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県庁おもてなし課 [読書・その他]

県庁おもてなし課 (角川文庫)

県庁おもてなし課 (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

高知県庁に誕生した「おもてなし課」。
主人公は入庁3年目にしてここへ配属された若手職員・掛水史貴。

観光立県を目指し、観光客を文字通り「おもてなし」して
県内の観光産業を盛り立てよう・・・
というコンセプトは立派だが、具体的に何をしたらいいのか?

まず最初に取り組んだのは地元出身の有名人に観光大使を依頼し、
割引特典付きの名刺を各所にばらまいてもらおう・・・というアイデア。

しかし、割引対象になった施設の了解を取るところからもうたいへん。
割引によって生じる損失分の補填がどうとか
縦割り行政の壁やらで、とにかく話が前に進まない。

やっとのことで企画を通し、動き出したものの
今度は観光大使を引き受けてくれた
若手人気作家・吉門喬介(よしかど・きょうすけ)から
ダメ出しの嵐を食らう。

いちいち理にかなっていて、
「おもてなし課」の "お役所体質" を痛烈に批判する
吉門の指摘の数々に、掛水は圧倒される。

しかし、掛水の方もそれだけでは終われない。
「おもてなし課」は窮余の一策として、
吉門を課のアドバイザーとして迎え入れることにする。

それに対して彼が挙げた条件は2つ。

(1)外部から若い女のスタッフを1名入れること

これは、総務部にアルバイトで来ていた
明神多紀(みょうじん・たき)という、
吉門の挙げた条件通りの逸材を発見したことで解決。

(2)かつて高知県庁内で唱えられた『パンダ誘致論』を調べること

20年前、高知県の観光産業振興のために
『パンダを高知県へ誘致する!』とぶち上げたのは、
当時の観光部職員だった清遠和政(きよとう・かずまさ)。
しかし彼の主張は県庁の "お役所体質" を打ち破れず、
閑職に回された後に退職へと至る。
現在は民宿経営の傍ら観光コンサルタントで生計を立てているという。

清遠は、いまもなお途方もないスケールでの観光立県構想を抱いていた。

吉門と清遠という2人の強力な "助っ人" を得た「おもてなし課」は、
県庁の "お役所" "ぬるま湯" 体質を打ち破り、
高知県が観光客であふれる未来を呼び寄せることができるのか・・・?

「おもてなし課」の奮闘を縦軸に、
掛水と吉門、多紀と清遠の娘・佐和の4人を巡る恋愛模様を横軸に、
涙と笑いの物語が展開する。


いやあ、有川浩はホントにスゴい。

冒頭の吉門と「おもてなし課」のエピソードは、
実際に有川浩が高知県の観光大使を
引き受けたときの実話がベースらしい。
そのへんもちゃっかり小説のネタにしてしまうんだからたいしたもの。

代表作である『図書館戦争』シリーズや『自衛隊三部作』も、
恋愛要素だけにとどまらず、大きなテーマとストーリーを持っていた。

本書も、"地方創生" という古くて新しいテーマで
堂々とエンターテインメント長編を一冊書いてしてしまうんだから。
しかも、しっかりLOVEも散りばめて。

本書に描かれる「おもてなし課」の奮闘はまだ端緒についたばかり。
実際の、そして現在の高知県の観光産業がどうなっているのかは
寡聞にして私は知らないし(巻末にちょっと載ってるけどね)、
また本書に描かれた "処方箋" が最良なのかもわからない。
(小説だからうまくいくんだろ、って反論ももちろんあるだろう)
ましてや他県でこれと同じことができるとも思えない。

でも、かつて全国一律、各自治体に1億円配ったり、
バブル時代にハコモノを大量に作っても地方は再生しなかった。

根源的には、その土地に暮らす人々が知恵を集め、アイデアを練り、
行政がそれをバックアップしていくしかないのだろうとも思う。


さて、有川浩作品の特徴として、
「カッコいいおっさんが多い」というのが挙げられる。

「三匹のおっさん」なんていうそのものズバリの作品もあるが
本書でもパンダ誘致論者・清遠和政が実にカッコいい。
肝が据わっていてハッタリもかます。でも思考は緻密で計画性も十分。
組織を外れて、一匹狼でも十分に世間を渡っていけるが
妻と娘のことでは人並みに悩む・・・とかね。

目立たないけど掛水の上司、下元課長もいい味だしてる。
地道な根回しも淡々とこなし、部下に能力を発揮させる場を用意する。

私はとうてい清遠みたいにはなれそうもないが、
できれば下元みたいなオッサンにはなりたかったなあ・・・

毎度のことだけど、ページを繰るのが実に楽しい。
そんな読書の時間を与えてくれる本作は一押しの快作だ。


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コメント 2

mojo

サイト-さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-07-24 00:03) 

mojo

31」さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-07-24 00:04) 

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