01-29 20:44) 

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